「腹膜播種(ふくまくはしゅ)」は、がん細胞がおなかの中の膜に散らばって広がった様子を表す言葉で、それだけで残りの時間を言い当てるものではありません。この先の経過は、元のがんがどこにできたどんな性質のがんか、治療がどのくらい効くか、体力がどれだけ残っているかによって、人ごとに大きく違います。
一方で、腹膜播種があると起きやすいことには、ある程度の共通点があります。おなかに水がたまる(腹水)、腸の通り道が狭くなる(腸閉塞)、食欲が落ちる、の3つです。どれにも和らげる手段があり、早めに気づいて伝えるほど、楽になる方法を選びやすくなります。
この記事では、言葉の意味、おなかが張る・食べられなくなる仕組み、次の診察を待たずに病院へ連絡したい変化、そして食べられるうちの食事の考え方を、ご本人に向けてまとめました。病状が進んだ時期の腹水や腸閉塞への対処と、転移した場所ごとの比較は、それぞれを詳しく扱う記事にお任せしています。
「腹膜播種」と言われて、このページを開いた方へ
- 診察室で初めて「腹膜播種」と言われた。帰ってから調べると、厳しい話ばかりが出てくる。
- この数週間、おなかが張って、食べられない日が増えてきた。
- 食事をどうすればいいのか、誰に聞けばいいのかも分からないまま、夜になってしまう。
「腹膜播種」とは、おなかの中で何が起きている状態ですか?
腹膜播種は、がん細胞が、おなかの内側の壁や胃・腸などの表面を覆う薄い膜(腹膜)に、種をまいたように散らばって増えている状態です。元のがんが広がったもので、別の新しいがんができたわけではありません。
腹膜は、おなかの中の空間(腹腔)を内側から包み、胃や腸、肝臓などの臓器の表面も覆っている薄い膜です。胃や大腸、膵臓、卵巣などにできたがんが、臓器の壁を内側から外側へ突き抜けるように広がると、がん細胞の一部がおなかの中にこぼれ落ちることがあります。こぼれた細胞が腹膜のあちこちに付いて増えたものが腹膜播種で、「播種」は種をまくという意味です。
散らばったがんは小さな粒のようなものが多く、CTなどの画像検査でははっきり写らないこともあります。手術や腹腔鏡でおなかの中を見たときに見つかったり、腹水にがん細胞が混じっているかを調べて分かったりする場合もあります。腹膜播種によって腹水や腸の症状が出ている状態を、「がん性腹膜炎」と呼ぶこともあります。
知っておきたいのは、腹膜に広がっているのは元のがんの細胞だという点です。胃がんから広がったなら胃がんの性質を、卵巣がんから広がったなら卵巣がんの性質をもっていて、治療も元のがんに合わせて考えます。ステージの扱いもがんの種類によって違い、多くはⅣ期に分類されるがんもあれば、別の段階として扱うがんもあります。転移した場所ごとに起きやすい症状を見比べたいときは、[gk_link to=”post:metastasis-sites-symptoms”]転移先別の症状と和らげ方[/gk_link]にまとめています。
- 1臓器の壁を越える胃や腸などにできたがんが、壁の外側まで広がる
- 2おなかの中にこぼれるがん細胞の一部が、腹腔と呼ばれるおなかの中の空間に入る
- 3腹膜に付いて増える膜の表面のあちこちに、小さな粒のように散らばる
- 4症状につながることがある腹水がたまる、腸が外から締めつけられる、食欲が落ちる
腹膜播種があると言われました。腹膜播種があると、あとどれくらいで、これからどうなるのですか?
あとどれくらいかは、元のがんの種類や性質、治療の効き方、体力によって大きく違い、「腹膜播種」という言葉だけでは決まりません。これからのことでは、腹水、腸の通りの悪さ、食欲の低下が起きやすく、それぞれに和らげる手段があります。
検索すると、腹膜播種について厳しい見通しの話が多く目に入ります。けれど同じ腹膜播種でも、散らばり方が限られている人と広い範囲に及んでいる人、薬がよく効くがんの人とそうでない人とでは、その後の経過がまったく違います。おなかの症状がほとんどないまま、治療を続けて暮らす時期が続く人もいます。
ネットで見かける生存率や「生存期間中央値」は、過去に診断された大勢の方をまとめた数字です。中央値は、その集団の半数がまだ生存している期間を示すもので、あなたに残された時間を示すものではありません。国立がん研究センターの院内がん登録の閲覧システムも、そこに出ている生存率は過去に診断された方のもので、これから治療を受ける人には当てはまらないことがあると断っています。
数字を聞くかどうかは、あなたが決めてかまいません。知りたいときは「ざっくりで構わないので、どのくらいの幅で考えればいいですか」と聞き、今は聞きたくないときは「数字より、これから体に起きやすいことを知りたいです」と伝えられます。見通しをなぜ元のがんで考えるのかは、[gk_link to=”post:metastatic-cancer-prognosis-by-type”]がんの種類で違う余命の読み方[/gk_link]で詳しく説明しています。
「これからどうなるか」は、「これから何に備えればいいか」と言い換えると、自分の手で扱える問いに変わります。この先の見出しは、その備えの順番に並べています。
腹膜播種で、おなかが張ったり食べられなくなったりするのはなぜですか?
主な仕組みは2つです。腹膜に広がったがんの影響でおなかに水がたまる「腹水」と、腸が外側から締めつけられたり動きが鈍ったりして通り道が狭くなる「腸閉塞」です。腹水に胃が押されると、少し食べただけで満腹になります。
腹水は、もともとおなかの中にわずかにある水が、増えすぎてたまった状態です。腹膜に散らばったがんの刺激で水分がにじみ出る量が増え、さらに、おなかの水を吸い戻す通り道(リンパの流れ)がふさがれると、水がたまりやすくなります。おなかがふくらんでベルトがきつくなる、体重は増えたのに手足は細くなっていく、横になると息苦しい、足がむくむ、といった形で気づくことの多い変化です。
腸閉塞は、食べたものや腸液、ガスが、腸の中を先へ進めなくなった状態です。腹膜播種では、腸の外側に付いたがんが腸を締めつけたり、腸と腸をくっつけたり、腸の動きそのものを鈍らせたりします。狭くなる場所が一か所ではなく、何か所かに分かれていることがあるのが、腹膜播種による腸閉塞の特徴です。完全に詰まる前には、便秘が続く、おなかがゴロゴロ鳴って波のように痛む、ガスがたまって張る、といった前ぶれが出ることもあります。
食べられなくなる理由は、この2つだけではありません。抗がん剤などの治療の副作用、便秘、痛み止めの影響、気持ちの落ち込みが重なっていることもあります。原因によって手当てが違うので、「腹膜播種だから仕方ない」と決めつけずに、困っていることをそのまま伝えてください。
| 観点 | 腹水 | 腸の通りの悪さ(腸閉塞) |
|---|---|---|
| おなかの感じ | 全体がふくらみ、重く張る | 張りに加え、波のように差し込む痛み |
| 起きている仕組み | 水がにじみ出て、吸い戻されにくくなる | 腸が締めつけられ、中身が先へ進めない |
| 一緒に出やすいこと | 息苦しさ、足のむくみ、少しで満腹 | 吐き気や嘔吐、便やおならが出ない |
| 和らげる手段の例 | 針で水を抜く処置、尿を出しやすくする薬 | 吐き気止め、腸液を減らす薬、管での減圧、ステントや手術 |
腹水や腸の詰まりは、どうやって和らげるのですか?
腹水は、針を刺して水を抜く処置(腹水穿刺)や、尿を出しやすくする薬で和らげます。腸の詰まりには、吐き気止めや腸液を減らす薬、管でたまったものを外に出す「減圧」、ステントや手術などがあり、体の状態とご本人の希望で選びます。
腹水を抜くと、おなかの張りや、張りに押されて起きる息苦しさが、その日のうちに軽くなることがあります。ただ、腹水はまたたまりやすく、抜くたびに体のたんぱく質も一緒に出ていくため、回数や量は体の状態を見ながら決められます。抜いた腹水をろ過・濃縮して、たんぱく質などを点滴で体に戻す方法を行っている病院もあります。
腸の詰まりには、いくつかの段階の手当てがあります。食事をいったん止めて、点滴で水分を補う。吐き気止めや、腸液の量を減らす薬を使う。鼻から胃に細い管を入れて、たまったものを外に出す(減圧)。管が長く必要になりそうなときは、おなかの皮膚から胃に管を通して、同じように外へ出す方法がとられることもあります。詰まっている場所が限られていれば、ステントという筒で通り道を広げたり、手術で迂回路や人工肛門を作ったりすることも検討されます。腹膜播種では狭い所が何か所もあることがあり、その場合は手術より、薬や管で楽にすることが中心になる場合もあります。
がんそのものへの治療は、元のがんに合わせた薬物療法が中心になることが多くあります。おなかの中に直接抗がん剤を入れる方法も、がんの種類によっては研究が進められていますが、受けられるかどうかや治療の中での位置づけは、がんの種類や病院によって違います。気になるときは、主治医に「私の場合、検討できる治療は何ですか」と聞いてみてください。
おなかの痛みには、医療用麻薬を含む痛み止めも使われます。使うと命が縮むのでは、と心配になる方もいますが、この点について日本緩和医療学会の『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020年版』は、「オピオイドの使用が生命予後を短縮するという根拠はない」と明記しています。痛みや吐き気を和らげる緩和ケアは、がんと診断されたときから受けられるものです(国立がん研究センター がん情報サービス)。病状が進んだ時期の腹水や腸閉塞への対処と点滴の考え方は、[gk_link to=”post:colorectal-cancer-end-of-life-signs”]大腸がんの最期のサインと腸閉塞・腹水への備え[/gk_link]で詳しく扱っています。
次の診察を待たずに病院へ連絡したほうがいいのは、どんなときですか?
吐く、便もおならも出ない、おなかの張りや痛みが急に強まった、水分がとれず尿が減った、張りで息苦しい、といった変化は、次の診察を待たずに病院へ連絡してください。腸の詰まりは、早く手当てを始めるほど楽になりやすい変化です。
腸が詰まりかけているときに食べ続けたり、吐くのを我慢したりすると、吐き気や張りが強くなり、体の水分も失われていきます。反対に、早めに伝えれば、食事をいったん休む、薬を調整する、管で減圧するといった手当てに早く移れます。「こんなことで電話していいのか」と迷うくらいなら、電話してかまいません。様子を見てよいかどうかを判断するのは病院の役目で、迷う段階で知らせてもらえるほうが、医療者にとっても手を打ちやすいものです。
連絡先は、平日の昼なら通っている病院の外来、夜間や休日は病院から伝えられている番号です。訪問看護を利用していれば、訪問看護ステーションにも相談できます。息ができないほど苦しい、呼びかけに反応しないなど、命に関わると感じたときは、ためらわずに119番に電話してください。救急車を呼ぶか迷ったときに相談できる救急安心センター事業(#7119)は、実施していない地域もあります。お住まいの地域で使えるかどうかは、落ち着いている日に調べておくと慌てずに済みます。
電話では、たとえば次のように伝えると話が早く進みます(例)。「○○科で胃がんの治療を受けている○○です。腹膜播種があると言われています。夕方から3回吐いて、昨日から便もおならも出ていません。おなかがいつもより張って痛みます。水はひと口ずつなら飲めます。どうしたらいいですか」。いつから、何回、どのくらい、が入っていれば十分です。
- 吐いた、または吐き気がおさまらず水分がとれない
- 便もおならも出ず、おなかが張ってくる
- 波のように差し込む痛みが、くり返し来る
- おなかが急にふくらんだ、張りで息苦しい
- 尿の量が減った、色が濃くなった
- 熱があり、おなかが痛む
食べられるうちは、何をどう食べればいいですか?
量を取り戻すことより、「おいしい」と思える一口を大事にする考え方があります。食べたいものを、体調のよい時間に、少しずつ何回かに分けて。食べる楽しみが残っている時間は、それ自体が暮らしを支える力になります。
おなかが張ってくると、「食べないと弱る」と思って、目の前の皿を空にしようと頑張ってしまいがちです。けれど、腹水に胃が押されていたり腸の動きが鈍っていたりするときに無理に詰め込むと、吐き気や張りが強くなり、次の食事がますます怖くなります。食事が義務になってしまうと、おいしさを感じる余裕まで失われていきます。
そこで、目標を「量」から「楽しみ」へ移してみてください。一日3回きっちり食べるより、5回、6回に分けて少しずつ。体の軽い時間帯があれば、そこを食事の時間にする。食べ始めて「もう十分」と感じたら、残してかまいません。においで気分が悪くなりやすいときは、温かい料理より、冷ましたものや冷たいもののほうが、においが立ちにくく口に運びやすいことがあります。ゼリー、プリン、茶わん蒸し、ポタージュのように、のどをするりと通るものも助けになります。食べたあとは、すぐに横にならず、少し上半身を起こしておくと、おなかが落ち着きやすくなります。
量が少なくても、好きな店のスープを一杯飲む、旬の果物をひと切れ味わう、家族と同じ食卓に座って話す。そうした時間は、栄養の数字には表れない形で、毎日を支えてくれます。病院によっては、管理栄養士に食べ方を相談できる栄養相談(栄養指導)を受けられます。主治医に「食事のことを栄養士さんに相談したい」と伝えると、つないでもらえることがあります。
量を目標にすると
- 皿を空にしようと、張っていても食べ進める
- 食べられなかった量を数えて落ち込む
- 食事の時間が近づくと、気が重くなる
楽しみを目標にすると
- 食べたいものを、体の軽い時間に少しずつ
- 「おいしかった」ひと口を覚えておく
- 残しても、食卓で過ごす時間を楽しむ
腸が狭くなっていると言われたら、食事で気をつけることはありますか?
繊維が多くて硬いものや、よくかまずに飲み込んだものは、狭くなった所でつかえやすいとされます。細かく刻む、やわらかく煮る、よくかむ、一度にたくさん食べない、が基本の工夫です。控える物の範囲は人によって違うため、主治医か管理栄養士に確かめてください。
一般に、きのこ、海藻、こんにゃく、ごぼうやたけのこのように繊維の多い野菜、豆やとうもろこしの皮、果物の皮や種などは、腸の中で形が残りやすく、通り道が狭いときには控えるか、細かく刻むよう勧められることがあります。同じ食材でも、ミキサーにかける、裏ごしする、とろとろに煮込むと、通りやすくなります。
- 一度に食べる量を減らし、回数を分ける
- 果物や豆は、皮や種を除いてから食べる
- ひと口ごとに、ゆっくりよくかむ
- 便とおならが出た時刻を、ひとことメモしておく
医師から「しばらく食事を止めます」「流動食にしてください」と言われることもあります。そのときは指示が優先です。反対に、制限が強すぎて食べる楽しみまでなくなっているように感じるときは、「この中で、食べてよいものはどれですか」と、できることのほうを聞いてみてください。
便通を整えることも、腸の詰まりを防ぐ助けになります。医療用麻薬を使っていると便秘になりやすいため、下剤の使い方を医師や薬剤師に確かめておきます。吐き気やおなかの張りが強い日は、無理に食べずに休み、前の見出しで挙げた変化があれば病院に連絡してください。
食事やおなかの困りごとは、誰に相談すればいいですか?
治療や見通しは主治医、日々の困りごとは外来の看護師、食べ方は管理栄養士、薬のことは薬剤師に聞けます。つらさが和らがないときは緩和ケアチームへ。どこに聞けばよいか迷うときは、がん相談支援センターで一緒に整理してもらえます。
短い診察では、おなかの張りや食事の話まで手が回らないこともあります。そんなときは、聞く相手を分けると話しやすくなります。食べ方や食材の選び方なら管理栄養士、痛み止めや下剤の使い方なら薬剤師、受診するか迷う変化なら外来の看護師。主治医との時間は、治療の目標と、気をつける変化を確かめることに使えます。張りや痛みのつらさが続くときは、治療と並行して緩和ケアチームや緩和ケア外来にも相談できます。
病院の外で話したいときは、全国のがん診療連携拠点病院などにある「がん相談支援センター」が使えます。通っている病院でなくても使え、費用はかからず、名前を言わずに面談や電話で話せます。相談員は、がんに詳しい看護師や、生活全般の相談ができるソーシャルワーカーなどで、話した中身が、相談した人の同意なしに担当医や病院のスタッフに知らされることはありません。国立がん研究センターの「がん情報サービスサポートセンター」(0570-02-3410 または 03-6706-7797、平日10時〜15時、通話料は自己負担)でも、匿名で相談できます。どちらも、担当医の代わりに治療を判断する窓口ではないので、医療の判断は主治医と話すための準備に使ってください。
おなかの張り・食事の困りごと
- 主治医治療の目標、気をつける変化、検討できる処置
- 外来・病棟の看護師受診するか迷う変化、夜間や休日の連絡先
- 管理栄養士食べ方、控える食材、少ない量でとれる工夫
- 薬剤師痛み止め・吐き気止め・下剤の使い方
- 緩和ケアチーム・緩和ケア外来和らがない張りや痛み、気持ちのつらさ
- がん相談支援センターどこに何を聞くかの整理。無料・匿名
「腹膜播種」と聞いて、食事が怖くなっていた方は、どう動いた?
説明のための例(実在の方の体験談ではありません)
1. 相談のあとに変わったこと
相談の翌週の診察で、女性は3つの質問を書いたメモを主治医に渡しました。返ってきたのは、腹水と腸の通りの悪さが起きやすいこと、吐く・便もおならも出ない・張りが急に強まるときはすぐ電話してほしいこと、の2つでした。家に帰ると、その変化と外来・夜間の電話番号を紙に書き、冷蔵庫に貼りました。食事は、朝昼晩を食べきろうとするのをやめ、1日5回に分けて少しずつ。昼はお気に入りのパン屋のポタージュ、夕方は息子と半分ずつ食べるプリン。「食べた量じゃなくて、おいしかった回数を数えるようになった」と話します。ひと月ほどして、夕方から2回吐いた日には、紙を見ながら夜間の番号に電話し、その夜のうちに受診しました。
2. 相談を考えた背景
胃がんの手術から2年。定期検査のCTのあと、主治医から「腹膜播種による再発です。腹水も少しあります」と説明を受けました。初めて聞く言葉で、説明の後半はほとんど耳に入らなかったそうです。
3. 相談する前に困っていたこと
家に帰って「腹膜播種 余命」と検索すると、厳しい数字や経過の話ばかりが並びました。そのころから夕食の途中でおなかが張り、茶碗のご飯を半分残す日が週に何度も出てきました。夫が「少しでも食べて」と心配するたびに無理に口へ運び、夜中に吐いてしまったこともあります。食事のことを誰に相談すればいいのか、次の診察まで待っていいのかも分かりませんでした。
4. ここを選んだ理由・決め手
病院のがん相談支援センターのことは案内で知っていましたが、平日の昼は仕事で電話をかけられません。夜、息子が寝たあとに、LINEでスタンプをひとつと「腹膜播種って、何が起きているんですか」とだけ送りました。翌朝に届いた返事を読んで、その日のうちにフォームを開き、電話の時間帯には会社の昼休みを選びました。名前をニックネームで送れたことで、構えずに頼めたといいます。
5. 相談で話したこと・その後
電話で担当は、まず女性の話を聞き、腹膜播種という言葉の一般的な意味と、腹水や腸の通りの悪さが起きる仕組みを説明しました。残された時間や、女性の体で今何が起きているかについての判断はしていません。話の最後に、次の診察で主治医に渡す質問を3つに絞り、メモにして届けました。「これから起きやすいことは何ですか」「次の診察を待たずに連絡すべき変化は何ですか」「食事のことを管理栄養士に相談できますか」。3つ目の質問がきっかけで、女性は病院の栄養相談を受け、腸が狭くなったときに控える食材を教わりました。
※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。
主治医・看護師に聞く質問例
- 私の腹膜播種は、どのがんから広がったもので、今どのくらいの範囲にありますか。
- これから起きやすいことは何ですか。腹水や腸の詰まりについて、気をつける変化を教えてください。
- 次の診察を待たずに連絡したほうがいいのは、どんな変化のときですか。夜間はどこに電話すればいいですか。
- 腹水や張りがつらくなったら、どんな方法で和らげられますか。それぞれ、どんな負担がありますか。
- 食事で控えたほうがよいものはありますか。管理栄養士に相談できますか。
とはいえ、腹膜播種と向き合うあなたに伝えたい2つのこと
① 気持ちのこと──厳しい情報を読んでしまう夜があっても、いい
夜、何度も「腹膜播種」と検索してしまうのは、自分の体に起きていることを知って、備えたいという気持ちの表れです。そんな自分を責めなくてかまいません。ただ、検索で出てくる話の多くは、ほかの誰かの、別の時期の経過です。あなたの体のことをいちばん知っているのは、検査の結果を見ている主治医と、毎日の体調を感じているあなた自身です。気になった言葉はメモに書いて画面を閉じ、次の診察で聞く質問に変えてください。家族の前では明るくふるまっていても、ひとりの時間に涙がこぼれる。そういう夜があっても、おかしくありません。ここでは泣いていいのです。気持ちの落ち込みや眠れない日が続くときは、主治医やがん相談支援センターに伝えてください。電話をかけた場所の都道府県などの公的な相談機関につながる、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)もあります。受け付ける曜日や時間は地域ごとに違い、通話料がかかります。眠れない夜に声を聞きたいときは、24時間・無料のよりそいホットライン(0120-279-338)もあります。がん専門の窓口ではありませんが、つらい気持ちを話すことができます。
② 実務のこと──食卓と連絡の役割を、家族と分けておく
おなかの張りが強い日が増えてくると、食事や病院への連絡を一人で抱えがちです。食事を作ってくれる家族がいるなら、「量より通りやすいもの」「残しても気にしない」という食卓の決まりを、先に共有しておくと、お互いの気持ちが軽くなります。「食べたくないんじゃなくて、今は入らない」と理由を一言添えるだけで、家族も何を用意すればいいかが分かり、安心しやすくなります。病院への連絡も、具合の悪いときに自分で電話できるとは限りません。代わりに電話をかけてもらう人を家族の中で決め、元のがんの名前、腹膜播種があること、飲んでいる薬を、その人にも伝えておくと、家族の誰が電話をかけることになっても、話が食い違いません。
今日できること
[gk_howto name=”今日できること” description=”「腹膜播種」と言われた今夜から、次の診察までにできる3つのこと” heading=”none”][gk_step title=”連絡したい変化を書き写す”]この記事の「病院へ連絡したい変化」を紙かスマホのメモに書き写し、外来と夜間の電話番号を添えておきます。[/gk_step][gk_step title=”明日食べたいものを一つ決める”]量ではなく、「これならおいしく食べられそう」と思えるものを一つ。買い物を家族に頼んでもかまいません。[/gk_step][gk_step title=”聞きたいことを一行にする”]「これから起きやすいことは何ですか」など、次の診察で聞く一行を書きます。整理しきれない夜は、相談室のLINEにひとことどうぞ。夜に届いたものは、翌朝いちばんに読んで返事をします。[/gk_step][/gk_howto]よくある質問
[gk_faq][gk_q q=”腹膜播種は治りますか?”]多くの場合、腹膜に散らばったがんをすべて取り除くことは難しく、治療の中心は、元のがんに合わせた薬でがんの進み方を抑え、症状を和らげながら暮らしを保つことになります。ただ、がんの種類や広がりの程度によっては、手術などを組み合わせる治療が検討される場合もあります。「私の場合、治療の目標は何ですか」と主治医に聞くと、見通しを考える軸ができます。[/gk_q][gk_q q=”CTでは写らないと言われたのに、腹膜播種と診断されたのはなぜですか?”]腹膜に散らばったがんは小さな粒のようなものが多く、画像にははっきり写らないことがあります。そのため、手術や腹腔鏡でおなかの中を直接見たときや、腹水の中にがん細胞がいるかを調べたときに分かることがあります。画像に写らないことと、広がりがないことは同じではありません。どの検査で分かったのかを主治医に聞いておくと、これからの検査の意味もつかみやすくなります。[/gk_q][gk_q q=”腹水を抜くと体が弱ると聞きました。抜かないほうがいいのですか?”]腹水にはたんぱく質も含まれているため、抜くたびに体の負担になる面はあります。一方で、張りや息苦しさが和らぎ、食事や睡眠が楽になることもあります。抜くかどうか、どのくらいの量にするかは、楽になる時間と体への負担を比べて医師が判断します。迷うときは「抜いた場合と抜かない場合で、何が違いますか」と聞いてみてください。[/gk_q][gk_q q=”おなかの痛みに医療用麻薬を勧められました。使っても大丈夫ですか?”]医療用麻薬は、がんの痛みを和らげるために広く使われている薬です。日本緩和医療学会のガイドライン(2020年版)は、オピオイドの使用が命を縮めるという根拠はないとしています。便秘や眠気などの副作用が出ることはあり、とくに便秘は腸の通りにも関わるので、下剤の使い方を一緒に確かめてください。不安があれば、「やめられなくなるのが心配です」とそのまま伝えてかまいません。[/gk_q][gk_q q=”食べられない日が続いたら、点滴をしてもらえますか?”]腸の詰まりで食事を止めているときなどには、点滴で水分や栄養を補うことがあります。ただ、病状が進んだ時期には体が水分をうまく使えなくなり、点滴が多いと腹水やむくみが増えることもあるため、量は体の状態を見て調整されます。終末期の点滴について、日本緩和医療学会は『終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン 2013年版』をまとめています。「今の私にとって、点滴にはどんな意味がありますか」と尋ねてみてください。[/gk_q][/gk_faq]次に読むなら
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