親が病状を話してくれないとき、家族にできることは、聞き出すことではありません。分からない部分に入り込んでくる悪い想像を事実から切り離すこと、親の「知られたくない」を守りながら待つこと、そして待つあいだの自分の不安を、自分の相談として誰かに話すことです。
病状を誰に、どこまで伝えるかは、本人が決めてよいことです。医療者も、家族に病状を説明する前に、本人の意向を確かめるのが一般的です。話してくれるまでにかかる時間も、話す中身も、親御さんによって大きく違います。顔色や通院の回数といった外から見える様子だけで、病状や余命を推し量ることはできません。
この記事では、親が「大したことない」としか言わず、診察にもひとりで行ってしまうご家族に向けて、悪い想像が膨らむ理由、想像と事実の分け方、待つあいだに確かめておけること、ご家族自身が相談できる先をまとめました。一緒に説明を聞かせてもらう頼み方は[gk_link to=”post:learning-parents-prognosis-with-consent”]親の気持ちを守る病状の聞き方[/gk_link]、本人が話さない理由は[gk_link to=”post:patient-wont-open-up”]本人が話してくれないときの支え方[/gk_link]で詳しく扱っています。
「大したことない」の先が分からず、眠れない方へ
- 父は「大したことない」としか言わず、診察にもいつもひとりで行ってしまう。
- 先生の話を直接聞けないので、顔色や声の調子から、悪いほうへばかり想像してしまう。
- 本当の病状を知って心の準備をしたい。でも、父の「知られたくない」を踏みにじりたくはない。
親のがんの病状や余命がよく分からず不安です。教えてもらえないとき、家族は何ができますか?
探ることより、「分ける」「待つ」「話す」の3つに力を使ってください。頭の中の心配を事実と想像に分け、本人の気持ちを守りながら連絡の線だけはつないで待ち、分からない不安はご家族自身の相談として外で話します。
教えてもらえない不安は、ひとかたまりに見えて、実は3つの層が重なってできています。一つは情報の空白です。病状が分からない部分を、想像が勝手に埋めていきます。二つめは親子の間合いです。聞けば嫌がられ、聞かなければ置いていかれる気がして、会うたびに言葉を選びすぎて疲れてしまいます。三つめは孤立です。親が話さない以上、家族の側も誰にも相談できない気がして、不安をひとりで抱え込みます。
層ごとに効く手当ては違います。全部を一度に始める必要はなく、今夜いちばん重く感じている層から一つ選べば十分です。
- 1情報の空白分からない部分を想像が埋めていく。手当ては、心配を事実と想像に分けて書くこと
- 2親子の間合い聞けば嫌がられ、聞かなければ置いていかれる。手当ては、聞き出さないと決めて待つこと
- 3自分の孤立親が話さない以上、誰にも言えない気がする。手当ては、自分の相談として外で話すこと
反対に、家族にはできないこともあります。親の病状を、親の了解なしに知ることです。できないことを最初にはっきりさせておくと、できることに使う力が手元に残ります。
なぜ、分からないままだと悪い想像ばかり膨らむのですか?
想像が、確かめられないまま残り続けるからです。ふだんなら会話の中で正される心配も、本人に聞けない状況では上書きされず、顔色や通院の回数といった小さな手がかりが、悪いほうへの「証拠」として積み重なっていきます。
たとえば、仕事帰りに実家へ寄ったら、父の背中がひと回り小さく見えたとします。ふだんなら「最近やせた?」「ちょっと夏バテでね」というやりとりで、心配はひとまず落ち着くところへ戻ります。ところが病状を話さない親が相手だと、その一言を口にすること自体がためらわれます。聞けないまま帰りの電車に乗ると、小さく見えた背中は、頭の中で「悪くなっている証拠」に姿を変えていきます。
本人の「大したことない」も、心配を正す材料にはなりにくい言葉です。言葉どおりかもしれないと思う一方で、家族に心配をかけないための言葉かもしれないとも思えてしまうからです。打ち消す材料がないので、想像は悪いほうへ一方向にだけ進みます。
もう一つの理由は、心が最悪の場面に先回りして、備えようとすることです。突然の知らせに打ちのめされないように、頭の中で何度も練習してしまう。「心の準備をしたい」という願いは、親を大切に思う人に自然に生まれるもので、冷たさの表れではありません。ただ、練習の材料が想像だけだと、準備のつもりが毎晩の消耗に変わってしまいます。
想像と事実は、どうやって分ければいいですか?
頭に浮かんだ心配を一行ずつ書き出し、それぞれに「本人の言葉」「自分の目で見たこと」「自分の推測」「一般的な情報」という出どころのラベルを付けます。推測と一般的な情報のラベルが付いた心配は、まだ誰にも確かめられていないものです。
書き出しは5分ほどで区切ります。きれいな文にする必要はなく、「父がやせた」「通院が増えた」「来年の正月は」と単語を並べるだけでかまいません。出てきた行ごとに、その心配がどこから来たのかを短く書き添えていきます。
ラベルを付けると、同じ心配でも扱い方が変わります。「大したことない」という本人の言葉は、病状そのものを表しているかどうかは分かりませんが、本人がそう伝えたいと思っていることは事実です。「背中が小さく見えた」は自分の目で見た事実ですが、理由までは分かりません。顔色や体つきの変化には、治療の影響、眠れていないこと、季節の疲れなど、いくつもの理由がありえて、家族には見分けがつかないからです。「悪くなっているに違いない」は、自分の推測です。
| 頭に浮かんだ心配 | 出どころ | 分かっていること・分からないこと |
|---|---|---|
| 「大したことない」と言っていた | 本人の言葉 | 本人がそう伝えたいことは事実。病状そのものかは分からない |
| 背中がひと回り小さく見えた | 自分の目で見たこと | 見えた変化は事実。理由は家族には見分けられない |
| 通院が増えたのは悪くなった印だ | 自分の推測 | 確かめていない。治療の予定で通院が増えることもある |
| この病気は何年と書いてあった | 一般的な情報 | 過去の大勢の人の統計。父個人の余命を示すものではない |
ラベルが付いたら、推測と一般的な情報の行を見て、「これは誰に聞けば分かることか」を考えます。多くの場合、答えは「本人か主治医だけ」です。それなら、今夜の自分がどれだけ考えても確かめようがありません。その行には印を付けて、「今夜は考えなくていい」と決めて閉じておきます。消すのではなく、置き場所を決めるだけです。
自分の目で見たことの行は、残しておく価値があります。日付と一緒にメモしておけば、いつか親御さんが話してくれたときや、急に体調が変わったときに、落ち着いて伝えられる材料になります。書き出した紙やメモは、親御さんの目に触れない場所にしまってください。
[gk_cta_mid title=”親御さんが口にした医療の言葉を、分かる言葉に直します”]「経過を見るって」「次は検査だって」と、親御さんがぽろっと口にした言葉の一般的な意味を、お電話でお伝えします。病状の予測はしませんが、想像の箱に入れていた言葉を、事実の側へ戻す手伝いができます。[/gk_cta_mid]本人の「知られたくない」を守りながら待つには、どうすればいいですか?
こちらからは聞き出さない、と一度だけ言葉にして伝え、そのかわり「もしものときの連絡の線」だけは確かめておきます。待つことの中身を決めておくと、待つ時間は放っておく時間ではなく、親御さんを守る時間に変わります。
病状を話さない親御さんは、家族が来るたびに「また聞かれるかもしれない」と身構えていることがあります。そこで、聞き出さないことを先に約束してしまう方法があります。例:「病気のことは、話したくなったときだけでいいよ。こっちからは聞かないことにする。そのかわり、手伝えることがあったら言ってね」。言うのは一度で十分です。返事がなくても、伝わっていないわけではありません。
約束したら、会ったときの話題から病気を外します。孫の運動会、庭の柿の実り、ひいきの球団の順位。病気の話が出ない時間が続くと、親御さんの身構えがほどけ、ふとした拍子に「実はな」と話が出てくることもあります。ただし、それは待つことの目的ではなく、おまけです。話してくれないままでも、約束を守った時間は、親御さんにとって安心して過ごせる時間になっています。
本人の知らないところで病状を探ろうとすることは、待つことと両立しません。知られたときに、「聞かない」と言った約束まで疑われてしまうからです。
病状の中身には触れなくても、確かめておけることがあります。病院の名前、具合が悪くなったときの連絡先、緊急のときに病院から誰に電話が来るか。これらは親御さんの「知られたくない」を侵さずに聞けて、もしものときに家族が動けるかどうかを左右します。例:「病気のことは聞かないけど、もしものとき病院から誰に電話が来るかだけ教えて。私の番号も入れておいてもらえる?」
- 親が通っている病院の名前と、かかっている診療科
- 病院からの緊急の連絡が、誰に届くことになっているか
- 具合が悪くなったとき、本人がまずどこに電話するか
- 家族の電話番号が、本人の手帳やスマホに入っているか
- 通院する日だけでも、家族に知らせてもらえるか
通院の日を知らせてもらえるようになったら、その日の夜に「お疲れさま」とだけ送ってみてください。結果は聞かず、ねぎらうだけにします。聞かれないと分かっている連絡は、親御さんにとって返しやすい連絡です。
一度断られても、扉が閉じたわけではありません。検査が一区切りついたころや、季節の行事で集まったときなど、節目ごとに「聞かない約束はそのままだよ。でも、話したくなったらいつでも聞く」と、扉が開いていることだけを伝え直します。
待つあいだの自分の不安は、誰に話せばいいですか?
親の病状を聞き出すためではなく、「分からないことがつらい」という自分の相談として話してください。がん相談支援センターは家族も無料・匿名で使え、相談した内容が、相談した人の同意なく担当医などに伝わることはありません。
相談するときのこつは、主語を親から自分に変えることです。「父の病状を知りたい」は、親の了解がなければ誰にも答えられない相談です。けれど、「父が病状を話してくれず、不安で眠れません」なら、ご家族自身の相談として、どの窓口でも受け止めてもらえます。
家族は「本人はもっとつらいのだから」と自分の気持ちを後回しにしがちで、日々の暮らしも回し続けなければなりません。国立がん研究センターのがん情報サービスが「ご家族は、『第二の患者』ともいわれます」と紹介しているのは、そのためです。家族向けの別のページには、家族が自分のつらさや困りごとを担当医や看護師に相談してかまわないこと、相談しにくいときは看護師やがん相談支援センターに相談できることも書かれています。病状を教えてもらえない家族の不安も、その中に含まれます。
がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院などにあり、その病院に通っていない人も使えます。親御さんの通う病院のセンターでも、別の病院のセンターでもかまいません。がんにくわしい看護師や、生活全般の相談ができるソーシャルワーカーなどが、面談か電話で話を聞きます。近くのセンターを探すときは、がん情報サービスの「相談支援センターを探す」のページが使えます。
病院を問わず話したいときは、国立がん研究センターの「がん情報サービスサポートセンター」(0570-02-3410 または 03-6706-7797、平日10時〜15時、通話料は自己負担)も使えます。匿名で相談でき、がん相談の研修を受けた看護師や心理士などが対応します。医学的な判断が必要な質問には答えられません。
こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)は、かけた地域の公的な相談窓口につながる番号で、曜日や時間は地域によって違い、通話料がかかります。よりそいホットライン(0120-279-338)は、がん専門ではありませんが、24時間・無料で夜中の不安も受けています。
がんと家族の相談室も、ご家族からの相談を受けています。2026年9月の実績(運営者集計)でも、1,200件あった電話相談・問い合わせのうち、ご家族からのものが800件を占めていました。親が話してくれない不安を、評価も助言もせずに20分お聞きし、ご希望があれば記録も残しません。
分からない不安を話す、ご家族自身の相談
- がん相談支援センター家族だけで相談できる。内容は相談した人の同意なく伝わらない
- がん情報サービスサポートセンター平日の昼に電話かチャットで。匿名、原則1日1回20分以内
- こころの健康相談統一ダイヤル0570-064-556。眠れない、沈むといったこころのつらさを地域の窓口へ
- よりそいホットライン0120-279-338。24時間・無料。夜中に声で話したいとき
- がんと家族の相談室親が口にした言葉の一般的な意味と、評価も助言もしない20分
病名だけは分かっています。調べて出てくる生存率は、親に当てはまりますか?
そのまま当てはまるものではありません。生存率は、過去に診断された大勢の人の経過をまとめた集団の数字で、親御さん一人の余命を示すものではないからです。
生存率とは、診断からある期間が過ぎた時点で、生存している人がどのくらいの割合かを示す数字です。国立がん研究センターの院内がん登録の閲覧システムは、表示している生存率は「過去の期間にがんと診断された方の生存率」で、これから治療を受ける人には当てはまらない可能性がある、と注意を添えています。検索で目に入る「生存期間中央値」も、集団の半数がまだ生存している期間のことで、一人ひとりの余命を言い当てる数字ではありません。
しかも、病名しか分からない家族の手元には、がんの広がり、受けている治療、体の状態といった、数字を読むのに欠かせない情報がありません。同じ病名でも、こうした条件によって経過は大きく変わります。仮に医師から見通しが示されたとしても、それは同じ状態の方の統計をもとにした目安で、個人差が大きいものです。
調べること自体をやめる必要はありません。調べるなら、国立がん研究センターのがん情報サービスのような公的な情報で病気の一般的な説明を読み、読んだことには「一般的な情報」のラベルを付けておきます。数字との距離の取り方は、[gk_link to=”post:parent-how-long-numbers-meaning”]余命の数字の意味と聞き方[/gk_link]でも扱っています。
母やきょうだいだけが知っているときは、どうすればいいですか?
聞き出す役を頼むのではなく、「私が駆けつけたほうがいいことが起きたら、それだけは教えて」と伝えておきます。知っている人を板挟みにしないことが、親御さんの気持ちを守り、いざというときの知らせの通り道を残すことにつながります。
たとえば、父は母には話しているようなのに、母に聞くと「お父さんが言わないでほしいって」と口をつぐむ、という家もあるでしょう。知っている家族は、親御さんとの約束と、子どもの心配のあいだで板挟みになっています。そこで問い詰めると、知っている側は、約束を破るか、子どもを突き放すかの二択に追い込まれてしまいます。
頼み方を変えると、板挟みはゆるみます。例:「中身は言わなくていいよ。ただ、駆けつけたほうがいいことが起きたら、それだけは知らせてね」。中身ではなく、動く必要があるときの合図だけを頼むので、知っている側も約束を破らずに引き受けられます。
もう一つ、知っている側の荷物にも目を向けてください。親御さんから病状を聞き、それを誰にも言えずにいる母も、ひとりで重いものを抱えています。「お母さんがしんどいときは、愚痴っていいからね」と伝えておけば、病状の話はしなくても、母が気持ちを下ろせる場所になれます。母自身の不安も、がん相談支援センターで相談できます。
急に具合が悪そうに見えるときも、待つしかないのですか?
待たなくてかまいません。体調の急な変化は、病状を知っているかどうかに関係なく、本人に受診を勧めたり、病院に連絡したりしてよい場面です。命が危ないと感じた場面では、ためらわず119番を呼んでください。
「聞き出さない」と約束したことと、目の前の体調の変化に動くことは、別のことです。息がひどく苦しそう、呼びかけへの反応がいつもと違う、痛みで動けない。そんな様子を見たら、病名や治療の中身を知らなくても、見たままを伝えれば助けを呼べます。119番では、例:「父ががんで通院しています。今、息がとても苦しそうです」と、知っている範囲と目の前の様子を伝えれば足ります。
救急車を呼ぶほどか迷うときは、救急安心センター事業(#7119)で、医師や看護師、救急救命士に電話で相談できる地域があります。実施していない地域もあるので、お住まいの地域で使えるかどうかを、ふだんのうちに確かめておくと安心です。
急ぎではないけれど気になる変化、たとえば食べる量が減った、眠れていないようだ、といったことは、本人に「今度の診察で先生に言ってみたら」と勧めるのが基本です。そのときも、「病気のことは聞かないけど、それだけは心配だから」と、約束を守っていることを添えます。確かめておいた病院の連絡先は、こうした場面のためにあります。
Q1呼びかけへの反応がおかしい、ひどく息苦しそうなど、命に関わると感じますか
はい迷わず119番へ。知っている範囲と、目の前の様子を伝える
いいえ次の問いへ進む
Q2救急車を呼ぶほどかどうか、判断に迷っていますか
はいお住まいの地域に#7119があれば、電話で相談する(実施していない地域もある)
いいえ次の問いへ進む
Q3本人が、自分で病院に連絡できそうですか
はい「今のうちに病院に電話してみたら」と勧め、そばにいる
いいえ本人に断ったうえで、確かめておいた病院の連絡先に家族から電話する
「大したことない」の先が見えなかった息子さんは、どう待つことにした?
説明のための例(実在の方の体験談ではありません)
1. 相談のあとに変わったこと
相談から1か月がたったころ、息子さんは父との電話で、検査のことを一度も聞かなくなっていました。話題は野球と、母が育てているトマトのことです。病院の緊急連絡先には、母に加えて息子さんの番号も書き足してもらいました。ある晩、父のほうから「来月、薬が少し変わるらしい」とぽつりと言い、息子さんは「そっか、教えてくれてありがとう」とだけ返したそうです。毎晩のように続いていた夜中の検索は、週に1回ほどになりました。「知らないことは変わらないのに、夜の重さが違う」と話しています。
2. 相談を考えた背景
父ががんと分かったのは半年前でした。家族に伝えられたのは病名だけで、父は「大したことない、早く見つかった」と繰り返し、診察にはいつもひとりで出かけていきました。母に聞いても「お父さんが言わないでほしいって」と言うばかりで、息子さんは何も分からないまま、月に一度、実家に顔を出していました。
3. 相談する前に困っていたこと
正月に帰省したとき、父のベルトの穴が一つ内側に移っているのに気づきました。その夜から、病名と「余命」で検索するのが日課になりました。生存率の表を見ては父の年齢に当てはめ、残りの年数を数えてしまう。妻には「考えすぎだよ」と言われ、それきり誰にも話せなくなりました。病院に電話して聞いてみようかと考えたこともありますが、父に知られたときのことを思うと、番号を押せませんでした。
4. ここを選んだ理由・決め手
父の通う病院のがん相談支援センターのことは知っていました。それでも、父と同じ病院に相談するのは気が引けたといいます。相談室のページで「親の病状を探るためではなく、ご家族自身の不安の相談として」という言葉を読み、聞き出したいわけではない自分の気持ちに、初めて名前がついた気がしたそうです。夜中に名前を出さずにLINEで送れることも、決め手になりました。
5. 相談で話したこと・その後
翌朝の返事を読んで、息子さんはフォームから電話を申し込みました。担当は父の病状や見通しについて何も判断せず、最初の20分は聞くことに徹しました。そのあと息子さんの希望で、頭の中の心配を一緒に書き出し、出どころのラベルを付けていきました。父が口にした「経過を見る」という言葉も、一般にはどんな場面で使われるかを聞き、それだけでは良い知らせとも悪い知らせとも決まらないと分かったそうです。父への一言は、息子さんが自分で決めました。「病気のことはもう聞かない。そのかわり、もしものときの連絡先に俺の番号も入れといて」。父は少し黙ってから、「分かった」と答えました。
※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。
相談窓口や医療者に聞く質問例
- 親が病状を話してくれず、家族が不安です。家族だけで相談してもいいですか。
- 本人の病状に触れずに、家族が知っておくとよい一般的なことはありますか。
- 本人の了解が得られたら、家族が説明を聞かせてもらうには、どうすればいいですか。
- 本人の具合が急に悪くなったとき、家族はどこに連絡すればいいですか。
- 家族自身が眠れない日が続くときは、どこに相談すればいいですか。
とはいえ、知らないまま待つあなたに伝えたい2つのこと
① 気持ちのこと──知りたいと思うのは、親を裏切ることではありません
親の「知られたくない」を尊重することと、子どもが「知りたい」と願うことは、どちらかを捨てなければならない関係ではありません。知りたいのは、親を大切に思い、もしものときに慌てたくないからです。話してくれない親に、寂しさや、ときには腹立たしさを感じる日もあるでしょう。その気持ちも、親を思う気持ちと同じところから出ています。夜中にこの画面を開いて、悪い想像を止められずにいる自分を責めなくて大丈夫です。泣きたい夜は泣いてかまいませんし、待つことに疲れたら、待つのを一日休む日があってもいいのです。
② 実務のこと──待つあいだの役目を、家族で分けておく
待つ期間が長くなるほど、一人が全部を抱えていては続きません。家族の中で、病院からの連絡を受けるもしもの線を持つ人、親御さんと病気以外の話をする人、病状を知っている家族の話を聞く人、というように役目を分けておきます。大事なのは、「親から聞き出す役」を誰にも割り振らないことです。誰かが聞き出そうとすると、親御さんは家族全体に身構えてしまいます。役目と連絡先はきょうだいで共有するメモに書いておき、親御さんから何かを聞いた人は、ほかの家族に話してよいかを本人に確かめてから伝える、という決まりもそろえておくと、行き違いが起きにくくなります。
今日できること
[gk_howto name=”今日できること” description=”教えてもらえない不安を抱えた今夜から明日にかけて、家族ができる3つのこと” heading=”none”][gk_step title=”心配に出どころを書き添える”]頭に浮かんだ心配を一行ずつ書き、「本人の言葉」「見たこと」「推測」「一般的な情報」のどれかを添える。推測と一般的な情報の行には印を付け、今夜は閉じておく。[/gk_step][gk_step title=”「聞かない」の一言を用意する”]次に親と話すときの一言(例:「病気のことは、話したくなったときだけでいいよ」)を、スマートフォンのメモに書いておく。[/gk_step][gk_step title=”主語を自分にして一言伝える”]「父が病状を話してくれず、不安です」と、がん相談支援センターへの電話か、相談室のLINEで一言だけ伝える。[/gk_step][/gk_howto]よくある質問
[gk_faq][gk_q q=”父の病院に電話して、病状を聞いてはいけませんか?”]本人の了解がないまま病院に問い合わせても、詳しい病状は教えてもらえないことが多く、本人が知ったときに信頼が揺らぐおそれもあります。心配な気持ちを伝えたいなら、本人の了解を得たうえで、一緒に説明を聞かせてもらう方法を選んでください。了解が得られないあいだは、ご家族自身の不安を、がん相談支援センターなどで相談できます。[/gk_q][gk_q q=”余命が分からないままでは、心の準備ができません。”]心の準備は、余命の数字がなくても始められます。会いに行く日を少し増やす、話しておきたいことをメモにためておく、もしものときの連絡先を確かめておく、といったことです。仮に数字が示されても、それは同じ状態の方の統計をもとにした目安で、個人差が大きいものです。数字が分からないうちから、今できる準備に手をつけてかまいません。[/gk_q][gk_q q=”つい「何か隠してるでしょう」と言ってしまいました。”]言ってしまったと感じたら、短く言い直せば十分です。例:「この前はごめん。心配で言いすぎた。話したくないことは、もう聞かないから」。謝ったうえで聞かない約束をすると、親御さんの身構えがかえってゆるむこともあります。言いすぎてしまうのは心配がたまっているしるしでもあるので、その心配は親御さんではなく、相談窓口に向けてください。[/gk_q][gk_q q=”家族ががん相談支援センターに相談したことは、父に伝わりますか?”]がん相談支援センターで相談したことが、相談した人の同意なしに、担当医や病院のスタッフを含め、ほかの人に知られることはありません。家族だけで使うことも、親御さんの通う病院とは別の病院のセンターを使うこともできます。無料で、名前を言わずに相談することもできます。[/gk_q][gk_q q=”知らないうちに手遅れになったら、と思うと怖いです。”]治療を決めるのは本人と主治医で、家族が病状を知らないことが、そのまま治療の遅れにつながるわけではありません。家族にできるのは、急な体調の変化に気づいたときに動けるよう、病院の連絡先を確かめておくことです。それでも怖さが消えない夜は、その怖さを誰かに話してください。[/gk_q][gk_q q=”夜中に不安が止まらないときは、どこに連絡できますか?”]今夜のうちに声で話したいときは、よりそいホットライン(0120-279-338)が24時間・無料で受けています。朝まで待てるなら、がんと家族の相談室のLINEに一言送っておけば、翌朝いちばんに読んでお返事します。お電話なら、平日9時〜18時の外の時間は自動音声が受け付け、翌朝9時までに担当からかけ直します。[/gk_q][/gk_faq]次に読むなら
- [gk_link to=”post:learning-parents-prognosis-with-consent”]親の了解を得て、一緒に病状を聞かせてもらうには?[/gk_link]
- [gk_link to=”post:patient-wont-open-up”]本人が病気のことを話さないのは、なぜですか?[/gk_link]
- [gk_link to=”post:parent-how-long-numbers-meaning”]親の余命の数字は、どう受け止めればいいですか?[/gk_link]
- [gk_link to=”post:parent-cancer-child-fear-tonight”]親のがんが怖くて眠れない夜は、どう過ごせばいい?[/gk_link]
- [gk_link to=”post:choosing-who-to-consult-by-worry”]悩みの種類ごとに、誰に相談すればいいですか?[/gk_link]
- [gk_link to=”page:for-family”]ご家族が自分のために使える相談の入口は?[/gk_link]