がんの余命を聞けない配偶者へ|夫婦で言えないことの扱い方

妻の余命を本人の前で聞けず、一人で抱えているときに考えたいのは、「何を、誰と、どんな場で」話すかです。夫婦がお互いを気づかって黙り込むのは、どちらも相手を守ろうとしているからで、どちらかが悪いわけではありません。二人きりでは言葉にならないことも、看護師や相談員に間に入ってもらうと、話せることがあります。

どこまで話せるか、話したいかは、夫婦の歴史や病状、妻の気持ちによって違い、あえて話さないことを選ぶ夫婦もいます。この記事では、夫婦が言えずにいることの仕分け方、妻が知りたい範囲の確かめ方、第三者を交えて二人で話す場のつくり方を扱います。配偶者が先に見通しを聞く方法は[gk_link to=”post:spouse-cancer-how-long-together”]配偶者の見通しの聞き方[/gk_link]に、本人のいない場で医師に聞く頼み方は[gk_link to=”post:family-asking-doctor-privately”]医師に別に聞く頼み方[/gk_link]にまとめています。夫を看る妻の方も、「妻」を「夫」に置き換えて読んでください。

夫婦の間の沈黙を、一人で抱えている方へ

  • 妻の余命を知りたい。でも、妻の前ではとても聞けない。
  • 妻も、本当は何を思っているのか言ってくれない。お互いに気を遣って、いちばん大事な話だけを避けている。
  • この重さを誰にも言えないまま、時間だけが過ぎていく。

妻の余命を本人の前では聞けず、一人で抱えています。夫婦の間で言えないことは、どう扱えばいいですか?

無理に二人きりで言葉にしなくてかまいません。まず何が言えずにいるのかを仕分け、妻がどこまで知りたいかを確かめ、必要なら看護師や相談員に同席してもらって二人で話します。一人で抱えてきた重さは、家の外で分けられます。

言えずにいることは、たいてい一つではありません。妻の余命を知りたい。妻がこれからどこで過ごしたいのかを聞いておきたい。自分が怖くて眠れないことを分かってほしい。子どもにどう伝えるかも決めなければならない。それが全部ひとかたまりになっているから、どこから手をつけても重すぎて、口が開かなくなります。

ひとかたまりをほどくと、二人で向き合う話は思ったより少なくなります。妻にしか決められないことは二人で話す。夫自身の怖さは、家の外で話す。数字としての余命は、妻が知りたいかどうかを確かめてから扱う。順番を決めれば、「全部話すか、何も話さないか」の二択から抜け出せます。

夫婦は、なぜお互いにいちばん大事なことを話せなくなるのですか?

相手を守りたい気持ちが、お互いに働いているからです。夫は妻を怖がらせたくなくて聞かず、妻は夫を悲しませたくなくて言わない。どちらも相手のための沈黙なので、どちらかが悪いわけではありません。

長く連れ添った夫婦ほど、相手の表情から多くを読み取ります。先生の説明の帰り道、妻がいつもより口数が少なかった。夫が夜中に起きていることに、妻は気づいている。言葉にしなくても伝わってしまうからこそ、言葉にした瞬間に、二人とも崩れてしまいそうな怖さがあります。

話すと現実になってしまう気がすることも、口を重くします。「あとどれくらい」を口にすれば、それを認めたことになる。だから夕食の会話は天気とテレビの話だけになり、いちばん大事な話題のまわりを、二人でそっと避けて歩くようになります。

この沈黙は、夫婦の思いやりの形です。ただ、長引くほど、二人とも同じ家の中で一人ずつ重さを抱えることになります。夫は聞けない見通しを、妻は言えない希望を。沈黙を破るかどうかを考える前に、それぞれが何を言えずにいるのかを、並べて見てみてください。

夫が言えずにいること(例)

  • 先生に、これからの見通しを聞きたい
  • 夜、先のことを考えて眠れない
  • 仕事をどうするか、一人で迷っている

妻が言えずにいること(例)

  • これから、どこで過ごしたいか
  • 夫が一人になったあとの暮らしが心配
  • つらさを話すと、夫を悲しませてしまう
同じ家で、夫と妻がそれぞれ言えずにいることの例

言えずにいることは、全部二人で話さなければいけませんか?

全部を二人で話す必要はありません。言えずにいることを「二人で話しておきたいこと」「家の外で話せばいいこと」「今は言葉にしなくていいこと」に分けると、二人で向き合う話はぐっと少なくなります。

二人で話しておきたいのは、妻にしか決められないことです。これからどこで過ごしたいか、治療や説明をどこまで受けたいか、子どもや親にどう伝えるか。厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」も、本人による意思決定を基本にしています。夫が代わりに決めるのではなく、妻の考えを聞く場を持つことが大事です。

家の外で話せばいいのは、夫自身の怖さや眠れなさ、先の見通しを知ったあとの重さです。これらは妻に聞いてもらわなくても、外で下ろせます。むしろ妻に向けると、妻が夫を気づかう荷物を一つ増やすことになりかねません。

今は言葉にしなくていいこともあります。妻が知りたくないと言っている数字。毎日くり返す必要のない「もしも」の話。長年の感謝のように、手を握る、隣に座るといった形でも伝わる気持ち。言葉にしないことは、逃げではなく、選び方の一つです。

言えずにいること扱い方の例話す相手
妻の余命や見通し先に、妻が知りたい範囲を確かめる妻、主治医(配偶者が先に聞く道もある)
妻が過ごしたい場所や治療の希望第三者を交えて、二人で話す妻、看護師、相談員
夫自身の怖さや眠れなさ家の外で話して、重さを下ろすがん相談支援センター、相談窓口
子どもや親への伝え方二人で方針をそろえる妻、看護師、相談員
お金や家のこと体調のよい日に、短く話す妻、医療ソーシャルワーカー
夫婦が言えずにいることと、扱い方・話す相手の例
[gk_cta_mid title=”「妻のことで、一人で抱えています」とだけ”]LINEなら、名前を出さずに一行から送れます。夜のうちに送られたものも翌朝いちばんに読み、良い悪いを言わずにお返事します。[/gk_cta_mid]

妻がどこまで知りたいのかは、どう確かめればいいですか?

「余命を知りたい?」と正面から聞くより、説明をどのくらい詳しく聞きたいかを、ふだんの会話の中で尋ねます。先に自分の気持ちを話してから聞く、パンフレットや「人生会議の日」をきっかけにする、という方法もあります。

「知りたいか、知りたくないか」は、二択で聞かれると答えにくい問いです。そこで、程度で尋ねてみます。例:「先生の話、あなたは細かいところまで聞きたいほう?それとも、大事なところだけでいい?」。答えが「大事なところだけ」なら、それが妻の今の希望です。

自分の気持ちを先に話すと、相手も話しやすくなります。例:「おれは、先のことも少しは知っておきたいと思ってる。あなたはどう?」。夫が先に手の内を見せることで、妻は「聞かれている」のではなく「一緒に考えている」と感じやすくなります。

きっかけを借りる方法もあります。待合室に置かれたパンフレット、テレビのドラマ、親戚の話。厚生労働省は、もしものときの医療やケアを前もって話し合うことを「人生会議」と呼び、11月30日を「人生会議の日」としています。例:「人生会議の日っていうのがあるんだって。うちも、そのうち一度話しておく?」。

妻が「聞きたくない」と答えても、それは失敗ではありません。今の妻の、大事な答えです。気持ちは、体調や治療の節目で変わることもあります。日を置いて、また尋ねてかまいません。

  1. Q1妻は、先のことを知りたいと言いましたか

    はい次の診察で二人そろって聞けるよう、聞きたいことを3つに絞る

    いいえ聞かない希望を守り、その希望を医療者にも伝えておく

  2. Q2妻は、自分の希望(過ごす場所や治療)を話したがっていますか

    はい看護師や相談員に同席を頼み、二人で話す時間をつくる

    いいえ日を置き、体調のよい日にもう一度だけ尋ねる

  3. Q3見通しを知らないままでいることが、夫自身にとってつらいですか

    はい妻の希望を損なわない形で、医療者に相談する方法を探す

    いいえ今は数字ではなく、二人の今週の予定を大事にする

妻の答えを受けて、次の一歩を選ぶ分かれ道

二人きりでは話せないとき、誰に間に入ってもらえばいいですか?

外来や病棟の看護師、緩和ケアに関わるチーム、がん相談支援センターの相談員、医療ソーシャルワーカーなどです。主治医も交えて、これからの医療やケアを話し合う「人生会議」という形もあります。

第三者が入ると、夫婦どうしでは聞けない問いを、代わりに口にしてもらえます。例:「今いちばん気がかりなことは何ですか」「説明は、どこまで詳しく聞きたいですか」。妻は夫に向かってではなく、第三者に向かって答えればよいので、夫を悲しませる心配をしながら話さずにすみます。涙がこぼれても、話の続きを預かってくれる人がいるのは心強いものです。

緩和ケアは、体の痛みだけを扱うものではありません。国立がん研究センターのがん情報サービスが紹介しているWHOの定義では、患者さんとその家族を対象に、身体的な問題だけでなく、心理社会的な問題やスピリチュアルな問題にも早くから向き合い、生活の質を高めるケアだとされています。がんと診断されたときから受けられ、緩和ケアチームや緩和ケア外来などで相談できます。

がん相談支援センターでは、がんについて詳しい看護師や、生活全般の相談ができるソーシャルワーカーなどが、主に面談か電話で相談を受けています。夫婦二人で面談を受けられるかは、事前に尋ねてみてください。医療ソーシャルワーカーは、病院などで、患者さんや家族の経済的・心理的・社会的な問題の解決や調整を助ける専門職で、過ごす場所の変化についての相談にも応じています。看護師に小さく相談を切り出す言い方は、[gk_link to=”post:hard-to-ask-doctor”]看護師から小さく聞く方法[/gk_link]も参考になります。

厚生労働省が愛称をつけた「人生会議」は、もしものときに望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有していく取り組みです。書類を作ることが必須なわけではなく、一度で結論を出すものでもありません。

夫婦の話し合い

  • 外来・病棟の看護師日ごろの様子を知っていて、話し合いの場を頼みやすい
  • 主治医病状と治療のこれからを、二人そろって聞ける
  • 緩和ケアのチームや外来体だけでなく、心や暮らしのつらさも、本人と家族を対象に扱う
  • がん相談支援センターの相談員がんに詳しい看護師やソーシャルワーカーなど。家族だけの相談もできる
  • 医療ソーシャルワーカー過ごす場所の変化や、暮らし・お金の困りごとを一緒に整理する
二人の話し合いに、間に入ってもらえる人たち

第三者を交えた話し合いは、どう準備すればいいですか?

まず夫が一人で看護師や相談員に事情を伝え、同席をお願いします。そのうえで妻を誘い、当日は第三者に二人それぞれへ尋ねてもらいます。決めたこととまだ決めないことは、紙に書いて残します。

  1. 1夫が先に相談する看護師や相談員に、夫婦で話せずにいることを伝える
  2. 2同席をお願いする話し合いの時間と場所、誰が入るかを相談する
  3. 3妻を誘う「これからの話を、一度みんなでしておかない?」と短く誘う
  4. 4二人それぞれが話す第三者が順に尋ね、知りたくないことには「今はいい」と答えてよい
  5. 5決めたことを残す決まったこと、まだ決めないことを紙に書き、日を置いてまた話す
第三者を交えて、夫婦で話すまでの流れ

先に相談するときは、妻の希望と夫の願いを、分けて伝えます。例:「妻は、数字は聞きたくないと言っています。でも、過ごしたい場所の話は、二人でしておきたいんです」。こう伝えておくと、第三者は妻の「知らないでいたい」気持ちを守りながら、話を進める手立てを考えられます。

妻を誘う言葉は、短く、逃げ道を残します。例:「看護師さんが、これからのことを一緒に話す時間をとってくれるって。嫌なら断っていいよ」。「先生から大事な話がある」のような言い方は、悪い知らせを予感させて身構えさせてしまうので避けます。

当日、全部を決める必要はありません。妻が途中で疲れたら、「今日はここまで」で十分です。夫が泣いてしまっても、そのまま続けてかまいません。終わったら、決まったこととまだ決めないことを一枚の紙に書いておくと、次に話すときの入口になります。

[gk_cta_mid title=”看護師に頼む一言と、当日聞くことを3つにまとめます”]フォームにご希望の時間帯を書いて送っていただければ、担当がお電話で事情を伺い、次の診察で聞く質問メモとして3つにまとめてお送りします。診断や見通しの予測はしません。[/gk_cta_mid]

妻が「聞きたくない」「話したくない」と言ったら、どうすればいいですか?

その答えを、妻の大事な選択として守ります。知らないでいることも、本人が選んでよいことです。そのうえで、夫自身が知りたいことや抱えきれない重さは、妻を通さずに、医療者や相談窓口で扱う道があります。

「今は話したくない」と言われると、拒まれたように感じるかもしれません。けれど、それは夫を遠ざける言葉ではなく、妻が自分のペースを守ろうとする言葉です。例:「分かった。話したくなったら、いつでも言ってね」。扉の場所だけを伝えて、開けるのは妻に任せます。

夫が見通しを知りたい気持ちまで、我慢し続ける必要はありません。配偶者だけが先に聞く方法や、本人のいない場で医師に尋ねる頼み方は、冒頭で紹介した記事にまとめています。ただ、余命として示される数字は、同じ状態の人たちをまとめた統計から出た目安で、妻一人の残り時間を言い当てるものではありません。知ったあと、その数字をどう扱うかも含めて、医療者と相談しながら進めます。

言葉にしないまま通じ合っている夫婦もいます。毎朝のお茶、通院の車の中で流す音楽、手をつないで歩く短い散歩。話し合いをしなくても、一緒に過ごす時間の中で、妻の望みが見えてくることもあります。沈黙のすべてを破らなければいけないわけではありません。

一人で抱えてきた重さは、どこに下ろせばいいですか?

妻に話せない重さは、家の外に下ろしてかまいません。がん相談支援センターは家族だけで無料・匿名で使え、夜中なら24時間のよりそいホットラインがあります。配偶者の気持ちも、相談してよいことです。

がん情報サービスは、家族を「第二の患者」ともいわれる存在として紹介しています。本人を気づかって気持ちを抑え、自分の暮らしも回さなければならないからです。同じページには、家族が自分のつらさを担当医や看護師に相談してかまわないこと、相談しにくいときは看護師やがん相談支援センターを頼れることも書かれています。

がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院などにあり、その病院に通っていなくても家族だけで相談でき、相談した人の同意なしに、話した内容が担当医などに伝わることはありません。眠れない夜に人の声が恋しくなったら、よりそいホットライン(0120-279-338)に電話をかけられます。時間を問わず受け付けていて、通話も無料です。がん専門の窓口ではありませんが、今の気持ちをそのまま聞いてもらえます。

がんと家族の相談室では、評価も助言もしない20分の電話で、まず話を聞きます。先生から聞いた言葉の意味が分からないときは、一般的な意味をお伝えし、次の診察で聞く質問を3つにまとめてお送りすることもできます。診断や余命の予測はしません。

妻の余命を聞けずにいた夫は、どう二人で話せるようになった?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
60代・夫の立場(60代の妻が通院で治療中。主治医から治療の目的が変わってきたと説明を受けたが、妻の前では見通しを聞けなかった。子どもは二人とも独立している)
相談のあとに変わったこと
看護師に同席してもらい、二人で「これからの過ごし方」を話す時間を持てた。妻は数字は聞かないと決め、過ごしたい場所と会いたい人を話した。夫は自分の不安を話す場所を家の外に持った。

1. 相談のあとに変わったこと

相談から3週間後、この方は外来の面談室で、看護師に同席してもらって妻と二人で話す時間を持ちました。30分ほどの話し合いで、妻は「数字は聞きたくない。でも、家で過ごせるうちは家にいたい。妹には会っておきたい」と話しました。この方も初めて「おれは怖いんだ」と口にしています。それからは週に一度、夕食のあとに10分だけ「これからの話」をする時間ができました。「黙っていたのは、お互いさまだったんですね」。

2. 相談を考えた背景

妻の治療が変わったのは2か月前。先生の言葉の端々から、状況が厳しくなっていることは察していました。妻の前ではとても見通しを聞けず、妻も何も言いません。夕食の会話は天気とテレビの話だけになり、夜は一人で起きている時間が増えていきました。

3. 相談する前に困っていたこと

夜中に「配偶者 癌 余命を聞けない」と検索し、家族だけで医師に聞く方法があることは知りました。けれど、妻に隠れて聞くのは裏切りのように思えて、動けませんでした。人生会議という言葉も目にしましたが、自分から切り出す言葉が見つからなかったといいます。

4. ここを選んだ理由・決め手

医療者に頼む前に、自分が何を言えずにいるのかを、外の誰かと整理したい。そう思って、深夜にLINEで「妻のことで、一人で抱えています」とだけ送りました。翌朝いちばんに返事が届き、妻が友人とお茶に出かける平日の午後を選んで、フォームで電話を申し込みました。名前を出さずに始められたことが決め手でした。

5. 相談で話したこと・その後

電話の担当は名前を名乗り、最初の20分は評価も助言もせずに話を聞きました。そのあと、言えずにいることを「二人で話すこと」「外で話すこと」「今は言わなくていいこと」に分け、看護師に頼む一言と、当日聞きたいことを3つの質問メモにまとめています。担当は、妻の病状や余命について何も判断していません。次の通院でこの方が看護師に事情を話すと、看護師はまず妻と二人で話し、妻が「話す時間なら持ちたい」と答えたことで、話し合いの日が決まりました。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 夫婦でこれからのことを話す時間に、看護師さんに同席していただくことはできますか。
  • 妻が病状の説明をどこまで聞きたいかを、先に確かめていただくことはできますか。
  • 本人と家族が話し合うとき、この病院で間に入ってくださる方はいますか。
  • 妻が「今は知りたくない」と言っている場合、その希望を医療チームで共有していただけますか。
  • 「人生会議」のような話し合いを、診察の中でお願いすることはできますか。

とはいえ、言えずにいるあなたに伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──黙っていた時間も、相手を思っていた時間です

言えずにいた日々を、夫婦の失敗だと考えなくていいのです。聞かなかったのは妻を怖がらせたくなかったから、言わなかったのは夫を悲しませたくなかったから。沈黙の中身は、お互いへの思いやりでした。話し合いが一度できても、また言葉が出なくなる日は来ます。それでかまいません。黙っている夜も、隣にいること自体が、妻にとって支えになっている場合があります。

② 実務のこと──話し合いは一度で終わらせず、決めたことを紙に残す

人生会議は、繰り返し話し合い、共有していく取り組みです。一度の話し合いで全部を決めようとせず、決めたこと、まだ決めないこと、次に話すきっかけを一枚の紙に書いておきます。妻の了解を得て、その紙を主治医や看護師にも見てもらえば、妻の希望が医療チームにも伝わり、夫が毎回一人で説明せずにすみます。病状や治療が変わったときは、紙を見直す日と決めておくと、話し合いを再開する理由が自然にできます。

今日できること

[gk_howto name=”今日できること” description=”夫婦の沈黙を一人で抱えないために、今夜から明日にできる3つのこと” heading=”none”][gk_step title=”言えずにいることを書き出す”]紙に全部書き出し、「二人で話す」「外で話す」「今は言わなくていい」の3つに分けて印をつけます。[/gk_step][gk_step title=”看護師への一言をメモする”]「夫婦でこれからの話をしたいので、同席をお願いできますか」と、次の診察で言えるように書いておきます。[/gk_step][gk_step title=”重さを一つだけ外に出す”]「外で話す」に分けたものを一つ選び、信頼できる一人か、相談室のLINEに一行だけ送ります。[/gk_step][/gk_howto]

よくある質問

[gk_faq][gk_q q=”妻に内緒で、先生に余命を聞いてもいいのでしょうか?”]家族として先生や看護師に相談すること自体は、できます。ただ、知る権利も知らないでいる権利も本人のものなので、聞いた内容を妻に伝えるか、伝えるならいつ、どんな言葉でかは、医療者と相談してから決めます。家族だけで聞く頼み方は、[gk_link to=”post:family-asking-doctor-privately”]医師に別に聞く頼み方の記事[/gk_link]にまとめています。[/gk_q][gk_q q=”妻のほうが、何も話してくれません。どう受け止めればいいですか?”]話さないことも、妻なりの守り方かもしれません。夫を悲しませたくない、自分でもまだ気持ちの整理がつかない、という場合もあります。問い詰めずに、「話したくなったら聞くよ」と一度だけ伝えて待ちます。妻が看護師や友人には話している場合もあり、それも妻の支えの一つだと考えてください。[/gk_q][gk_q q=”話し合いの最中に、泣いてしまいそうで怖いです。”]泣いてもかまいません。夫の涙を見て、妻が「やっぱり怖かったのは自分だけじゃなかった」と感じることもあります。第三者が同席していれば、話が途切れても続きを預かってもらえます。泣くのがつらければ、「少し休ませてください」と言って、席を外してもよいのです。[/gk_q][gk_q q=”子どもたちにも、同席してもらったほうがいいですか?”]決まりはありません。まず夫婦で話し、妻の希望が分かってから、子どもにどこまで伝えるかを二人で決める順番もあります。妻が子どもにも聞いてほしいと望むなら、一緒に話す場をつくります。誰が同席するかも、妻の希望を中心に決めてください。[/gk_q][gk_q q=”「人生会議」とは、何をするものですか?”]厚生労働省がACP(アドバンス・ケア・プランニング)につけた愛称で、もしものときに望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有していく取り組みです。毎年11月30日が「人生会議の日」とされています。書類を作ることは必須ではなく、話し合いの中身も、その時々で変わってかまいません。[/gk_q][gk_q q=”夫婦で話す前に、夫だけで相談できるところはありますか?”]あります。がん相談支援センターなら、相談するのが患者さん本人でなくても、その病院にかかっていなくてもかまわず、費用もかからず、名前を伏せたまま話せます。国立がん研究センターのがん情報サービスサポートセンターも、平日に匿名で相談を受けています。がんと家族の相談室のLINEは名前を出さずに送れ、フォームから申し込めば、ご希望の時間帯に担当からお電話します。[/gk_q][/gk_faq]

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夫婦で言えずにいることを、まず外で整理しませんか

[gk_form_cta]お名前はニックネームで大丈夫です。電話を受けやすい時間帯を書いて送ると、受付確認のメールがすぐに届き、ご希望の時間帯に担当が電話をかけます。言えずにいることの仕分けから、看護師に頼む一言の準備まで、一緒に進めます。[/gk_form_cta]

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ほいくの相談室 編集部。保育士の方からの相談で多く聞かれる悩みをもとに、公的な資料で確認できる情報をまとめています。