妻(夫)のがんが進行したあとの道のりは、大きく五つの段階に分けて見通すことができ、配偶者が決めることも段階ごとに変わっていきます。治療を続ける時期、治療の目的が変わる時期、緩和ケアを中心に過ごす時期、看取りの時期、そしてお別れの直後です。それぞれの段階がどれくらい続くかは人によって大きく異なり、体調が持ち直して、ひとつ前の段階に戻ったように見えることもあります。
同居の配偶者は、気づけば主な介護者になっていることがあります。この記事では、そうなることを前提に、五つの段階それぞれで夫(妻)が決めることと、共倒れを防ぐために先に組み込んでおきたい支えを、一枚の表と具体的な場面で整理しました。体に起きる変化を含めた流れの全体は、[gk_link to=”post:what-happens”]治療終了から看取りまでの全体像[/gk_link]にまとめています。妻を看る夫の方を主な読み手にしていますが、夫を看る妻の方、籍を入れていないパートナーの方にもそのまま使えます。
「この先」を一人で考え続けている夫の方へ
- 「病気が進んでいます」と言われてから、この先なにが起きて、自分がいつ何を決めればいいのか、まるで見えない。
- 仕事を続けられるのか、家で看られるのか。考え始めると、気づけば夜中になっている。
- 妻の前では落ち着いて見せているけれど、正直、気を張り続けることに疲れてきた。
妻のがんが進行しています。これからどうなり、夫として各段階で何を決めればいいですか?
一般には、治療を続ける時期から、治療の目的が変わる時期、緩和ケアを中心に過ごす時期、看取りの時期、お別れの直後へと移ります。夫が段階ごとに決めるのは主に自分の働き方と支える体制で、どの段階でも、自分が倒れないための支えを一緒に用意します。
段階に分けて考えるのは、決めることにはそれぞれ「旬」があるからです。治療を続けている時期に、最期を過ごす場所や葬儀のことまで抱えこむと、まだ来ていない心配で毎日が埋まってしまいます。反対に、治療の目的が変わったと説明されたあとも仕事の調整を後回しにしていると、看取りの時期に休みが取れずに慌てることがあります。今の段階で決めることに集中し、次の段階の準備を一つだけ始めておく。長い道のりを支える側には、そのくらいの歩幅が合っています。
もう一つ、段階ごとに考えておきたいのが、夫自身を守る支えです。主な介護者になる配偶者は、段階が進むたびに役割が増えていきます。そのたびに支えを足していかないと、看取りの時期に入るころには、夫のほうが先に限界を迎えてしまいます。決めることと支えを、いつも一組にして考えてください。
| 段階 | 夫が決めること | 組み込んでおく支え |
|---|---|---|
| 治療を続ける時期 | 診察への同席の仕方、仕事の続け方、医療費の見通し | 付き添いを子どもや親族と分ける。家族が使える相談先を一つ知っておく |
| 治療の目的が変わる時期 | 妻の希望を聞く場、主治医との面談 | 医療ソーシャルワーカーとの面談。介護保険の申請の検討 |
| 緩和ケアを中心に過ごす時期 | 過ごす場所の方向、支える人の分担 | 在宅医・訪問看護・ケアマネジャー。夫が休む日を先に決める |
| 看取りの時期 | 夜の連絡体制、泊まりの交代、仕事の休み方 | 泊まりの交代表、介護休業、夜間の連絡先 |
| お別れの直後 | 知らせる順番、手続きの分担 | 手続きを子どもや専門家と分ける。夫自身が休む時間 |
段階と段階のあいだに、はっきりした境目はありません。緩和ケアも、国立がん研究センターのがん情報サービスが「がんと診断されたときから始まります」と説明しているとおり、治療と並行して受けられます。表は、今がどのあたりかを医療者と話すときの目印にしてください。
「決める」のは、夫ですか、それとも妻本人ですか?
治療や過ごす場所、会いたい人など、ご本人の生き方に関わることは、ご本人が決めるのが基本です。夫が決めるのは、自分の仕事や家計、支える体制など自分自身の動き方で、そのうえで妻が決めたことを医療者と一緒に支えます。
厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成30年3月改訂)は、ご本人による意思決定を基本にしています。夫として何もかも決めなければと思い詰めている方は、ここで荷物を半分下ろしてかまいません。抗がん剤を続けるかどうかは、ご本人と主治医が話し合うことです。夫の役割は、説明の場に同席して一緒に聞くこと、迷っている妻の考えを聞くこと、決めた内容を子どもや親族に伝えることです。
一方で、夫が自分で決めてよいこともたくさんあります。仕事をどう続けるか、夜の泊まりを誰に頼むか、自分が休む日をいつにするか。妻に相談はしても、最後は夫が決めてかまいません。むしろここを妻に決めさせようとすると、「私のせいで夫の仕事が」と、妻に余計な負い目を背負わせてしまうことがあります。
ご本人(妻)が中心になって決めること
- 治療を続けるか、変えるか(主治医と話し合う)
- 過ごしたい場所と、されたくないこと
- 会いたい人と、病気を知らせる範囲
夫が決めてよいこと
- 自分の仕事の続け方と、休み方
- 夜の泊まりや付き添いを、誰に頼むか
- 自分が休む日と、話を聞いてもらう相手
望む医療やケアを前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合って共有しておく取り組みを、厚生労働省は「人生会議」と呼んでいます。書面を作ることが必須なわけではなく、段階が変わるたびに少しずつ話し直せば十分です。
[gk_cta_mid title=”次の診察で聞くことを、3つに絞ってお送りします”]今はどの段階なのか、次に何が起こりやすいのか。主治医に聞きたいことをフォームにひとことお書きください。ご希望の時間帯に担当がお電話で伺い、次の診察で聞く質問を3つにまとめてお送りします。[/gk_cta_mid]治療を続けている時期に、夫が決めておくことは何ですか?
決めておきたいのは、診察にどこまで同席するか、自分の仕事をどう続けるか、医療費と収入の見通しの3つです。支えとしては、付き添いを一人で抱えない分け方と、家族が使える相談先を一つ知っておくことを組み込みます。
同席の仕方は、妻に聞いて決めます。「診察、どこまで一緒に聞いてほしい?」。毎回付き添ってほしい人もいれば、検査の結果を聞く日だけでいいという人もいます。聞きたくない説明があるなら、知らないでいるという選択も尊重します。結果を聞く日は夫、それ以外の通院は子どもや妻のきょうだいに頼む、という分け方をしておくと、この時期から付き添いが夫一人に集まらずにすみます。
仕事は、上司と人事に「妻の治療で、通院の付き添いが増えそうです」と早めに伝えておくと、あとで休みを相談しやすくなります。介護休暇(年5日まで、時間単位でも取れる)や介護休業は、家族が2週間以上にわたって常時介護を必要とする状態にあることが条件で、通院治療の時期に当てはまるかどうかは状態によります。2025年4月からは、介護に直面したと申し出た社員に、会社が制度を個別に知らせ、意向を確かめることが義務になりました。
医療費については、高額療養費制度が2026年8月から見直され、月の上限額の見直しと年間上限の新設が行われました。わが家の上限額がいくらになるかは、加入している健康保険に問い合わせてください。傷病手当金や世帯合算など、夫婦の家計に関わる制度は、[gk_link to=”post:spouse-stage-4-life-planning”]ステージ4と診断された夫婦の暮らしの組み立て方[/gk_link]で詳しく紹介しています。
家族が使える相談先も、この時期に一つ知っておきます。がん相談支援センターは全国のがん診療連携拠点病院などにあり、家族だけでも、その病院に通っていなくても、無料・匿名で相談できます。話した内容は、話した人が同意しない限り、担当医などに伝わりません。まだ困っていない時期に場所を知っておくと、困ったときに迷わず使えます。
「治療の目的が変わる」と言われたら、夫婦で何を話しますか?
まず、ご本人がこれから何を大事にしたいかを聞く場を持ち、主治医との面談で今後の見通しと緩和ケアの受け方を確かめます。支えとしては、医療ソーシャルワーカーとの面談を一度入れ、介護保険の申請も考え始めます。
この段階の始まりは、主治医の言葉で知ることが多いものです。「次の治療は、体への負担のほうが大きくなるかもしれません」「つらさを和らげることを中心に考えていきませんか」。言い方は医師によって違いますが、こうした説明があったら、夫婦で話す時間を一度つくってください。治療の話から少し離れて、「これから、どう過ごしたい?」「これだけは続けたいことってある?」と聞くところから始めます。
国立がん研究センターの遺族調査(2025年7月公表、2021年に亡くなった方のがん遺族1,226名が回答)では、医師と最期の療養場所について話し合ったと答えた割合は53%で、前回調査の36%から増えていました。増えてきたとはいえ、話し合ったと答えなかった家族も少なくありません。主治医に「今後のことを、家族も一緒に相談する時間をいただけますか」と頼めば、面談の場をつくってもらえることがあります。
- 主治医が、今をどの段階と考えているか
- 治療を続ける場合と、やめる場合で、暮らしがどう変わるか
- 痛みや息苦しさを和らげるケアを、どこで受けられるか
- ご本人が大事にしたいこと、されたくないこと
- ご本人が会っておきたい人、行っておきたい場所
- 家で過ごすなら、夫のほかに誰が手を貸せるか
この段階で入れておきたい支えが、医療ソーシャルワーカーとの面談です。病院で、入退院や療養の場の変化、使える行政サービスなどの相談に応じる専門職で、「医療相談室」など窓口の呼び名は病院によって違います。介護保険は、65歳以上なら原因を問わず、40〜64歳でもがんが特定疾病に当たる場合に、要介護認定を受けて使えます。申請は市区町村の窓口で受け付け、通知までは原則30日以内とされているので、使うかどうか迷う段階で相談を始めておくと、次の段階に間に合いやすくなります。
家で看ると決める前に、主な介護者として何を確かめればいいですか?
過ごす場所はご本人の希望を中心に決めますが、夫が主な介護者になるなら、決める前に「夜に交代できる人」「家に来てくれる医療と介護」「夫が休める仕組み」の3つを確かめます。場所は途中で変えてもかまいません。
妻の願いをかなえたい気持ちと、自分にやりきれるのかという不安は、どちらも自然なものです。決め手になるのは気持ちの強さではなく、支えの厚さです。柱になるのは在宅医と訪問看護で、在宅療養支援診療所には、24時間連絡を受ける体制や往診の体制、緊急時の入院体制の確保などが施設基準として求められています。ただ、夜中に誰が電話に出て、どう動いてもらえるかは医療機関ごとに違うため、始める前に具体的に聞いておきます。
「末期の悪性腫瘍」の訪問看護は、要介護認定があっても医療保険の扱いになり、週の日数の制限(原則週3日以内)もかからないため、回数は主治医の指示のもとで相談できます。介護保険のサービスはケアマネジャーが組み立てるので、「夫が日中働いている」「夜は一人で見ている」といった家の事情を、最初の打ち合わせで正直に伝えてください。
Q1ご本人の希望を、言葉で聞けていますか
はいその希望を主治医や看護師に伝え、合う形と支えを一緒に探す
いいえ「今は、家と病院のどっちが落ち着く?」と、答えやすい形で聞いてみる
Q2夜に交代できる人や、昼に手を貸してくれる人はいますか
はい泊まりの分担を決め、家で過ごす形を具体的に考える
いいえ介護保険のサービスや入院できる先を先に確かめ、無理のない形を探す
Q3夫自身の体や仕事が、限界に近づいていますか
はい場所を決める前に、夫が休める仕組みを先につくる
いいえ今の形で始め、見直す日をあらかじめ決めておく
家で過ごすと決めても、病院や緩和ケア病棟を選んでも、状態や夫の体力に合わせて見直してかまいません。過ごす場所ごとの違いや、末期と言われた直後に整理することは、[gk_link to=”post:spouse-terminal-cancer-first-steps”]末期と言われた直後に整理する3つのこと[/gk_link]で比べています。
看取りの時期に入ったら、夫は何を決めますか?
決めるのは、夜に誰へ電話するか、泊まりを誰と交代するか、仕事をどう休むか、会わせたい人にいつ知らせるか、の4つです。この時期の支えの中心は、泊まりの交代表と、仕事の休みを確保することです。
この時期に体に起きる変化は人によって違うため、看護師に「家族向けに、これからの変化を説明した冊子はありますか」と尋ねてみてください。緩和ケアの地域プロジェクト(OPTIM)の『これからの過ごし方について』は、医師や看護師が説明に使うことを想定した看取りの時期の冊子で、このパンフレットを使った説明を受けた遺族の調査(2012年発表、10施設の遺族260名が回答)では、81%が「とても役に立った」「役に立った」と答えています。研究者は、十分に話し合いながら使うことを条件にしています。
泊まりの交代は、この時期に一枚の表にしておきます。子どもやきょうだいに「金曜の夜を頼みたい」と曜日を決めて頼むと、引き受けるほうも予定を立てやすくなります。夜の連絡体制は、在宅なら訪問看護と在宅医、入院中なら病棟から家族への連絡の受け方を確かめておきます。在宅で看ている場合の連絡の目安と伝え方は、[gk_link to=”post:spouse-final-signs-at-home”]在宅で看る配偶者のための最期のサイン[/gk_link]にまとめています。
仕事は、介護休業が対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分けて取れ、条件を満たせば雇用保険の介護休業給付金の対象にもなります。忌引き休暇は法律で決まった休みではなく、会社が任意に設ける特別休暇なので、日数や対象は就業規則で確かめておきます。
会わせたい人は、ご本人の意向を聞けるうちに名前を挙げてもらっておくと、迷いが減ります。妻のきょうだいや古い友人など、夫が連絡先を知らない相手は、スマホの連絡帳のどこにいるかを妻と一緒に確かめておきます。
お別れの直後には、何を決める必要がありますか?
直後に決めるのは、誰にどの順番で知らせるかと、葬儀を頼む先が中心です。届け出や相続には法律で決まった期限がありますが、どれも一人で、その日のうちに済ませる必要はありません。手続きは分けて持ちます。
お別れの直後は、頭が真っ白になって当然です。その中で夫が決めることを少なくするために、看取りの時期のうちに「最初に電話する人」と「葬儀の相談先」の二つだけ、メモに書いておくと助けになります。ほかのことは、子どもや親族、専門の事業者と分けて進められます。
法律で期限が決まっているものもあり、急ぐ順に並べると下の図のようになります。相続放棄や限定承認は、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てるもので、申し立てにより期間を伸ばせる場合があります。国民健康保険や後期高齢者医療制度の「葬祭費」、会社員などの健康保険の「埋葬料」なども、申請が必要で申請期限があるため、加入先に確かめてください。
- 1すぐに最初に知らせる人への連絡と、葬儀を頼む先への相談
- 2死亡後24時間を過ぎてから火葬(法律で、24時間を経過した後と定められている)
- 3知った日から7日以内死亡届の提出(国外で亡くなった場合は3か月以内)
- 4知った時から3か月以内相続放棄・限定承認の申し立て(伸ばせる場合がある)
- 5落ち着いてから葬祭費・埋葬料の申請(期限あり)、名義の変更など
がんと家族の相談室では、「看取り前後にやることチェックリスト」をお送りしています。葬儀や相続、お墓などの専門のサービスにおつなぎすることもできますが、それはご希望とご同意がある分だけです。専門サービスを紹介した場合は提携事業者から紹介手数料を受け取ることがあり(運営者情報で開示しています)、医療機関や士業からは紹介料を受け取りません。断っても費用はかかりません。
夫が倒れないために、どの段階でも続けたい支えは何ですか?
どの段階でも、「自分が休む時間」と「話を聞いてもらう相手」を一つずつ持ち続けることです。段階が進むほど主な介護者の役割は増えるため、支えも段階ごとに足していきます。
がん情報サービスによると、家族は本人を気づかって自分の気持ちを後回しにしやすく、そのうえ自分の暮らしも回さなければならないため、「第二の患者」ともいわれます。看る側の負担は、調査の数字にも表れています。2022年に国立がん研究センターが公表した遺族調査では、2017・2018年にがんで亡くなった方の遺族54,167名の回答のうち、38.9%が介護の負担感が大きかったと答えました。
休む時間は、予定表に先に書き込んでおきます。週に一晩は子どもに泊まってもらう、訪問看護の時間に近所を歩く、病院の面会を一日おきにして、行かない日は家で眠る。決めておかないと、休む時間はいつまでも来ません。話を聞いてもらう相手は、妻とは別の場所に持ちます。妻の前で平静を保っている分、どこかで荷を下ろす場所がないと、心も体も先に限界が来てしまいます。
主な介護者になる夫(配偶者)
- がん相談支援センター家族だけでも無料・匿名。その病院に通っていなくても使える
- 医療ソーシャルワーカー入退院や療養の場の変化、使える行政サービスの相談
- 介護保険の窓口・地域包括支援センター要介護認定の申請や、介護サービスの使い方
- 職場の人事介護休暇・介護休業など、休み方の制度の確認
- 訪問看護・在宅医家で過ごす時期の体のケアと、夜の連絡先
- がんと家族の相談室先生の言葉の整理、今夜の判断の整理、ただ聞く20分
先が見えなかった夫は、段階ごとの「決めること」と支えをどう組んだ?
説明のための例(実在の方の体験談ではありません)
1. 相談のあとに変わったこと
相談から10日ほどで、夫の手帳に一枚の表がはさまるようになりました。五つの段階のうち、今は「治療を続ける時期」と「治療の目的が変わる時期」の間あたり。そこに書いた決めることは、「結果を聞く日の診察に同席する」「上司と人事に事情を話す」「医療費の上限を確かめる」の3つだけです。最期を過ごす場所や葬儀のことは、「後でいい」の欄に書いて閉じました。2週間に一度の通院は、結果を聞く日を夫、それ以外を妻の妹が付き添う分担にし、夫は時間単位の休みで午後から合流できるようになりました。夜中の2時ごろまで続けていた検索は、週に1、2回に減ったといいます。「全部を今決めなくていいと分かって、やっと妻の顔を見て話せるようになった」と話しています。
2. 相談を考えた背景
妻は、2年前から治療を続けてきました。ある日の診察で主治医が「病気が少し進んでいます。次の治療を考えましょう」と話し、帰りの車の中で妻は「あなたは仕事、休まなくていいからね」と言いました。夫はうなずきましたが、頭の中では「いつか休むことになるのか」「家で看ることになるのか」という問いが回り続けていました。
3. 相談する前に困っていたこと
夜中に「妻 がん 進行 これから」と検索すると、最期までの流れを説明した記事がいくつも見つかりました。段階があることは分かっても、夫である自分がいつ何を決めればいいのかは見つかりません。介護休暇が自分に使えるのかも分からないまま、ひと月が過ぎていました。
4. ここを選んだ理由・決め手
妻が通う病院のがん相談支援センターも考えましたが、平日の昼間は会議が続き、電話をかける時間が取れませんでした。フォームなら、ニックネームのまま、外回りの合間の15時台を指定できると知り、「妻の病気が進んでいて、何をいつ決めればいいか分かりません」とだけ書いて送りました。送ってすぐに受付確認のメールが届き、「とりあえず一つ、手を打てた」と感じたそうです。
5. 相談で話したこと・その後
電話では、担当がまず話を聞き、夫の心配を一つずつ書き出したうえで、段階の表に沿って「今決めること」「妻と話すこと」「後でいいこと」に分け、付き添いを頼めそうな人も一緒に挙げました。担当は病状の見立てや今後の予測はしていません。「今は、どの段階と考えればよいですか」を含む3つの質問を次の診察用のメモにまとめて送り、夫は次の診察でそれを主治医に渡しました。主治医は、今の治療の目的と、つらさを和らげるケアの受け方を説明してくれたそうです。県外の娘には、診察のたびにLINEで様子を伝えることにしました。「自分が決めることと、妻が決めることを分けたら、肩の荷が半分になった」と振り返っています。
※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。
医療者に聞く質問例
- 今の状態は、治療を続ける時期、治療の目的が変わる時期のどのあたりと考えればよいですか。
- この先、どんな変化が出てきたら、次の段階を考える目安になりますか。
- 痛みやつらさを和らげる緩和ケアには、今から相談できますか。
- 家で過ごすことになった場合、家族の負担を減らすために、今のうちに準備しておくことはありますか。
- 家族向けに、これからの変化を説明した冊子はありますか。
とはいえ、段階を追いかける夫に伝えたい2つのこと
① 気持ちのこと──見通しが立っても、怖い夜はなくならない
表をつくって段取りが見えても、夜にふと怖くなる瞬間は来ます。それは準備が足りないからではありません。見通しは、怖さを消すための道具ではなく、怖さを抱えたままでも次の一歩を選べるようにするためのものです。妻の前で落ち着いた顔を保ち続けるのに疲れたら、その疲れを、妻のいない場所で言葉にしてください。夫が弱音を吐ける場所を持つことは、妻を支える力を守ることでもあります。
② 実務のこと──決めたことは、日付と一緒に家族で見える場所へ
段階が変わるたびに、決めたこととその日付を、一枚の紙か家族で共有できるメモに残しておきます。県外の子どもや親族も同じ情報を見られれば、「聞いていない」「知らなかった」というすれ違いが減ります。「誰が」「何を」「いつまでに」を書いておけば、夫が寝込んだ日にも、ほかの誰かが代わりに動けます。記録する役を夫一人で抱えず、子どもと分けて持つのも一つの方法です。
今日できること
[gk_howto name=”今日できること” description=”今の段階を確かめ、次の一手を選ぶために、今夜から明日にできる3つのこと” heading=”none”][gk_step title=”今の段階に仮の印をつける”]この記事の段階の表を見て、今いちばん近いと思う段階に印をつけます。二つにまたがると感じたら、両方に印をつけてかまいません。[/gk_step][gk_step title=”気がかりを「今」と「後」に分ける”]頭に浮かぶ心配を紙に全部書き出し、今の段階で決めることには丸を、後でいいことには矢印をつけます。[/gk_step][gk_step title=”頼める人の名前を一人書く”]付き添いや泊まりを頼めそうな人の名前を、一人だけ紙に書いておきます。頼むのは明日以降でかまいません。[/gk_step][/gk_howto]よくある質問
[gk_faq][gk_q q=”段階は、必ず順番どおりに進むのですか?”]順番どおりに進むとは限りません。治療を変えて体調が持ち直したり、緩和ケアを受けながら治療を続けたりと、行きつ戻りつすることもあります。段階ごとの長さにも大きな個人差があります。今がどのあたりかは、診察のたびに主治医に確かめるのがいちばん確かです。[/gk_q][gk_q q=”妻が「何も決めたくない」と言います。夫が代わりに決めてもいいですか?”]決めたくないという気持ちも、ご本人の大事な意思です。急がないことはそのまま待ち、期限のあることだけ「これだけは一緒に決めたい」と伝えてみてください。国の指針もご本人による意思決定を基本にしていて、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合うことを勧めています。夫婦だけで行き詰まったら、主治医や看護師に話し合いの場に入ってもらう方法もあります。[/gk_q][gk_q q=”看病のために、仕事を辞めたほうがいいでしょうか?”]辞めると決める前に、勤め先の制度を確かめてください。介護休業は対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分けて取れ、介護休暇は年5日まで(対象家族が2人以上なら10日まで)時間単位でも使えます。どちらも家族が常時介護を必要とする状態にあることが条件です。人事に「妻の看病で使える制度を知りたい」と伝えるところから始めてみてください。[/gk_q][gk_q q=”籍を入れていないパートナーでも、同じように関われますか?”]一緒に暮らし、支えてきた事実は変わりません。ただ、病状説明への同席や手続きでの扱いは、病院や制度によって違うことがあります。ご本人の了解を得たうえで、主治医や医療ソーシャルワーカーに「パートナーとして説明を一緒に聞きたい」と早めに伝え、どこまで関われるかを確かめておくと安心です。[/gk_q][gk_q q=”夜中に妻の具合が急に悪くなったら、どこへ電話すればいいですか?”]在宅医療を受けている場合は、前もって決めておいた訪問看護や在宅医の夜間の連絡先へ、通院中なら病院の夜間の窓口へ電話します。命に関わると感じたら、迷わず119番に電話してください。救急車を呼ぶか迷うときは、地域によっては#7119で相談できますが、実施していない地域もあります。がんと家族の相談室の電話は、平日9時〜18時以外の時間は自動音声で受け付けて翌朝9時までに折り返す仕組みのため、夜中の急な変化の相談には向いていません。[/gk_q][/gk_faq]次に読むなら
- [gk_link to=”post:what-happens”]治療が終わってから最期まで、どんな流れがある?[/gk_link]
- [gk_link to=”post:spouse-terminal-cancer-first-steps”]夫(妻)が末期と言われたら、最初に何を整理する?[/gk_link]
- [gk_link to=”post:spouse-caregiver-burnout-at-home”]同居で看る配偶者が眠れないほどつらいとき、自分をどう守る?[/gk_link]
- [gk_link to=”post:spouse-final-days-what-to-expect”]夫・妻の最期に、そばで何ができる?[/gk_link]
- [gk_link to=”post:supporting-husband-or-wife-with-cancer”]がんの夫・妻に、配偶者だからできることは?[/gk_link]
- [gk_link to=”page:night-number”]もしもの夜に電話する先を、先に決めておくには?[/gk_link]