仕事を終えてリビングに行くと、小学生の娘がテーブルでお絵かきをしている。使っているのは、さっきまで仕事の机の端に置いていたメモ用紙の束。裏返した1枚に、昼の相談で走り書きした「胸の痛み、30分前から」の文字が透けて見える。あわてて取り上げた手に、じわりと汗がにじむ。家で相談の仕事をしていると、こんなひやりとする場面が起こりえます。
病院では、守秘はある程度「仕組み」に守られていました。患者さんの話はナースステーションの奥で、カルテは決まった棚に、使い終わった紙はシュレッダーへ。家には、その仕組みがありません。食卓が仕事机になり、仕事のパソコンの横には家族の郵便物が積まれています。
それでも、家族と暮らす家で相談の仕事をすることはできます。必要なのは広い家や高い機器ではなく、決まりを知ることと、情報が外へ出ていく「出口」を一つずつふさぐ習慣です。
ここでは、看護師の守秘義務の決まりを確かめたうえで、家で情報が漏れやすい4つの出口、家族に聞かれない工夫、パソコンとスマートフォン、紙のメモの扱い、漏れたかもしれないときの報告までを順に整理します。
在宅で働く看護師にも、守秘義務はある?
あります。看護師の守秘義務は法律で定められていて、働く場所が病院から自宅に変わっても、義務はそのままです。
保健師助産師看護師法の第42条の2は、「保健師、看護師又は准看護師は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。保健師、看護師又は准看護師でなくなつた後においても、同様とする。」と定めています[1]。条文には、働く場所の限定は書かれていません。資格を失った後も同じ義務が続く、という点も覚えておきたいところです。
違反して業務上知り得た人の秘密を漏らすと、6か月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金に処せられます[1]。この罪は、告訴がなければ公訴を提起する(起訴する)ことができない、とされています[1]。ただ、告訴されなければ問題ない、ということではありません。相談してくれた人の信頼を裏切ることになり、働く会社との関係にも大きく響きます。
在宅の仕事では、法律の守秘義務に加えて、個人情報についての法律と、会社の決まりも関わります。3つを並べると、それぞれの役割が見えてきます。
| 決まり | 主に守る人 | 中身の例 | 家で意識すること |
|---|---|---|---|
| 守秘義務(保健師助産師看護師法) | 看護師・保健師・准看護師 | 仕事で知った秘密を漏らさない | 家族にも話さない |
| 個人情報保護法 | 会社(個人情報取扱事業者) | 病歴などは原則として本人の同意を得て取得 | 会社の扱い方に合わせる |
| 会社の決まり・契約 | 働く人 | 機器・紙・働く場所のルール | 家の環境を決まりに合わせる |
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)「保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第42条の2・第44条の4」、e-Gov法令検索(デジタル庁)「個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第2条第3項・第20条第2項」[1][2]
雇われて働く場合も、業務委託で働く場合も、会社との契約書や誓約書で、秘密を守る約束をすることがあります。法律の義務と、会社との約束。この2つが重なっていると考えておくと、迷ったときの判断がぶれません。
「秘密」と「個人情報」は、どう違う?
守秘義務でいう「秘密」と、個人情報は、重なる部分が大きいものの、同じ言葉ではありません。秘密は、相談した人が他人に知られたくないと考える事柄です。病気のこと、家族の事情、お金の悩みなどがあたります。個人情報は、名前や生年月日、電話番号のように、その人がだれかを特定できる情報です。
健康の相談では、この2つがいつも一緒に届きます。個人情報保護法は、本人の病歴などが含まれ、不当な差別や偏見などの不利益が生じないよう取扱いに特に配慮が要る個人情報を、「要配慮個人情報」と定めています[2]。個人情報取扱事業者である会社は、法令に基づく場合などの例外を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで要配慮個人情報を取得してはならない、とされています[2]。
在宅の電話相談で看護師が聞き取る症状や持病は、まさにこうした情報です。会社が在宅で働く人にも細かい決まりを求めるのは、扱っている情報がそれだけ重いからです。
- 守秘義務
- 仕事で知った人の秘密を、正当な理由なく漏らしてはならない義務です。
- 個人情報
- 名前や生年月日、電話番号など、その人がだれかを特定できる情報です。
- 要配慮個人情報
- 病歴などが含まれ、取扱いに特に配慮が要るとされる個人情報です。
- 個人情報取扱事業者
- 個人情報のデータベースなどを事業に使う会社など。法律の義務を負う側です。
- 告訴
- 犯罪の被害を受けた人などが、捜査機関に事実を申告し、処罰を求めることです。
- 施錠保管
- 鍵のかかる引き出しや箱に入れて、しまっておくことです。
家で情報が漏れやすいのは、どこ?
家で働くときに情報が外へ出ていく出口は、大きく分けて4つあります。声、画面、紙、端末とデータです。病院では仕組みが守ってくれていた出口を、家では自分で一つずつ確かめることになります。
| 出口 | 漏れる場面の例 | 守り方の基本 |
|---|---|---|
| 声 | 復唱した名前や症状が隣の部屋に届く | 扉のある部屋と、家族のいない時間 |
| 画面 | 席を立った間に、家族の目に入る | 離れるたびに画面をロック |
| 紙 | メモが食卓や冷蔵庫の扉に残る | 書く量を減らし、鍵のかかる場所へ |
| 端末・データ | 私物のスマートフォンに写真や履歴が残る | 会社が認めた機器と方法だけを使う |
編集部まとめ
声は、いちばん気づきにくい出口です。ヘッドセットを使えば相手の声は外に漏れませんが、自分の話す声は部屋の外に届きます。「〇〇様、65歳の男性で、昨日の夜から胸が苦しい、ということですね」。病棟で身についた丁寧な復唱が、家では隣の部屋への放送になってしまいます。
画面と紙は、家族の善意から漏れることもあります。冒頭の場面のように、子どもがメモの裏に絵を描こうとする。片づけ好きの家族が、机の上の紙を郵便物と一緒にまとめてしまう。悪気がないからこそ、気持ちではなく仕組みで防ぐ必要があります。
端末とデータは、目に見えないぶん油断しやすい出口です。スマートフォンで撮ったメモの写真が、家族と共有している写真のアルバムに自動で保存される。そんなことも起こりえます。
求人に書かれた環境の条件から考える
在宅の仕事では、働く環境の条件を求人に書いている会社があります。特定保健指導のオンライン面談の求人の一例では、重要書類を施錠して保管できる場所があること、第三者がいない個室で、生活感のない白い背景・雑音のない環境で面談することが条件とされていました[3]。PCは会社から貸与され、自宅のネット環境は自分で整える(ポケットWi-Fiは不可)ことも示されていました[3]。
これは1社の求人の条件ですが、一つひとつは4つの出口と結びついています。個室は声と画面を、施錠保管は紙を、会社が貸すPCは端末とデータを守るための条件と読めます。
夜間オンコールの仕事でも、事情は同じです。介護施設から夜間にかかってくる緊急の電話を看護師が自宅で受け、緊急性を判断して指示を出し、電話と並行してPCでレポートを作って送る仕事の例があります[4]。家族が寝静まった家で、入居者の状態を声に出して確かめ、画面に打ち込む。夜だからこそ、声の大きさと画面の向きに気を配ります。
自分の家で条件を満たせるかは、次の順番で考えると整理しやすくなります。
仕事の時間に、扉を閉めて一人になれる部屋がありますか?
声と画面の出口は守りやすい状態です。次に、紙と端末の置き場所を考えましょう。
家族が出かけている時間だけ働くか、声を出さないチャットの仕事などを検討します。
仕事の書類やメモを、鍵のかかる場所にしまえますか?
紙の出口も守れます。会社の決まりと照らし合わせて応募を考えましょう。
鍵のかかる引き出しや箱を用意できるか、紙を使わずに働けるかを会社に確かめます。
求人票の言葉を一つずつ確かめたいときは、本文を貼り付けると確かめる点が表示される求人票チェッカーも使えます。
家族に聞かれないために、何を工夫する?
家族に聞かれないための工夫は、場所・時間・話し方の3つで考えます。どれか1つで完璧を目指すより、3つを少しずつ重ねるほうが現実的です。
場所と時間を決める
働く場所は、扉を閉められる部屋が基本です。部屋を決めたら、仕事をする時間帯に、その部屋の中でふだんの声で話してみてください。家族には廊下や隣の部屋にいてもらい、どのくらい聞き取れたかを教えてもらいます。自分の声がどこまで届くかは、自分ではわかりにくいものです。
家族も在宅勤務をしている家では、時間の重なりに注意が要ります。夫婦それぞれがオンライン会議や電話をする家では、どちらも「聞かれてはいけない話」をしているからです。お互いの予定を並べて、話す部屋を分けておくと安心です。
この例では、電話相談の時間と夫の在宅勤務の時間が丸ごと重なっています。子どもの帰宅前に仕事を終えられても、夫の在宅勤務の日は部屋を分けないと声が届いてしまう、ということが図から読み取れます。
話し方で、漏れる量を減らす
話し方を変えるだけでも、外に出る情報は減らせます。名前や生年月日は、確認のために必要な場面以外は口に出さない。住所や電話番号は読み上げず、画面で確かめる。復唱は「先ほどのお名前で」「その症状ですね」のように、具体的な言葉を繰り返さずに済む言い方に変える。ただし、会社の手順で決まっている確認の言葉は省かず、それ以外の場面で声に出す量を減らします。
声の大きさも見直しましょう。病棟のざわめきの中で身についた声は、静かな家では思った以上に響きます。ヘッドセットのマイクを口元に寄せれば、小さめの声でも相手に届きます。機器の選び方は在宅ワークのネット回線とヘッドセットにまとめています。
家族と約束しておくこと
家族とは、聞こえてしまったときの約束もしておきます。「仕事の電話の内容が聞こえても、話題にしない。外でも話さない」。家族は気づかうつもりで、聞こえた話を話題にすることがあるからです。あわせて、仕事中は部屋に入らない、急ぎの用事はメッセージで伝える、といった合図も決めておくと、通話中に扉が開くことを防げます。
子どもの声や生活音が通話に入ってしまう問題は、子どもがいる家で電話の仕事はできる?で取り上げています。働く時間や家事の分担を含めた家族との話し合い方は、在宅で働くことを家族にわかってもらうが参考になります。
パソコンとスマートフォンは、どう扱う?
パソコンとスマートフォンの扱いは、会社の決まりがいちばん先です。会社からPCを貸与される求人の例もあれば[3]、スマートフォンとWi-Fiなどのネット環境が必要とされる夜間オンコールの求人の例もあります[4]。どの機器で、どこまでの情報を扱ってよいかは、会社によって違います。働き始める前に、貸与の機器と私物の機器のそれぞれで、してよいこと・してはいけないことを確かめておきましょう。
そのうえで、家ならではの落とし穴を知っておくと安心です。家族と共用のパソコン、子どもが遊ぶタブレット、家族で共有している写真のアルバム。家の機器は、病院の端末と違って、いろいろな人の手と目に触れています。
| 機器 | 起こりやすいこと | 守り方の例 |
|---|---|---|
| 会社から貸与のPC | 家族が触る、私用に使う | 仕事以外に使わず、離席時はロック |
| 私物のPC(認められた場合) | 家族と同じアカウントで使う | 仕事用のアカウントを分け、決まりに従う |
| スマートフォン | 写真の自動保存、通知の表示 | 仕事のものを撮らず、通知の中身を隠す |
| 家のWi-Fi・プリンター | 弱いパスワード、印刷物の置き忘れ | パスワードを見直し、印刷は最小限に |
編集部まとめ
スマートフォンは、とくに注意が要ります。メモをとる代わりに画面や紙を撮影すると、写真が自動でインターネット上の保存先に送られることがあります。家族と共有しているアルバムに入ってしまえば、取り消すのは簡単ではありません。仕事の情報は撮らない、と決めておくのがいちばん確実です。
通知の表示も見落としがちです。仕事の連絡が届いたとき、画面に中身の一部が表示される設定だと、机の上のスマートフォンを家族が目にするかもしれません。通知は「内容を表示しない」設定にしておくと安心です。
家族や友人と使っているメッセージのアプリを、仕事のやりとりに使わないことも基本です。会社が決めた連絡の方法以外で、相談者の情報を送ったり受け取ったりしないようにしましょう。貸与のPCの決まりや返却のルールは、パソコンを支給・貸与してくれる在宅ワークでくわしく紹介しています。
紙のメモと書類は、どう扱う?
紙のメモは、書く量を減らし、置き場所を決め、処分の方法を会社の決まりに合わせるのが基本です。病院ならシュレッダーや回収の箱がありましたが、家ではその役目を自分の手で果たすことになります。
まず、書く量を減らします。名前や電話番号は紙に書かず、会社のシステムに入力する。メモには、話の流れを追うためのキーワードだけを残す。会社によっては、メモに書いてよいことを決めている場合もあるので、研修のうちに確かめておきましょう。
次に、置き場所です。メモは仕事の机の上だけで使い、席を立つときは伏せるか、引き出しにしまいます。仕事の紙を入れる鍵つきの引き出しや箱を決めておけば、片づけのたびに迷いません。
最後に処分です。家庭ごみにそのまま捨てるのは避けます。細かく裁断するのか、まとめて会社に返すのか、処分の方法は会社の決まりに従ってください。メモの裏を、買い物のメモや子どもの落書きに使い回すのもやめておきましょう。
- 始業前机の上を空にする
家族の書類や郵便物を片づけ、白い紙だけを用意します。
- 通話中キーワードだけ書く
名前や電話番号は書かず、システムに入力します。
- 通話のあとシステムに移す
メモの中身を記録に移し、移したものに印をつけます。
- 終業時しまうか、処分する
決まりに従い、鍵つきの引き出しにしまうか、裁断します。
- 週の終わり残っていないか確かめる
机の周り、かばん、上着のポケットに紙が残っていないか見直します。
漏れたかもしれないときは、どうする?
漏れたかもしれない、と気づいたときは、自分で片づけようとせず、すぐに会社に報告するのが基本です。小さなことに思えても、どう対応するかを決めるのは会社です。報告が早いほど、会社がとれる手立ても多くなります。
家族に相談の中身を聞かれたかもしれない。メモを1枚なくした。貸与のPCを子どもが触っていた。仕事の連絡を、送る相手を間違えて送ってしまった。どれも「たぶん大丈夫」と自分で決めてしまいたくなる場面です。
- 1手を止める
作業を続けず、その場の状態をそのままにします。消したり捨てたりはしません。
- 2起きたことを書き留める
いつ、何が、どこで起きたかを、相談者の情報を書かずにメモします。
- 3すぐに会社へ報告する
決められた連絡先と方法で、上司や担当の窓口に伝えます。
- 4指示に従う
相談者への連絡などは自分の判断でせず、会社の指示を待ちます。
ありがちなのが、自分から相談者に連絡して謝ろうとすることです。気持ちはよくわかりますが、個人のスマートフォンから連絡すれば、新しい出口を増やすことになりかねません。報告の連絡先と方法は、働き始める前に確かめて、机の見えるところに貼っておきましょう。
モデルケース:家族のいる家で、話す場所とメモの捨て方を決めたMさん
モデルケース(架空の例)
ダイニングで受けていた相談の電話を寝室へ。メモの処分の流れも決め、家族のいる部屋で仕事の電話を受けることがなくなった
- 4回0回家族のいる部屋で仕事の電話を受けた回数(1週間)
- 5日0日終業後、メモが机の外に残っていた日(1か月)
- 決めていなかった毎日10分終業後の片づけと確かめの時間
このモデルケースは、在宅ワークを考える看護師が抱えやすい状況を想定して、編集部が作成した架空の例です。実在の人物・団体とは関係ありません。数字は説明のための例で、同じ結果になることを約束するものではありません。
成果
Mさんは、在宅の電話健康相談を始めて2か月目に、働く場所をダイニングから寝室の机に移しました。紙のメモは書く量を減らし、終業後の10分で片づけと処分を済ませる流れを決めています。いまは、家族のいる部屋で仕事の電話を受けることはありません。
Mさん:決めごとが増えたのに、気持ちはむしろ軽くなりました。家族の前で、仕事のことを気にしなくてよくなったからだと思います。
背景
Mさんは総合病院の外来で10年働いてきました。小学生の子どもが2人いて、夫は週2日、自宅で仕事をしています。子どもが学校から帰る時間には家にいたいと考え、平日の日中に働ける在宅の電話健康相談を選びました。
困っていたこと
働き始めのころ、仕事の場所はダイニングテーブルでした。夫の在宅勤務の日は、扉のない隣のリビングで夫が仕事をしています。ある晩、夫から昼の相談のことを気づかうように聞かれ、自分の声がほとんど届いていたことに気づきました。食卓の端に置いたメモが、翌朝まで残っていた日もありました。
Mさん:夫は心配してくれただけでした。でも、相談してくれた方に申し訳なくて、その夜はなかなか眠れませんでした。
選んだ理由
Mさんは、研修で受け取った決まりを読み直し、上司にも相談しました。そのうえで、扉を閉められる寝室の一角に机を置くことにしました。メモは会社の決まりに沿って、名前や電話番号は書かずにシステムへ入力し、紙にはキーワードだけを書くことにしました。
始め方と工夫
寝室には、鍵のかかる小さな引き出しを置きました。終業時の10分で、メモの中身がシステムに入っているかを確かめ、会社が認めた方法で細かく裁断しています。夫とは、在宅勤務の日はお互いに別の部屋で仕事をし、仕事の話は家でしないと約束しました。夫も「それなら、こっちの会議も同じだね」と、リビングの扉を閉めて仕事をするようになりました。
Mさんが変えたのは、話す部屋と紙の扱いという、2つの小さな決めごとでした。家族を疑うのではなく、家族が聞かずに済む、見ずに済む仕組みにしたことで、お互いが気をつかう場面も減っています。
気をつけたいこと:家の工夫だけでは守れないこと
家の環境を整えても、それだけで守秘が完成するわけではありません。家で働くことには、守秘の面でのよいところと、気をつけたいところの両方があります。
よいところ
- 仕事の紙や機器を、外に持ち歩く場面がほとんどない
- 働く部屋や机の置き方を、自分で決められる
- 休憩室のような、人の多い場所で仕事の話が出にくい
気をつけたいところ
- 家族が近くにいて、声や画面が届きやすい
- 仕事の機器と家の機器が混ざりやすい
- その場で相談できる同僚がそばにいない
1つ目に気をつけたいのは、会社ごとに決まりが違うことです。この記事の工夫は一般的な例で、会社の決まりと違う場合は、会社の決まりが優先です。自分で用意したシュレッダーで処分してよいのか、会社に返すのか。私物のスマートフォンを使ってよいのか。迷ったら、自分で判断せずに聞きましょう。
2つ目は、働く場所を自宅の外に広げることです。カフェやシェアオフィスは人の出入りがあり、声も画面も守りにくい場所です。第三者がいない個室を条件にする求人の例もあります[3]。働く場所を変えたいときは、先に会社の許可を確かめてください。
3つ目は、仕事を終えたあとの発信です。相談者の名前を出していなくても、日時や地域、症状の組み合わせから、だれのことかわかってしまう場合があります。SNSやブログで仕事の経験を書くときの注意は、看護師がSNS・ブログで発信するときの注意で取り上げています。
そして、家の環境がどうしても仕事の条件に合わないときは、無理をしないことも大切です。声を出さない仕事や、出社して働く仕事を選ぶのも、相談者と自分を守るための選択です。在宅でできる仕事の種類と向き不向きは、看護師が在宅でできる仕事で比べられます。
今日からできること
守秘の工夫は、毎日の小さな習慣の積み重ねです。始業前と終業後の5分で、次の項目を確かめることから始めてみましょう。
チェックした数:
パソコン、回線、部屋など、在宅で働く環境がそろっているかは、在宅ワークに必要なパソコンとネット環境のセルフチェックで一通り確かめられます。
よくある質問
家族に、仕事でどんな相談があったか話してもいいですか?
相談者の名前を出さなくても、相談の中身を話すのは避けましょう。看護師には、仕事で知った人の秘密を正当な理由なく漏らしてはならない義務があります[1]。家族には「今日は忙しかった」のように、自分の気持ちだけを伝えるのが安心です。
業務委託で働く場合も、守秘義務はありますか?
保健師助産師看護師法の守秘義務の条文は、雇われているか業務委託かで分けていません[1]。また、業務委託でも、会社との契約で秘密を守る約束をすることがあります。契約書の秘密保持の項目は、必ず読んでおきましょう。
自分のスマートフォンを仕事に使ってもいいですか?
会社の決まり次第です。スマートフォンとWi-Fiなどのネット環境が必要とされる求人の例もありますが[4]、使ってよいアプリや、写真・記録の扱いは会社ごとに違います。使ってよいと言われた場合も、仕事の情報を撮影しない、通知の中身を表示しない、などの工夫をしておきましょう。
紙のメモは、家庭ごみに捨ててもいいですか?
そのまま捨てるのは避けてください。細かく裁断するのか、会社に返すのかなど、処分の方法は会社の決まりに従います。決まりがわからないときは、捨てる前に上司に確かめましょう。
仕事を辞めたあとも、守秘義務はありますか?
あります。法律の守秘義務は、看護師でなくなった後も同じとされています[1]。仕事を辞めても看護師の資格は残るので、辞めた会社の仕事で知った相談者の秘密も、守り続ける必要があります。
守秘義務に違反すると、どうなりますか?
業務上知り得た人の秘密を漏らした場合、6か月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金とされ、この罪は告訴がなければ起訴できません[1]。ただ、罰則の有無にかかわらず、相談者の信頼と、働く会社との関係を大きく損ないます。
カフェやシェアオフィスで働いてもいいですか?
会社が働く場所を決めている場合は、その決まりに従います。第三者がいない個室を条件にする求人の例もあり[3]、人の出入りがある場所は、声と画面を守りにくいので向きません。働く場所を変えたいときは、先に会社に確かめましょう。
まとめ
在宅で働く看護師にも、病院で働くときと同じ守秘義務があり、資格を失った後も続きます。家では、声・画面・紙・端末の4つの出口から情報が漏れやすいので、出口ごとに守り方を決めておくことが大切です。
- 話す場所と時間を決め、家族と「聞こえても話題にしない」約束をする
- 機器は会社の決まりを先に確かめ、仕事の情報を撮影・共有しない
- 紙は書く量を減らし、鍵のかかる場所にしまい、決まりどおりに処分する
- 漏れたかもしれないときは、自分で片づけずにすぐ報告する
家の環境で在宅の仕事ができるか迷ったら、LINEやフォームから気軽に相談してください。