大切な人がいなくなる日を想像して息が浅くなるのは、相手がまだ生きている今から始まる、ごく自然な悲しみです。怖さがあるからといって、心が壊れかけているわけでも、あなたが弱いわけでもありません。朝はいつもの顔で出勤し、会議で発言し、帰りの車の中でだけ崩れる。そうやって毎日をつないでいる家族は、あなたひとりではありません。
怖さには波があります。検査の結果を待つ週や面会から帰る道では大きくなり、仕事に没頭している間は少し引いていく。波の高さも、どのくらい続くかも、人によって、相手との関係によって違います。だからここで目指すのは、怖さをなくすことではありません。一日の中に怖さの持ち場を決めて、それ以外の時間を今日のために取り戻すことです。
この記事では、まだ生きている人を思って悲しむ罪悪感のほどき方と、働きながら怖さと付き合う3つの方法(書く・時間を区切る・話す)を、仕事のある一日の流れに沿ってまとめました。怖さが自分の手に余ってきたときの相談先も、後半で整理しています。
普通の顔の下に、怖さを隠している方へ
- 母のいない世界を想像したとたん、息ができなくなって、その場から動けなくなる。
- まだ生きているのに、もう失ったように悲しんでいる自分が後ろめたい。
- この怖さを誰にも言えないまま、毎朝いつもの顔で会社に向かっている。
がんの親(子ども・配偶者)が亡くなるのが怖くてたまりません。この怖さとどう付き合えばいいですか?
怖さを追い出そうとするより、一日の中に怖さの持ち場を決めてください。書き留める場所、向き合う時間、話す相手の3つが決まると、怖さはそこへ戻っていき、残りの時間を仕事や大切な人との今日に使いやすくなります。
失うかもしれない人を前にすると、心は実際の別れより先に悲しみ始めることがあります。この心の動きには「予期悲嘆」という呼び名があります。日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団が2025年4月に発行した『Foundation News』Vol.48の説明を借りれば、「喪失が現実となる以前に起こる悲嘆」です。夜中に襲ってくる怖さも、通勤電車でふいに込み上げる涙も、その悲しみの一部と考えると、自分の反応を少し落ち着いて眺められるようになります。
国立がん研究センターのがん情報サービスは、家族は「本人はもっとつらいのだから」と気持ちを我慢しがちで、そのうえ自分の日常生活も保たなければならないとして、「ご家族は、『第二の患者』ともいわれます」と紹介しています。仕事を休まず、家のことも回しながら怖さを抱えている人は、まさにこの二重の重さの中にいます。
困るのは、怖さに行き場がないときです。行き場のない怖さは、会議の最中にも、子どもの宿題を見ている夕方にも、時間を選ばずに入り込んできます。先に居場所を決めておけば、怖さが来ても「続きはあとで」と脇に置けます。親・子ども・配偶者という立場によって怖さの形は違い、その違いは[gk_link to=”post:fear-of-losing-parent-to-cancer”]立場別にまとめた記事[/gk_link]で扱っています。ここでは、立場を問わず使える付き合い方に絞ります。
持ち場がないとき
- 会議中も電車の中も、いつ怖さが来るかと身構えている
- 帰宅してからも検索が止まらず、眠る時間が削られていく
- 誰にも言えず、顔だけを整えて一日を終える
持ち場があるとき
- 怖さが来たら一行だけ書き留めて、目の前の作業に戻る
- 怖さと向き合う時間が決まっていて、そこでは泣いてもいい
- 事情を知る人が一人いて、取り繕わなくていい時間がある
まだ生きている人のことで泣くのは、縁起でもないことですか?
縁起でもないことではありません。別れを先回りして悲しむのは、失いたくない人がいる心に起きる自然な反応で、回復をあきらめた印でも、別れを望んでいる印でもありません。悲しみと希望は、同じ一日の中に並んでいてかまいません。
「泣いたら本当になってしまいそう」「治療をがんばっている母に失礼だ」。そう思って、涙を飲み込んでいる人もいるでしょう。けれど、悲しむことで別れの日が近づくわけではありませんし、涙をこらえたからといって遠ざかるわけでもありません。悲しみは予言でも願いでもなく、その人が自分にとってどれほど大きな存在かを、心が確かめている動きです。
やっかいなのは、この罪悪感が両方向からやってくることです。悲しめば「縁起でもない」と自分を責め、職場で同僚と笑った瞬間には「母が大変なときに笑うなんて薄情だ」と責める。泣いても笑っても責められる仕組みの中にいると、心の休まる場所がなくなります。悲しむ気持ちも、笑ってほっとする気持ちも、どちらも相手を大切に思う同じ心から出ている。そう気づけると、責める声は少しずつ小さくなっていきます。
| 責める言葉 | 実際に起きていること | 置き換えてみる言葉 |
|---|---|---|
| 「まだ生きているのに縁起でもない」 | 失うかもしれない相手を思う、予期悲嘆という反応 | 「それだけ大きな人なんだ」 |
| 「笑ってしまった。薄情だ」 | 張りつめていた心が、少しだけ休んだ | 「笑えた時間も、母との今日の一部」 |
| 「仕事に逃げている」 | 暮らしを保つことで、自分を立て直している | 「働く時間が、怖さの休憩になっている」 |
| 「怖がっていたら本人に伝わる」 | 少し伝わっても、それで関係が壊れるわけではない | 「隠しきれない日があってもいい」 |
責める言葉が浮かんだら、打ち消そうとしなくてかまいません。「また責めているな」と気づいたら、表の右側の言葉を一つ、心の中で言い直してみてください。言い直した言葉を信じきれない日があっても、口の中で唱えるだけで、責める声と自分との間に少し距離が生まれます。
普通の顔で働いている自分は、冷たいのでしょうか?
冷たくありません。いつもどおり働くことは、怖さから目をそらすことではなく、自分の暮らしという足場を守ることです。足場が残っているから、面会の日に本人の前で踏みとどまれます。ただ、普通の顔を保つには、思っている以上の力が要ります。
仕事は、怖さから一時的に離れられる数少ない場所でもあります。決まった時間に起き、決まった作業をこなし、同僚と天気の話をする。そうした当たり前のくり返しが、揺れている心に手すりを与えてくれます。本人の側にも、家族が自分のために暮らしを崩していくことを心苦しく思う人がいます。あなたが働き続けていることが、本人の気がかりを一つ減らしている場合もあるのです。
一方で、普通の顔を保ち続けるのは、表情や声の調子を一日じゅう見張っているのと同じで、確実に力を使います。その反動は、たいてい一人になった瞬間にやってきます。会社のトイレの個室、駐車場に停めた車の中、最寄り駅の改札を出たところ。そこで涙が出るのは、心がその日の緊張をほどいている証拠で、取り乱しているわけではありません。次のような様子が増えてきたら、普通の顔に使える力が残り少なくなっている合図です。
- 帰り道や車の中で、毎日のように涙があふれる
- 昼休みのたびに、病名や「余命」を検索してしまう
- 同僚の何気ない家族の話に、強く動揺してしまう
- 休みの日は何もできないまま、一日が終わってしまう
- 本人からの着信を見るたびに、出るのが怖くなる
当てはまるものが増えてきたら、次の章からの「書く・区切る・話す」を、仕事のある日に一つずつ試してみてください。
[gk_cta_mid title=”「怖い」を、評価も助言もしない20分で聞きます”]フォームに「母のことが怖い」とひとこと、お電話のご希望の時間帯を添えてお送りください。昼休みなど、ご希望の時間帯に担当からお電話し、怖さの話をそのまま聞きます。[/gk_cta_mid]怖さを「書く」と、何が変わるのですか?
頭の中で何度も再生されていた怖さが、紙の上の一回分になります。怖さが来た時刻と場面を一行で残し、最後に「でも今日は」で始まる一行を足すと、怖さの引き金が見えてきて、今日あった小さな出来事も手元に残ります。
書くといっても、日記のような文章はいりません。仕事中なら、スマホのメモか手帳の端に「10時40分、会議中。資料の『介護』の文字」と、時刻と場面だけを一行。心の中身はあとで書けばよいので、その場では書き留めた時点で仕事に戻ります。夜か翌朝の落ち着いた時間に、そのとき浮かんだ言葉を整えずに書き出します。たとえば「母がいなくなったら、日曜の電話はどうなるんだろう」。そんな一文で十分です。
書き終えたら、最後に「でも今日は」で始まる一行を足してください。たとえば「でも今日は、母が電話で『こっちは寒いよ』と笑っていた」。怖さの記録だけで終わると、紙の上でも怖さが一日の主役になってしまいます。今日の小さな事実を最後に置くと、まだ続いている今の時間に目が戻ります。
しばらく続けて見返すと、怖さが来やすい曜日や場面が見えてくることがあります。日曜の夜、病院からの帰り道、誰かが自分の親の話をしたとき。引き金が分かれば、その日の予定を軽めにしておく、帰り道に寄り道の時間を足すといった備えができます。
- 1時刻と場面を書く「10時40分、会議中。資料の『介護』の文字」のように一行だけ
- 2浮かんだ言葉を書く夜か翌朝に、整えずにそのまま書き出す
- 3「でも今日は」を足す今日あった小さな出来事を一行(電話の声、食べたもの)
- 4しまう場所を決める手帳のいちばん後ろのページなど、いつも同じ場所に閉じる
- 5週末に見返す怖さが来やすい曜日や場面に印をつけ、翌週の予定に生かす
怖さに時間の区切りをつけるには、どうすればいいですか?
怖さを締め出すのではなく、怖さが入ってくる時間と出ていく時間を決めます。仕事の顔に切り替える入口と、家族の顔に戻る出口に小さな合図を置き、怖さと向き合う時間は、出口を出たあとにまとめて用意します。
入口の合図は、毎日必ず通る場所に置くと続けやすくなります。職場の最寄り駅の改札、会社の駐車場でエンジンを切る瞬間、自分の席でパソコンを開くとき。そこで「ここから夕方までは仕事の顔」と心の中で言うだけです。仕事中に怖さが来たら、メモに一語だけ書いて「続きは出口のあと」と予定に回します。怖さを無視するのではなく、怖さの話を聞く時間を後ろへずらすイメージです。
出口のあとには、怖さと向き合う時間を少しだけ取っておきます。車の中で過ごす10分、ひと駅分を歩く道のり。泣いてもいいし、ぼんやりしてもいい時間です。そして家の玄関で手を洗うときを、家での顔に戻る合図にします。怖さに時間を渡してから家に入ると、家族との夕食の席に、怖さを丸ごと持ち込まずに済みます。
それでも仕事中に怖さが強く押し寄せて、手が止まることはあります。そんなときは、席を立って水を一杯飲む、手を洗う、外の空気を吸うといった、体を動かす小さなことから始めてください。しばらくしても落ち着かない日は、事情を知る人に「少し外します」と伝えて、早めに出口へ向かってかまいません。
- 1出勤前怖さで目が覚めたら、浮かんだことを一行だけ書いて閉じる
- 2入口(職場の最寄り駅)改札を通ったら「ここから仕事の顔」と心の中で言う
- 3仕事中怖さが来たらメモに一語。続きは出口のあとに回す
- 4昼休みの終わり本人に短いメッセージを送る日と、送らない日を決めておく
- 5出口(退勤後)車の中やひと駅歩く間を、泣いてもいい時間にする
- 6家の玄関手を洗いながら、家での顔に切り替える
- 7寝る前「でも今日は」の一行を書いて、手帳を閉じる
職場や家族に、この怖さをどう話せばいいですか?
全員に話す必要はありません。職場に事情を知る人を一人、家族や友人に「答えはいらない」と言える相手を一人、関係の外に話せる場所を一つ。この3つがそろうと、普通の顔を一日じゅうかぶり続けなくて済みます。
職場の一人は、上司でも、信頼できる同僚でもかまいません。伝えるのは病状の詳しい説明ではなく、「起こりうること」だけで足ります。たとえば、次のような言い方です。
例:「家族ががんの治療中で、気持ちが揺れやすい時期です。急に席を外したり、早めに帰らせてもらったりすることがあるかもしれません。そのときは、そういう事情だと思っていてください」
一人が知っているだけで、取り繕わなくていい時間が一日の中に生まれます。休み方の制度や会社への正式な伝え方は、[gk_link to=”post:cant-focus-at-work-family-cancer”]会社への伝え方と休む制度の記事[/gk_link]にまとめています。
家族や友人には、最初に「答えはいらない」と伝えておくのがこつです。たとえば、次のように切り出します。
例:「怖いって言ってもいい? 何か言ってほしいわけじゃないの」
身近な人ほど、なんとか励まそうとして「大丈夫だよ」「考えすぎ」と返しがちです。聞いてほしいだけだと先に言っておくと、相手も気が楽になります。ただ、同じ人を失う怖さを抱えるきょうだいや配偶者には、かえって言いにくいこともあります。そんなときは、関係の外の相手を選んでください。
関係の外には、がん診療連携拠点病院などにあるがん相談支援センターがあります。本人が通っていない病院のセンターでも、家族が無料・匿名で利用でき、相談した内容が、相談した人の同意なしに担当医を含むほかの人へ伝わることはありません。がんと家族の相談室にも、評価や助言をはさまずに20分間ただ話を聞く時間があり、ご希望があれば記録も残しません。
怖さを抱えたまま働くあなた
- 職場の一人事情だけを知っていてもらう。病状の詳しい説明はいらない
- 家族・きょうだい同じ人を思う相手。「答えはいらない」と先に伝える
- 友人病院や家族の事情から離れて、助言なしに聞いてくれる人
- がん相談支援センター家族も無料・匿名。相談した人の同意なく担当医などに伝わらない
- がんと家族の相談室評価も助言もしない20分。希望すれば記録を残さない
怖さで今日が崩れそうな日は、どうすればいいですか?
今日の目標を小さくしてかまいません。出勤する、本人に一度連絡する、温かいものを食べる。そのどれかが守れれば十分な日もあります。眠れない・食べられない日が重なるときや、消えてしまいたい気持ちがあるときは、その日のうちに誰かを頼ってください。
怖さが強い朝は、「今日やらなくていいこと」を先に決めると動きやすくなります。急ぎでない会議の資料、返事を待ってもらえるメール、手の込んだ夕食。休むと決めるのも、立派な選択です。職場への連絡は、「家族の体調のことで、今日はお休みをいただきます」の一文で足ります。
眠れない夜が重なる、食事がのどを通らない、仕事でミスが続く、動悸や息苦しさが出る、何をしても楽しめない。こうした状態が続くときは、ご自身の心と体のケアが必要になっています。かかりつけ医や心療内科・精神科で「家族の病気のことで、眠れない日が続いています」と伝えれば、話は通じます。こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)は、かけた地域の公的な相談窓口につながります(曜日や時間は地域によって異なり、通話料がかかります)。夜中に誰かと話したいときは、がん専門の窓口ではありませんが、よりそいホットライン(0120-279-338)が24時間・無料で受けています。自分を傷つけてしまいそうなほど差し迫っているときは、迷わず119番に電話してください。亡くなる前から受けられる心のケアの窓口と使い方は、[gk_link to=”post:family-grief-care-before-loss”]心のケアの窓口をまとめた記事[/gk_link]で詳しく扱っています。
Q1今日、仕事に行けそうですか
はいやることを3つに絞り、出口のあとに怖さの時間を取っておく
いいえ休むと決めて、職場への連絡は事実だけを一文で送る
Q2眠れない・食べられない日が重なっていたり、消えてしまいたい気持ちがあったりしますか
はい今日のうちに医療機関や相談窓口へ。差し迫った危険があれば119番
いいえ夜に「でも今日は」の一行を書き、明日の入口と出口を決める
普通の顔で働き続けていた娘さんは、どう変わった?
説明のための例(実在の方の体験談ではありません)
1. 相談のあとに変わったこと
相談からひと月ほどたったころ、彼女の昼休みは変わっていました。以前は週に4日ほど、会社のトイレの個室で声を殺して泣き、赤くなった目を冷やしてから席に戻っていました。今は、怖さが来たら手帳に時刻と場面を一行だけ書き、続きは帰りの車の中の10分に回しています。泣く日は週に1日ほどになりました。チームの先輩一人にだけ「母が治療中で、急に抜けることがあるかも」と伝えたことで、会議中に怖さが来ても、無理に笑顔を作らなくてよくなったといいます。
2. 相談を考えた背景
母の再入院が決まった週、取引先との打ち合わせの最中に、ふと「母のいない正月」が頭に浮かび、息ができなくなりました。資料を持つ手が震え、トイレに駆け込んだまま、しばらく出られませんでした。「このまま仕事を続けられるのか、自分でも分からなくなった」と振り返ります。
3. 相談する前に困っていたこと
夜は「家族 亡くなる 怖い」と検索しては、似た境遇の人の書き込みを読み続けていました。夫には「まだ元気なんだから」と言われ、それ以上は話せなくなりました。まだ生きている母のことで泣く自分が縁起でもない気がして、母の前では普段どおりにふるまい、病院を出たとたんに涙が出る日が続いていました。
4. ここを選んだ理由・決め手
母の病院のがん相談支援センターのことも知っていましたが、平日の昼間に職場を抜けて電話をかける余裕がなかったといいます。深夜、相談室のLINEに「母がいなくなるのが怖い」とだけ送ると、翌朝いちばんに返事が届きました。その返事に背中を押され、フォームから昼休みの時間帯を指定して、折り返しの電話を申し込みました。病院とは関係のない場所なら、母の担当の人たちに気をつかわずに話せると思えたことが決め手でした。
5. 相談で話したこと・その後
最初の20分、担当は評価も助言もせず、彼女が話し終えるのを待ちました。母の病状について判断することも、この先の見通しを口にすることもありませんでした。話し終えたところで、職場に何をどこまで伝えるかを一緒に整理し、先輩に伝える一文を決めました。最初の一週間は、手帳の一行を3回書き忘れたそうです。それでも続けるうちに、怖さが日曜の夜と病院の帰り道に来やすいと分かり、日曜の夕方には予定を入れないようにしました。「怖さは消えていません。でも、一日じゅう怖さに乗っ取られることはなくなりました」。
※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。
医療者に聞く質問例
- 本人の今の様子で、家族が知っておいたほうがいい変化はありますか。
- 仕事をしながら付き添う家族は、面会や連絡をどのくらいの間隔にするとよいでしょうか。
- 急な変化があったとき、家族に連絡をいただけるのはどんなときですか。
- 家族が気持ちのつらさを話せる専門の方は、この病院にいらっしゃいますか。
- (ご自身のかかりつけ医に)家族の病気のことで眠れない日が続いています。相談してもいいですか。
とはいえ、怖さを抱えて働くあなたに伝えたい2つのこと
① 気持ちのこと──怖さのある日にも、笑った時間はちゃんと残る
怖さが消えないうちは、何をしても本物の時間ではないように感じるかもしれません。けれど、怖さを抱えたまま見舞いに行き、母の好きなプリンを一緒に食べた午後は、怖さがあってもなくても、同じように二人の一日です。思い出は、怖さのない日にだけ残るものではありません。怖さと今日は、どちらか一つを選ぶものではなく、並べて持っていけるものです。
② 実務のこと──職場と家族の中に、怖さの日の「代わり役」を置いておく
怖さが強い日に休めるかどうかは、その日の気力より、前もって作っておいた仕組みで決まります。職場では、自分の担当のうち、急に抜けても誰かが引き取れる仕事を一つ二つ決め、事情を知る人と共有しておくと安心です。制度も一度だけ確かめておきます。要介護状態(2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)の家族がいる場合の介護休暇は、1年に5日(対象家族が2人以上なら10日)まで、時間単位でも取れます。2025年4月からは、介護に直面した社員への個別の制度の周知や意向の確認が、事業主の義務にもなりました。対象になるかは家族の状態や会社の規則によるので、人事に確かめてください。家族の中でも、病院からの連絡を受ける役と本人に電話する役を分けておくと、一人が怖さを全部受け止めずに済みます。
今日できること
[gk_howto name=”今日できること” description=”怖さを抱えたまま、明日も出かけるための3つの準備” heading=”none”][gk_step title=”「でも今日は」の一行を書く”]寝る前に、今日いちばん怖かった場面を一行書き、そのあとに「でも今日は」で始まる一行を足して、手帳を閉じる。[/gk_step][gk_step title=”明日の入口と出口を決める”]仕事の顔に切り替える場所と、怖さと向き合う時間(帰りの車の中の10分など)を一つずつ決めておく。[/gk_step][gk_step title=”事情を伝える相手を一人選ぶ”]職場か家族の中から一人を思い浮かべ、明日のどこかで「答えはいらないから聞いて」とひとこと伝える。思い当たる人がいなければ、相談室のLINEにひとこと送るだけでもかまわない。[/gk_step][/gk_howto]よくある質問
[gk_faq][gk_q q=”母の前では笑っていられるのに、帰り道で毎回泣いてしまいます。おかしいですか?”]おかしくありません。母の前では気持ちを張って笑顔を保っていた分、ひとりになった帰り道でその緊張がほどけて、涙になって出てくるのは自然なことです。帰り道の涙は、今日の面会を最後までやり通した印でもあります。泣く場所が決まっていると安心できるなら、駅のベンチや車の中など、決まった場所を一つ持っておくのも一つの方法です。[/gk_q][gk_q q=”怖いという気持ちを、本人に打ち明けてもいいですか?”]打ち明けるかどうかに決まった答えはなく、本人との関係や、本人がどのくらい病気の話をしたがっているかによって変わります。怖さをそのまま渡すのではなく、「これからもそばにいたいと思ってる」のように、怖さの奥にある気持ちだけを伝える方法もあります。迷うときは、まず関係の外の誰かに話して、自分の気持ちを整えてから決めても遅くありません。[/gk_q][gk_q q=”仕事を休んで、そばにいたほうがいいのでしょうか?”]どちらが正しいということはありません。本人の状態と希望、あなたの体力、職場の事情によって答えは変わります。本人に「来てくれるとうれしいのは、どんなとき?」と聞いてみると、休む日を絞りやすくなります。休み方の制度は会社によって違うので、人事に確かめてください。状態が急に変わったときは、まず病棟や主治医に様子を確かめてください。そのうえで遠方の家族を呼ぶか、泊まるかで迷うときは、がんと家族の相談室で判断を一緒に整理することもできます(平日9時〜18時以外は、翌朝9時までの折り返しになります)。[/gk_q][gk_q q=”子どもががんで、亡くなるのが怖くてたまりません。”]子どもを思う親御さんの怖さは、言葉にならないほど深いものだと思います。書く・時間を区切る・話すという考え方は使えますが、あわせて専門の相談先も知っておいてください。小児がん拠点病院に置かれたがん相談支援センターなら、その病院に通っていなくても、電話を含めて無料で相談できます。公益財団法人がんの子どもを守る会にも、小児がんを専門とするソーシャルワーカーの相談窓口があります(東京03-5825-6312/大阪06-6263-2666、受付は平日10時〜17時で年末年始を除く)。[/gk_q][gk_q q=”夫(妻)を失うのが怖くて、夜ひとりになると眠れません。”]長く一緒に暮らしてきた相手を失う怖さは、夜の静けさの中で大きくなりがちです。この記事の入口と出口は昼の方法ですが、夜は、浮かんだ怖さを一行書いて閉じる、誰かにひとことだけ送る、といった小さな区切りが助けになります。眠れない夜がいくつも重なるようなら、ご自身のかかりつけ医に、家族の病気のことで眠れないと伝えてみてください。[/gk_q][gk_q q=”この怖さは、いつか楽になりますか?”]いつ、どのくらい楽になるかは人によって違い、はっきりしたことは言えません。治療の節目や体調の変化で、また強くなる日もあります。ただ、怖さに持ち場ができてくると、怖さが来ても一日全体が飲み込まれることは減っていきます。眠れない、食べられない状態が続くときは、楽になるのを待たずに医療機関や相談窓口を頼ってください。[/gk_q][gk_q q=”夜中に怖さで目が覚めたら、どうすればいいですか?”]枕元に紙とペンを置いておき、浮かんだことを一行だけ書いて、続きは朝に回してください。スマホで検索を始めると、かえって目がさえてしまいがちです。声を聞いてほしいときは、24時間・無料のよりそいホットライン(0120-279-338。がん専門の窓口ではありません)につながります。言葉にならなければ、がんと家族の相談室のLINEにスタンプをひとつ送っておくだけでもかまいません。夜に届いたものは、翌朝いちばんに読んで返事をします。[/gk_q][/gk_faq]次に読むなら
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- [gk_link to=”post:remaining-time-three-simple-rules”]残された時間を、どう過ごせばいいですか?[/gk_link]
- [gk_link to=”post:family-member-breaking-down-tears”]支える自分も壊れそうなときは、どうすればいいですか?[/gk_link]
- [gk_link to=”page:talk”]誰かに、ただ話を聞いてほしいときは?[/gk_link]