ステージ4のがんで「治療は終わりにして、緩和ケアを中心に」と言われたとき、家族が今のうちに備えておきたいことは、夜の連絡網、療養場所、医療の希望、お金、仕事の5つに分けられます。どれも大事に見えて、一度に押し寄せてくるからこそ、手をつける順番を先に決めておくと動きやすくなります。
この記事で使う順番の物差しは、「本人と過ごす時間を削らないこと」です。本人の声がなければ決められないことは、いつもの会話の中に少しずつ混ぜる。家族だけで進められることは、本人のいない時間にまとめて片づける。準備のために病室で電話をかけ続け、肝心の顔を見る時間がなくなってしまう。そうならないための並べ方です。最期までの準備を「急ぐ・急がない」で分けた全体のチェックリストは、[gk_link to=”post:prepare-before-the-end-checklist”]急ぐこと・急がないことの整理[/gk_link]にまとめています。
「緩和ケアへ」と言われて、何から手をつければいいか分からない方へ
- 「治療は終わりにして、緩和ケアへ」と言われた。頭では分かっても、何を準備すればいいのか見当がつかない。
- 療養場所、お金、仕事、親戚への連絡。全部が同時に押し寄せてきて、どれも急ぎに見える。
- 準備に追われているうちに、本人と過ごす時間がなくなってしまいそうで怖い。
この記事で分かること
- 治療終了から緩和ケアの時期に、家族が備える5つのことと、その順番
- 本人の声が要る準備と、家族だけで進められる準備の分け方
- 療養場所・医療の希望・お金・仕事を、それぞれどこまで確かめればいいか
- 準備に追われて、本人との時間が減りそうなときの立て直し方
がんがステージ4で治療終了、緩和ケアに移ると言われました。家族として今のうちに何をしておけばいいですか?
夜の連絡網、療養場所、医療の希望、お金、仕事の5つを、この順番で進めます。決め手は本人と過ごす時間を削らないこと。本人の声が要るものは会話の中で少しずつ聞き、家族だけで進められるものは、本人のいない時間に回します。
いちばん上に夜の連絡網を置くのは、準備にかかる時間が短いのに、無いと本人との時間をいちばん大きく奪うからです。次に療養場所と医療の希望。この2つは本人にしか答えられず、しかも選んだ道によっては準備に時間がかかります。お金と仕事は、本人の暮らしに関わることでも、確かめる作業の多くは家族の側でできます。下の段ほど、本人のいない時間に回しやすいものと考えてください。
- 1夜の連絡網今週のうちに、家族だけで。本人の時間は使わない
- 2療養場所本人の希望を会話の中で聞き、選択肢と準備を医療者に尋ねる
- 3医療の希望話せる日に少しずつ。一度で決めず、何度でも話し直す
- 4お金医療費の上限と保険の中身を、家族が本人のいない時間に確かめる
- 5仕事家族それぞれが自分の職場と。休み方を決める前に制度を知る
順番は目安です。本人が「家に帰りたい」と強く望んでいるなら、療養場所が一段上がりますし、家計の心配で家族が眠れないなら、お金を先に確かめたほうが落ち着いて付き添えます。この時期に医師に聞いておく質問は、[gk_link to=”post:questions-when-treatment-ends”]治療終了のときに医師に聞く7項目[/gk_link]に質問メモの形でまとめているので、面談の前に合わせて使ってください。
「緩和ケアへ」は、見捨てられたということですか?
違います。緩和ケアは、痛みや息苦しさ、気持ちのつらさを和らげて、本人と家族の生活の質を高めるための積極的なケアです。治療の目的が、病気を小さくすることから、つらさを和らげて望む過ごし方を支えることへ移った、ということです。
「もう打つ手がないから緩和ケア」と受け取ってしまうと、本人も家族も、見放されたように感じます。けれど、WHO(2002年)による緩和ケアの定義(日本緩和医療学会の定訳)を短くまとめると、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のクオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチ、となります。家族も、ケアを受ける側に含まれています。
緩和ケアはもともと、がんと診断されたときから受けられるもので、終末期だけのものではありません(国立がん研究センター がん情報サービス)。受ける場所には、入院中の緩和ケアチーム、緩和ケア外来、緩和ケア病棟、自宅で受ける在宅緩和ケアがあります。また、多くのがんでは、離れた臓器への転移(遠隔転移)があるとステージ4になりますが、ステージ4という言葉だけで残りの時間が決まるわけではありません。治療を終える理由や、これからの見通しは、本人の病状に合わせて主治医に確かめてください。
ご本人の方は、「見捨てられた」と感じたその気持ちを、そのまま主治医や看護師に伝えてかまいません。ご家族の方は、本人の前で無理に明るくふるまうより、「先生たちは、これからも一緒に診てくれるって」のように、医療者から聞いた事実を一つ伝えるほうが支えになることがあります。
[gk_cta_mid title=”5つの準備の順番を、お電話で一緒に並べます”]今の状況と、いちばん気になっている準備をフォームにひとことお書きください。担当がお電話で、本人と過ごす時間を守る順番に一緒に並べ直します。病状の見通しの予測はせず、段取りだけを整えます。[/gk_cta_mid]なぜ「夜の連絡網」がいちばん先なのですか?
準備は一晩で済むのに、決めていないと、いちばん慌てる夜に本人のそばを離れて電話先を探すことになるからです。夜間・休日の電話先、家族への連絡の順番、もしもの夜に電話する先の3つは、家族だけで今週のうちに決められます。
治療が終わると、これまでの連絡先がそのまま使えるとは限りません。入院中なら病棟の夜間の番号、自宅で過ごすなら在宅医や訪問看護の連絡先を確かめ、番号と一緒に「どんな様子のときに電話してよいか」も聞いておきます。在宅療養支援診療所には、24時間連絡を受ける体制や往診の体制を確保することが国の施設基準で求められていますが、夜に誰が電話を受け、どう動いてもらえるかは医療機関ごとに違うので、具体的に確かめておくと安心です。
家族への連絡は、「誰が、誰に、どの順番で知らせるか」を決めておきます。連絡役を一人決めて、その人から遠方のきょうだいや親戚へ、と流れを一本にしておけば、本人のそばにいる人が電話に追われずに済みます。もしもの夜に電話する先も、ひとつだけ決めておけば足ります。相談室の[gk_link to=”page:night-number”]もしもの夜の備え[/gk_link]は、その一か所を決めておく無料の登録(3分)で、登録しても何かを決める必要はありません。ただし、命に関わると感じる変化が起きたときは、連絡網の順番を待たずに119番へ電話してかまいません。
- 夜間・休日に様子が変わったときの電話先(病棟・在宅医・訪問看護のどれか)
- その番号に、どんな様子のときにかけてよいか
- 電話をかけるときに伝えること(本人の名前、診察券の番号、主治医の名前)
- 家族への連絡役と、知らせる順番
- 遠方の家族が駆けつけるときの移動手段の目安
- もしもの夜に電話する先(ひとつでよい)
療養場所は、いつ、どうやって考え始めればいいですか?
決めるのは急がなくてかまいませんが、話し始めるのは今がよい時期です。選ぶ場所によっては、訪問看護や介護保険など準備に時間のかかるものがあるからです。本人の希望を会話の中で聞き、選択肢と準備は医療者に尋ねます。
国立がん研究センターの遺族調査(2025年7月公表。2021年に亡くなった方のがん遺族1,226名が振り返って回答)では、医師と最期の療養場所について話し合っていた割合は53%で、前回の36%から増えていました。増えてはいても、話し合えないまま過ぎていく家族がまだ多いことがうかがえます。
本人に聞くときは、「最期はどこで」と切り出す必要はありません。「病院と家、どっちが落ち着いて眠れる?」「家に帰ったら、まず何がしたい?」。答えの中に、本人が大事にしているものが見えてきます。そのうえで、医療ソーシャルワーカーに「家で過ごす場合と、緩和ケア病棟の場合で、それぞれ何が必要ですか」と聞きます。医療ソーシャルワーカーは、療養の場の変化や使える行政サービスについて、社会福祉の立場から相談に応じる専門職です。
自宅を考える場合に知っておきたいのが、訪問看護の扱いです。末期の悪性腫瘍の方は、要介護認定を受けていても医療保険で訪問看護を受けることになり、医療保険の訪問看護の日数の制限(原則週3日以内)もかかりません。医療保険と介護保険のどちらを使うかは利用する側の希望では選べず、訪問看護には主治医の指示が要ります。介護保険のサービスを使うには要介護認定が必要で、申請から通知までは原則30日以内です。40〜64歳の方も、がん(医師が回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)は特定疾病の一つで、認定を受ければ使えます。申請の相談は、市区町村の介護保険の窓口か地域包括支援センターでできます。
Q1本人は、過ごしたい場所について何か口にしていますか
はいその言葉を日付と一緒に書きとめ、主治医と看護師に伝える
いいえ「病院と家、どっちが落ち着く?」のような軽い問いを一つだけ用意する
Q2自宅で過ごす可能性がありますか
はい医療ソーシャルワーカーに、訪問看護と在宅医、介護保険の段取りを聞く
いいえ今の病院に続けていられるか、緩和ケア病棟という選択肢があるかを聞く
Q3家族の中で、場所の考えが分かれていますか
はい本人の言葉を真ん中に置き、医療者の説明を家族そろって聞く場を頼む
いいえ決めた方向を、本人とも医療者とも共有しておく
医療の希望は、本人とどう話しておけばいいですか?
一度の話し合いで決めようとせず、普段の会話の中で「つらいとき、何を一番に和らげてほしいか」「これだけはしてほしくないことはあるか」を少しずつ聞きます。気持ちは変わってよく、そのたびに話し直せば十分です。
もしものときに望む医療やケアを前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合って共有する取り組みを、厚生労働省は「人生会議」と呼んでいます。国の指針(人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン、平成30年3月改訂)は、本人による意思決定を基本にしています。書類を作ることが必須なのではなく、話して、共有して、変わったら話し直す。その積み重ねのことです。
聞き方の例を挙げます。テレビを一緒に見ていて、病気の人が出てきたときに「お父さんなら、ああいうとき、どうしてほしい?」。薬の時間に「痛いのと眠いの、どっちがいやだ?」。夕食のあとに「もし話せなくなったら、先生と話すのは誰がいい?」。一つの夜に一つで十分です。答えが返ってこなかったり、話をそらされたりしたら、それは本人の「今は話したくない」という返事なので、日を改めます。知らないままでいたい、決めたくないという気持ちも、本人の大事な意思として尊重されてよいものです。
ご本人の方で、家族が切り出せずにいる様子に気づいたら、自分から一つだけ話してみる方法もあります。「つらいときは、我慢しないで薬を使いたい」。その一言があるだけで、家族はずっと迷わずに済みます。
お金のことは、何をどこまで確かめておけばいいですか?
医療費の上限、本人が加入している保険の給付と特約、介護保険の申請の3つです。確かめる作業は家族が電話で進められますが、窓口によっては本人の同意や委任状を求められることがあり、特約を請求するかどうかのように本人の意向が要ることは本人と相談して決めます。
医療費には、1か月(1日から月末まで)の自己負担に上限がある高額療養費制度があり、2026年8月から上限額の見直しと年間上限の新設が行われました。上限額は本人の年齢と所得区分で決まるので、本人が加入している健康保険に「今の上限額はいくらですか」と電話で聞くのがいちばん確実です。マイナ保険証で受診していれば、限度額適用認定証がなくても、窓口の支払いは月の上限額までになります(マイナ保険証に対応していない医療機関や、所得の区分によっては認定証が必要です)。
生命保険では、原因にかかわらず医師から余命6か月以内と判断された場合に、将来の死亡保険金に代えて、所定の範囲内で保険金の一部または全部を生前に受け取れる、リビング・ニーズ特約がついている契約があります。受け取れる額の上限や請求の手続きは契約ごとに異なるため、手元の保険証券を見ながら保険会社に問い合わせます。ただ、請求には本人の病状が関わるので、使うかどうかは本人の気持ちを大事にしながら決めてください。
費用の心配から、痛み止めや必要なケアを控えようとする方もいます。お金のことは医療ソーシャルワーカーに相談し、つらさは我慢しない形を探してください。
家族の仕事は、どう段取りすればいいですか?
辞めると決める前に、介護休暇と介護休業を、体制を整える時期と付き添いが増える時期のどこで使うかを考えます。2025年4月からは、介護に直面した社員に会社が制度を個別に知らせ、意向を確かめることが義務になっています。
介護休業は、対象の家族1人につき通算93日まで取れて、3回まで分けることもできます。ここでいう対象は、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする「要介護状態」の家族です。雇用保険の介護休業給付金は、原則「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」です。介護休暇のほうは1年に5日まで(対象の家族が2人以上なら10日まで)で、時間単位でも取れるため、面談の数時間だけ休むといった使い方ができます。たとえば、医療ソーシャルワーカーとの面談や退院の日には介護休暇を時間単位で使い、付き添いが増えてきた時期に介護休業をまとめて取る、という使い分けができます。忌引きは法律で決められた休みではなく、会社が任意に設ける休暇なので、就業規則で確かめておきます。
職場への最初の一言は、「家族が治療を終えて緩和ケアに移りました。介護休暇と介護休業の制度について教えてください」で十分です。病状をどこまで話すかは、あなたが決めてかまいません。
ご本人の方が働いている場合は、会社員などで健康保険に本人(被保険者)として加入していれば、病気で働けず給与が出ないときの傷病手当金があります(国民健康保険には原則としてありません)。厚生労働省の「治療と就業の両立支援指針」が2026年4月から適用され、事業主の両立支援は努力義務になりました。仕事をどう続けるか、いつ区切るかは、働き方に関係なく、がん相談支援センターで相談できます。
準備に追われて、本人との時間が減ってしまいそうなときは?
準備を「本人と一緒の時間にすること」と「本人のいない時間に家族がすること」の2列に分け、付き添いの時間には本人の声が要ることだけを持ち込みます。電話や書類の時間を別に決めておくと、病室が手続きの場になりません。
面会に行っても、ロビーで保険会社に電話をかけ、病室では書類に記入し、本人とは「じゃあ、また来るね」だけで帰ってしまう。準備に一生懸命な家族ほど、そうなりがちです。本人の側から見れば、来てくれてはいるのに、話はできていない、ということになります。
本人と一緒の時間に持ち込むのは、本人にしか答えられないことと、ただ一緒に過ごすことだけ。電話、書類、制度の確認は、通勤の電車の中、昼休み、本人が眠っている時間に回します。遠方に住むきょうだいには、電話とパソコンでできる確認を任せると、近くにいる家族の付き添いの時間が守られます。
本人と一緒の時間に
- 過ごしたい場所や、してほしくない処置についての短い問い
- 会っておきたい人の名前を聞く
- 好きな番組を見る、昔の話をする、手を握る
本人のいない時間に
- 夜の電話先と、家族への連絡の順番を決める
- 医療費の上限と、保険の中身を本人の加入先に確かめる
- 職場に休み方を相談し、介護保険の申請の流れを聞く
- 1最初の数日夜の連絡網を家族で決める。知らせを受け止める時間をとる
- 21週目本人に、過ごしたい場所について軽い問いを一つ
- 32週目医療ソーシャルワーカーに、療養場所の選択肢と準備を聞く
- 43週目医療費の上限と保険の中身を、家族が電話で確かめる
- 54週目職場に休み方を相談し、介護休暇・介護休業の使い方を決める
- 6その後医療の希望を、話せる日に少しずつ。変わったら話し直す
病室で電話ばかりかけていた息子は、どう動いた?
説明のための例(実在の方の体験談ではありません)
1. 相談のあとに変わったこと
相談のあと、彼はノートを縦に2列に分けました。左の列は「母と一緒の時間」、右の列は「母のいない時間」。週2回の面会では右の列のことを一切持ち込まないと決め、保険会社や職場への電話は、月曜と木曜の夜にまとめてかけるようにしました。最初の週末には、病棟の夜間の番号と連絡の順番を、父と大阪の妹とのグループに送って固定しました。面会の日、テレビを見ながら「家と病院、どっちが落ち着く?」と聞くと、母は「そりゃ家よ」と即答したそうです。その言葉を医療ソーシャルワーカーに伝え、訪問看護と介護保険の相談が始まりました。保険の確認は妹が引き受けています。「病室で、もう電話をかけなくなった」と話しています。
2. 相談を考えた背景
主治医から「これ以上の治療は難しいので、これからは緩和ケアを中心に」と説明を受けたのは、母と父と三人で聞いた面談の席でした。帰りの車の中で、父は「見放されたってことか」とだけ言い、母は窓の外を見ていたといいます。
3. 相談する前に困っていたこと
その週から、彼は面会のたびに、ロビーで保険会社に電話をかけ、病室では書類を書いていました。検索で見つけた「やるべきことリスト」は30項目を超え、全部が急ぎに見えたそうです。ある日、母に「来ても電話ばっかりね」と言われ、言い返せませんでした。
4. ここを選んだ理由・決め手
病院の医療ソーシャルワーカーにはいずれ相談するつもりでしたが、何をどの順番で聞けばいいのかが分かりませんでした。平日の日中は仕事で電話をかけられないため、夜にフォームを送り、受付確認のメールを見てから眠ったといいます。折り返しの時間は、会社の外に出て話せる昼休みの時間帯を選びました。
5. 相談で話したこと・その後
電話では、担当がまず話をひととおり聞き、30を超える項目を、夜の連絡網・療養場所・医療の希望・お金・仕事の5つに束ねました。次に、それぞれを「母の声が要るか」で2列に分けていきました。母の見通しを尋ねられたとき、担当は予測をせず、主治医に確かめる質問として「家で過ごすなら、何を、いつまでに準備すればいいですか」をメモに加えています。ただ、最初に母に療養場所を聞こうとした日は母が疲れていて、話を切り出せませんでした。2列のノートを見返して「今日は左の列の、手を握るだけの日にしよう」と決めたら、気持ちが楽になったそうです。
※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。
医療者に聞く質問例
- 夜間や休日に様子が変わったら、これからはどこに、どんなときに電話すればいいですか。
- 家で過ごすことも考えています。いつごろまでに、何を準備すればいいですか。
- 療養の場所や介護保険の相談をしたいので、医療ソーシャルワーカーにつないでいただけますか。
- 本人にこれからの医療の希望を聞きたいのですが、先生からも話を向けていただけますか。
- 付き添いが増えるのは、どんな変化が出てきたころと考えておけばいいですか。
とはいえ、準備に追われるご家族に伝えたい2つのこと
① 気持ちのこと──準備は「ある程度」で、もう十分です
5つ全部を整えてから、と思うと、いつまでも準備が終わらないように感じます。J-HOPE4と呼ばれる遺族調査(日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団が2020年に報告。2018年に215施設の遺族を対象とし、9,071名が有効回答)では、患者さんが亡くなることへのこころの準備が「できていた」と答えた遺族は29%で、「ある程度できていた」を含めると85%でした。回答した方の大半は緩和ケア病棟で家族を見送った方なので、すべての家族を代表する数字ではありませんが、こころの準備がすっかりできたと感じて見送る人は、多くはないことがうかがえます。気持ちの準備が追いつかないと感じるのは、あなただけではありません。また、がん情報サービス(国立がん研究センター)は、家族は自分の気持ちを我慢しがちで、日常生活も維持しなければならないことから、「第二の患者」ともいわれると説明しています。準備の手を止めて眠る日があっても、それは本人のそばに居続けるための休みです。
② 実務のこと──家族の中で、3つの役を分けておく
この時期の準備は、ひとりで抱えると、その人から本人との時間が消えていきます。家族の中で、病院とのやりとりを受け持つ「窓口役」、お金や制度の確認を受け持つ「調べ役」、そして本人のそばにいることを中心にする「そばにいる役」を分けておくと、準備が進んでも付き添いの時間が守られます。遠方の家族は調べ役に向いています。役は固定せず、疲れた人がいたら入れ替えます。相談先も、中身で使い分けられます。療養の場所や制度のことは、病院の医療ソーシャルワーカーへ。がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口で、家族だけでも、その病院に通っていなくても、無料・匿名で使えます。制度のことを電話で聞きたいときは、国立がん研究センターのがん情報サービスサポートセンター(0570-02-3410、平日10時〜15時。相談は無料、通話料は自己負担)もあります。段取りの順番そのものに迷うときは、相談室の電話(050-1720-6000)へ。平日の9:00〜18:00なら担当が直接出ます。それ以外の時間は自動音声で受け付け、翌朝9時までに担当から折り返しのお電話をします。
今日できること
[gk_howto name=”今日できること” description=”今夜から明日にかけて、本人との時間を守る準備を始める3つ” heading=”none”][gk_step title=”5つを2列に振り分ける”]紙の左に「本人と一緒の時間に」、右に「本人のいない時間に」と書き、連絡網・療養場所・医療の希望・お金・仕事を振り分ける。[/gk_step][gk_step title=”準備の時間を手帳に書く”]付き添いとは別に、電話や書類に使う時間を週に2回、曜日と時刻まで決めて書き込む。[/gk_step][gk_step title=”夜の電話先を一番上に固定する”]病棟や訪問看護の夜間の番号を、どんな様子のときにかけるかと一緒に家族のグループへ送り、一番上に固定する。[/gk_step][/gk_howto]よくある質問
[gk_faq][gk_q q=”ステージ4と言われたら、もう「末期」ということですか?”]そうとは限りません。ステージは、がんの大きさや広がり、リンパ節への転移、離れた臓器への転移の組み合わせで決まる分類で、多くのがんでは、離れた臓器への転移があるとⅣ期になります。基準はがんの種類ごとに違い、ステージだけで残りの時間が決まるわけではありません。治療を終えると言われた理由や、これから起こりやすい変化は、本人の病状に合わせて主治医に確かめてください。[/gk_q][gk_q q=”痛み止めを増やすと、話せなくなったり、命が縮んだりしませんか?”]痛み止めとして使われる医療用麻薬(オピオイド)について、日本緩和医療学会の『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020年版』は、使うことで生命予後が短くなるという根拠はないとしています。薬によっては眠気が出ることもありますが、気になる変化は主治医や看護師、薬剤師に伝えれば、量や使い方を相談できます。話す時間を大事にしたいという希望も、そのまま伝えてかまいません。痛みが和らぐと、かえって会話が増えることもあります。[/gk_q][gk_q q=”本人が準備の話を嫌がります。どうすればいいですか?”]本人の声が要ることは、無理に聞き出さなくてかまいません。夜の連絡網、医療費の上限や家族の仕事の確認のように、家族の側だけで進められる準備は、本人の時間を使わずに進められます。療養場所や医療の希望は、楽しい話の流れで一言聞けそうな日を待ちます。家族からどうしても切り出せないときは、主治医や看護師に「本人の希望を聞いていただけませんか」と頼む方法もあります。[/gk_q][gk_q q=”葬儀のことも、今のうちに決めておくべきですか?”]今の時期に決めておけば足りるのは、もしもの夜に電話する先をひとつだけです。葬儀の形や依頼先は、本人との時間を削ってまで今決める必要はありません。最期までの準備を、急ぐことと急がなくていいことに分けて確かめたいときは、[gk_link to=”post:prepare-before-the-end-checklist”]急ぐ・急がないで分けたチェックリスト[/gk_link]を見てください。[/gk_q][gk_q q=”看病している家族のほうが眠れず、気持ちがもちそうにありません。”]支える家族がつらくなるのは、弱さではありません。がん相談支援センターは、患者さん本人だけでなく、家族の気持ちのつらさも無料・匿名で聞いてくれます。気分の落ち込みが続くときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)にかけると、かけた場所の都道府県などが行う公的な相談窓口につながります(受付時間は地域で異なり、通話料がかかります)。本人の様子が急に変わったときは病棟や訪問看護へ。命に関わると感じたら、119番に電話してください。[/gk_q][/gk_faq]次に読むなら
- [gk_link to=”post:prepare-before-the-end-checklist”]最期までの準備を、急ぐことと急がないことに分けるには?[/gk_link]
- [gk_link to=”post:questions-when-treatment-ends”]治療が終わるとき、医師に何を聞いておけばいいですか?[/gk_link]
- [gk_link to=”post:what-happens”]治療終了から看取りまで、どんな流れになりますか?[/gk_link]
- [gk_link to=”post:cant-focus-at-work-family-cancer”]看病で仕事に集中できないとき、職場にどう伝えればいいですか?[/gk_link]
- [gk_link to=”post:family-caregiver-exhausted-second-patient”]支える家族がしんどいとき、自分をどう守ればいいですか?[/gk_link]
- [gk_link to=”page:night-number”]もしもの夜に電話する先を、先に決めておくには?[/gk_link]