日曜の夕方、テーブルに置いたスマホが震える。画面には園の同僚の名前。「明日の早番、2人とも熱で休みです。どうしましょう」。園長に連絡すると、返ってきたのは「〇〇さんに任せるから、うまく回して」の一言。夕飯の支度の手を止めて、誰に早番を頼めるかを考え始める。月曜の朝、1歳児クラスの人数と職員の数を頭の中で何度も数え直しながら、眠りにつけない夜が続きます。
経験を重ね、園の中で頼られる立場になるほど、「責任」は重くなっていきます。子どもの命を預かる責任。足りない人数で一日を回す責任。園長の方針を職員に伝え、職員の不満を園長に届ける責任。どれも投げ出せないものばかりで、気がつけば、そのすべてを一人で背負っている。「責任が重い」と口にしても、「それだけ信頼されているんだよ」と返されて、かえって何も言えなくなってしまう人もいるでしょう。
この記事では、保育士が感じる「責任の重さ」を3つに分けたうえで、自分が担う責任と園が担う責任の線の引き方、人手不足の日の動き方、園長との板挟みを和らげる伝え方を整理しました。責任感の強い人が、一人で倒れてしまわないための考え方をまとめています。
この記事でわかること
- 保育士が「責任が重い」と感じる3つの責任の正体
- 現場の保育士が担う責任と、園長・法人が担う責任の線の引き方
- 人手不足の日に、責任者として「やること」と「抱えないこと」
- 園長と職員の板挟みを和らげる、伝え方と仕組み
- 心と体の限界のサインと、園の外にある相談先
結論
保育士が責任が重いと感じるときは、その重さが「子どもの安全」「職員を回すこと」「園長と職員・保護者をつなぐこと」の3つのどれから来ているかを分け、自分が担う責任と、園長や法人が担うべき責任の線を引き直すことが出発点になります。職員の配置や事故防止の体制を整えるのは、本来、園や法人の役割です。人手不足の日に配置の判断を一人で抱え込まず、園長に事実と影響を伝えて判断を求めること、園長と職員の間に立つときは決めた人と理由を明らかにして伝えることで、責任の重さは軽くできます。それでも眠れない日が続くなら、園の外の相談先や医療機関を頼ってください。
01「責任が重い」の正体は、3つの責任が一人に集まること
要点:保育士が感じる責任の重さは、子どもの安全の責任、職員を回す責任、園長と職員・保護者をつなぐ責任の3つが、特定の人に集まることで生まれます。どの責任が自分に偏っているかを知ることが、軽くするための第一歩です。
担任になったばかりの頃の責任は、自分のクラスの子どもの安全と育ちでした。経験を積むと、そこに新しい責任が少しずつ重なっていきます。副主任やリーダー、あるいは肩書きはなくても「園で一番の古株」という立場になると、園全体の困りごとが自然と集まってくるようになります。
図1
- 1
子どもの安全の責任
午睡チェック、食物アレルギーの対応、散歩や園庭での見守り。一瞬の見落としが大きな事故につながる重さ
- 2
職員を回す責任
欠員が出た日の配置、シフトの穴埋め、新人のフォロー。足りない人数で一日を成り立たせる重さ
- 3
園長と職員・保護者をつなぐ責任
園長の方針を職員に伝え、職員の不満や保護者の要望を園長に届ける。どちらからも責められる重さ
一番重いのは、どの責任か
3つのうち、どれが一番自分を苦しめているかを考えてみてください。子どもの安全の責任は、保育士である限りなくなりません。けれども、職員を回す責任と、つなぐ責任は、本来は園長や主任、法人が担うべき部分が大きいものです。この2つが自分に偏っているなら、線を引き直す余地があります。
肩書きのない責任ほど、重くなりやすい
主任や副主任なら、役割の範囲がある程度決まっています。ところが、「一番長くいるから」「園長が頼みやすいから」という理由で集まってくる責任には、範囲も手当もありません。範囲が決まっていない責任は、際限なく広がります。朝の欠員の調整、新人の悩み相談、保護者の苦情の一次対応。肩書きがないまま、こうした役目を担っている人は、まず今担っていることを書き出し、「これは誰に頼まれたことか」を一つずつ確かめてみてください。誰にも頼まれていないのに担っていることが多いなら、それは手放してよい責任かもしれません。
事故への不安は、個人の注意力だけで背負うものではない
子どもの安全の責任が一番重いと感じる人は多いはずです。こども家庭庁の集計では、2025年に教育・保育施設等から報告された事故は3,130件で、そのうち骨折が2,533件でした[1]。数字を見ると不安が増すかもしれませんが、国は2016年に「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」を定め、施設・事業者向け、自治体向け、事故発生時の対応の3つの文書で、園としての取り組みを示しています[2]。事故を防ぐ仕組みづくりは、一人ひとりの注意力だけに頼るものではなく、園全体の役割です。事故が怖いという気持ちとの向き合い方は、保育中の事故が怖いときでも詳しく扱っています。
02自分が担う責任と、園が担う責任を分けてみる
要点:現場の保育士は、目の前の子どもの安全を守り、気づいたことを報告する責任を担います。一方、職員の配置、事故防止の体制、苦情やハラスメントへの対応の仕組みを整えるのは、園長や法人の役割です。
「責任が重い」と感じている人の多くは、園長や法人が担うべき部分まで、自分のこととして抱えています。線を引き直すために、責任を二つの列に分けて並べてみましょう。
図2
| 場面 | 現場の保育士・責任者として担うこと | 園長・法人が担うこと |
|---|---|---|
| 子どもの安全 | 午睡チェックや見守りを手順どおりに行い、気づいたことを報告する | 事故防止の手順を決め、研修や見直しの仕組みを整える |
| 職員の配置 | 欠員や配置の不足に気づいたら、すぐに報告する | 配置の基準を満たすよう、職員の採用と配置を決める |
| 保護者の苦情や要求 | 最初の対応をし、内容を記録して園長に伝える | 対応の方針を決め、行き過ぎた要求から職員を守る |
| 職員間のトラブル | 困っている職員の話を聞き、園長につなぐ | 相談の窓口を整え、事実を確かめて対応する |
| 事故やけがが起きたとき | 子どもの手当てと安全の確保、状況の記録 | 保護者や自治体への報告、原因の振り返りと再発防止 |
苦情やハラスメントへの対応は、事業主の義務
職員がパワハラなどの相談をしたときに、適切に対応する体制を整えることは、事業主の義務とされています[3]。さらに2026年10月1日からは、カスタマーハラスメント対策も事業主の義務になりました[4]。カスハラは、顧客等の言動で、社会通念上許容される範囲を超え、働く人の就業環境が害されるものと定義されています[4]。保育の場では、保護者からの行き過ぎた要求がこれに当たる場合があります。保護者の要求に一人で向き合い続けて疲れ切っているなら、それは本来、園として受け止めるべきことです。保護者の苦情への向き合い方は、保護者のクレームが怖いときで詳しく紹介しています。
線を引くことは、責任を放り出すことではない
「それは園長の仕事です」と言うのは、冷たいことのように感じるかもしれません。けれども、線を引かずに全部を抱え込み、ある日倒れてしまえば、子どもにも同僚にも、もっと大きな影響が出ます。自分の責任をきちんと果たすために、自分の責任ではない部分を、持ち主に返す。線を引くことは、責任から逃げることではなく、責任を守るための方法です。
03人手不足の日に、責任者として「やること」と「抱えないこと」
要点:人手が足りない日は、配置の基準を頭に入れたうえで、事実を園長に報告し、判断を求めることが責任者の役目です。足りない人数を自分の無理で埋めることや、配置の判断を一人で下すことは、抱えなくてよいことです。
配置の基準を、あらためて確かめておく
保育所の保育士の数は、法令で最低基準が決められています。乳児はおおむね3人につき1人以上、1・2歳児はおおむね6人につき1人以上、3歳児はおおむね15人につき1人以上、4歳以上児はおおむね25人につき1人以上で、1つの保育所につき2人以上とされています[5]。4・5歳児の基準は2024年度に30対1から25対1に改められましたが[6]、経過措置として当分の間は従前の基準による運営も妨げないとされています[7]。
この基準は、あくまで最低限の数です。基準を満たしていても、配慮の必要な子どもがいる、散歩に出る、行事の練習があるといった日は、実際には手が足りないこともあります。基準を知っておくと、「足りない」と感じたときに、それが感覚なのか、数字の上でも足りないのかを分けて報告できます。
図3
- クラスごとの子どもの人数と、出勤している職員の数配置の基準と照らし合わせて、足りないクラスが分かる
- 配慮の必要な子どもや、体調のすぐれない子ども基準以上に手が必要な場面を見落とさない
- 散歩や行事の練習など、その日の予定人数に合わせて予定を変えるべきかを判断できる
- 園長への報告の手段と時刻判断を一人で抱えず、決めた人を明らかにできる
- 報告した内容と、園長の返事の記録あとで「誰が決めたか」で困らないようにする
判断を求めることも、責任者の仕事
人手が足りない朝、責任感の強い人ほど、「自分が何とかしなければ」と動きます。休憩を削り、自分のクラスを離れて別のクラスに入り、散歩は自分の判断で取りやめる。その一つひとつは子どものためでも、判断の重さがすべて自分に乗ってしまいます。
足りないと分かったら、まず園長に事実を伝えて判断を求めてください。「今朝、1歳児クラスは子ども12人に対して保育士が1人足りません。散歩は中止にして、フリーの〇〇さんに入ってもらう形でよいでしょうか」と、事実と提案をセットにして伝えると、園長も判断しやすくなります。園長が不在で連絡もつかない場合に、誰が何を決めてよいのかは、普段から決めておくべきことです。
「足りなかった日」を記録に残す
人手不足は、日々の忙しさの中で「なんとか回った」と流れてしまいがちです。けれども、記録がなければ、園長や法人には足りなさが伝わりません。カレンダーやノートに、日付、足りなかったクラスと人数、その日に取りやめたこと(散歩、制作、休憩など)を一行ずつ書いておきましょう。1か月分たまると、「月に8日、1歳児クラスで1人足りなかった」のように、具体的な数字で伝えられるようになります。数字は、職員を増やしてほしいと伝えるときの、何よりの材料になります。
04園長と職員の板挟みを和らげる、伝え方と仕組み
要点:板挟みのつらさは、園長の決定を自分の言葉で伝えなければならないことと、職員の不満を自分が受け止めなければならないことから生まれます。決めた人と理由を明らかにして伝える、職員の声は事実・影響・提案の形で園長に上げる、定例の打ち合わせをつくる、の3つで和らげられます。
園長の決定を職員に伝えるときは、「決めた人」を主語にする
園長の方針に納得できないまま職員に伝えると、職員の不満は伝えた自分に向かいます。「来月から書類の提出を早めることになりました」ではなく、「園長が、監査に向けて書類の提出を早めると決めました。理由は〜です」と、決めた人と理由を主語にして伝えてください。自分の意見を求められたら、「私個人としては気になる点もあるので、園長に伝えておきます」と、園の決定と自分の意見を分けて話すと、板挟みの苦しさが少し軽くなります。
職員の声は、「事実・影響・提案」で園長に上げる
職員の不満をそのまま園長に伝えると、「あなたがまとめられないから」と返されることがあります。園長に上げるときは、感情ではなく、事実と影響と提案の3つに整えてください。
図4
- 事実を集める誰が、いつ、どんな場面で困っているかを具体的に聞き取る
- 影響を整理する子どもの安全、職員の負担、保護者への影響など、放っておくと何が起きるかをまとめる
- 提案を一つ用意する「書類の提出日を1週間遅らせる」など、園長が判断しやすい案を一つ考える
- 園長に伝える立ち話ではなく、時間をとって、事実・影響・提案の順に話す
- 返事を職員に伝える園長の判断と理由を、決めた人を主語にして職員に伝える
- 記録を残す日付、伝えた内容、園長の返事をメモしておく
週に一度、15分の打ち合わせをつくる
板挟みがつらい人の多くは、園長と話す時間が決まっていません。必要なときに声をかけようとしても、園長が忙しくて捕まらず、結局その場で自分が判断することになります。週に一度、15分でよいので、園長と打ち合わせる時間を決めてもらえないか相談してください。話す場が決まっているだけで、「今これを判断しなくていい」と思える場面が増えます。打ち合わせでは、その週に起きたこと、園長に決めてほしいこと、職員から出ている声の3つを、メモにして持っていくと短い時間でも話がまとまります。
05相談事例:責任の「持ち主」を確かめた副主任
要点:ここでは、主任の不在と人手不足の中で、一人で責任を抱えていた副主任のモデルケースを紹介します。責任の線を引き直した過程と、最終的に選んだ道に注目してください。
責任を下ろしたのではなく、持ち主を確かめた
相談事例(モデルケース)
- お名前
- けんとさん(仮名)・39歳
- 保育士歴
- 15年目(相談当時)
- 勤務先
- 3園を運営する社会福祉法人の認可保育園(定員約90名)、副主任・3歳児クラス担任
- 家族
- 妻と小学生の子ども2人
- 変化
- 休日の業務連絡 月10回程度 → ほぼなし/睡眠時間 平均5時間 → 6時間半
編集部相談に来られたとき、どんな状況でしたか。
主任が産休に入って、その代わりを副主任の僕がやることになったんです。ちょうど職員が2人辞めて、欠員のまま。園長は法人の本部の仕事もあって、園にいない日も多くて。朝の欠員の調整も、保護者からの苦情も、全部「けんとさんに任せる」でした。休みの日もスマホが手放せなくて、夜中に目が覚めると、明日の配置のことを考えてました。
編集部責任を分けてみて、何が見えましたか。
表に書いてみたら、僕がやってたことの半分以上が、本当は園長が決めることだったんです。配置が足りないときにどうするか、保護者の苦情にどこまで応じるか。でも、僕が全部決めてたから、園長はそれでいいと思ってたんですよね。相談した人に「けんとさんが倒れたら、その責任は誰が取るんですか」って聞かれて、はっとしました。
編集部園長には、どう伝えたのですか。
「判断の線引き表」を作って持っていきました。僕が決めていいこと、園長に連絡して決めてもらうこと、園長が不在のときの連絡の順番。それと、週に一度、月曜の朝に15分だけ打ち合わせをしてほしいってお願いしました。最初は渋い顔でしたけど、苦情の記録を見せたら、保護者の対応は園長が引き取ってくれることになったんです。
編集部その後、どうなりましたか。
打ち合わせができて、だいぶ楽になりました。ただ、欠員はなかなか埋まらなくて、半年たっても朝の調整は続いてて。家族のこともあったので、法人に相談して、翌年度は主任と副主任がそろっている別の園に、担任として移ることにしたんです。逃げたみたいで迷いましたけど、責任を果たせる形で働きたかったので。
責任を下ろしたんじゃなくて、責任の持ち主を確かめただけだったんです。
けんとさん(仮名)
けんとさんは翌年度、法人内の別の園で4歳児クラスの担任になりました。休日に業務の連絡が来ることはほとんどなくなり、睡眠時間も平均6時間半ほどに戻ったそうです。元の園には、けんとさんが作った判断の線引き表がそのまま残り、後任の副主任も使っていると聞いています。
このケースから持ち帰れるのは、責任の重さを「我慢するもの」ではなく、「持ち主を確かめるもの」として扱うことです。線を引いても変わらない部分が残ったとき、同じ法人の中で働く場所を変えるという選択も、責任を投げ出すことにはなりません。
※相談で多く寄せられる状況をもとに再構成したモデルケースです。特定の個人ではなく、数値は一例です。
図5
休日の業務連絡
園長との打ち合わせ
保護者の苦情対応
睡眠時間
06限界のサインと、園の外にある相談先
要点:責任感の強い人ほど、限界に気づくのが遅れます。眠れない、休日も仕事が頭から離れない状態が続くなら、医療機関や公的な相談窓口を頼ってください。労働条件の問題は、労働局の窓口で無料で相談できます。
責任の重さは、気づかないうちに心と体を削っていきます。次のような状態が2週間以上続いているなら、働き方を考える前に、自分の体を守ることを優先してください。
- 夜中に目が覚めて、仕事のことを考えてしまう
- 休みの日も、スマホの通知が気になって休まらない
- 出勤前に動悸や吐き気がある
- 小さなミスで、自分を強く責めてしまう
- 子どもと関わることを楽しいと感じられなくなった
こうしたサインがあるときは、医療機関の受診を考えてください。働く人の悩みを聞く窓口として、厚生労働省の「こころの耳電話相談」(0120-565-455、平日17時〜22時、土日10時〜16時)があり[8]、LINEで相談できる「こころの耳SNS相談」もあります[9]。長時間労働や人員の問題など、労働条件についての相談は、全国の労働局や労働基準監督署にある総合労働相談コーナーで、無料・予約不要で受け付けています[10]。心の不調の相談先は、メンタル不調のときの相談先でも詳しく紹介しています。
「消えてしまいたい」「いなくなりたい」という気持ちがよぎるときは、一人で抱えずに、すぐに誰かに話してください。いのちの電話(0120-783-556、毎日16時〜21時、毎月10日は8時〜翌日8時)や、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間)で話を聞いてもらえます[11]。
07責任感の強い人に、伝えておきたい2つのこと
要点:一つは、責任感を「辞めない理由」にしなくてよいということ。もう一つは、一人で背負うことと、責任を果たすことは違うということです。
1. 責任感は、辞めない理由にしなくていい
「自分が抜けたら園が回らない」と思うと、辞めることも、役割を降りることも、できなくなります。けれども、職員の配置を考えるのは園と法人の役割です。あなたが抜けたあとの体制を整えるのは、あなたの責任ではありません。引き継ぎを丁寧に行う、時期を選ぶといった、できることをしたうえでなら、働き方を変えることに後ろめたさを感じなくてよいのです。役職そのものを降りたいときは、主任を辞めたい・一般職に戻りたいときの伝え方も参考にしてください。
2. 一人で背負うことと、責任を果たすことは違う
責任を果たすとは、子どもの安全のためにやるべきことをやり、気づいたことを伝え、判断すべき人に判断してもらうことです。すべてを一人で背負い、自分の判断で何とかし続けることではありません。報告し、相談し、ほかの人の力を借りることも、立派な責任の果たし方です。
責任の重さを人に話すと、「弱い」と思われそうで怖いかもしれません。ほいくの相談室では、転職するかどうかを決めていない段階でも、責任の線をどこに引くか、園長にどう伝えるかを一緒に考える相談を受けています。10年目以降の働き方全体を見直したい人は、ベテラン保育士が辞めたいときの働き方の変え方もあわせて読んでみてください。
よくある質問
保育中に事故が起きたら、担当の保育士がすべての責任を負うのですか?
責任の所在は、事故の状況や園の体制などの個別の事情によって判断されるため、一概には言えません。ただ、事故防止の手順や職員の配置を整えるのは園や法人の役割です。不安が強いときは、園の事故防止の手順を確かめ、足りないと感じる点を園長に伝えておくことが、自分を守ることにもつながります。
人手が足りないのに、園長が対応してくれません。
足りない日の人数と、その日に起きたことを記録し、事実・影響・提案の形で書面にして園長に伝えてください。それでも改善されず、長時間労働などの労働条件に問題があるときは、総合労働相談コーナーで無料で相談できます[10]。
責任のある立場を断ったら、評価が下がりますか?
断った理由や伝え方によって受け止め方は変わります。家庭の事情や体調など、理由を具体的に伝え、今の立場でできることを添えると、前向きな相談として受け止められやすくなります。
園長と職員の間で、どちらの味方をすればいいか分かりません。
どちらかの味方になる必要はありません。園長の決定は決めた人と理由を主語にして伝え、職員の声は事実・影響・提案の形で園長に届ける。伝える役目に徹すると、両方から責められる場面が減っていきます。
保護者の要求に応えきれず、自分を責めてしまいます。
保護者の要求にどこまで応じるかを決めるのは、園の役割です。2026年10月からは、行き過ぎた要求などのカスタマーハラスメントへの対策も事業主の義務になりました[4]。一人で抱えず、内容を記録して園長に伝えてください。
責任の重さから、転職を考えるのは無責任でしょうか?
無責任ではありません。責任を果たせる形で働きたいと考えるのは、むしろ責任感があるからこそです。今の園で線を引き直しても変わらない部分が残るなら、法人内の異動や転職で、責任の範囲がはっきりした職場を選ぶことも一つの道です。
参考にした資料
- こども家庭庁「令和7年教育・保育施設等における事故報告集計」
- こども家庭庁「事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」
- 厚生労働省 職場のハラスメント対策リーフレット
- 厚生労働省 職場のハラスメント対策リーフレット
- 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第33条第2項
- こども家庭庁「基礎資料(保育提供体制の強化(職員配置基準の改善等))」令和8年3月版
- こども家庭庁「基礎資料(保育提供体制の強化(職員配置基準の改善等))」令和8年3月版
- こころの耳「働く人の『こころの耳電話相談』」
- こころの耳「働く人の『こころの耳SNS相談』」
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」電話相談
※制度や数値は記事の更新時点で公的機関の資料により確認しています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。