保育士の退職手続きチェックリスト|円満に辞める注意点

退職の意思を固めた日の夜、スマートフォンのメモ帳に「園長に言う」「退職届」「有給」「保険証」「年金」と打ち込んで、そこで指が止まる。何から手をつければいいのか、どれに期限があるのか、誰に聞けばいいのかが分からない。保育士の方から退職の相談を受けていると、こうした「やることは何となく分かるのに、順番が分からない」という話をよく聞きます。

保育の仕事の退職は、ほかの仕事よりも気をつかう場面が多くあります。担任をしているクラスの子どもたち、毎朝顔を合わせる保護者、少ない人数でシフトを回している同僚。手続きの抜けや伝え方の行き違いが、そのまま「円満に辞められなかった」という後味の悪さにつながりやすいのです。

この記事では、退職を決めてから、退職後の健康保険・年金の切り替えまでを、時期ごとのチェックリストにまとめました。全部を一度に覚える必要はありません。今の自分がどの段階にいるかを確かめて、そこから一つずつ進めてください。

この記事でわかること

  • 保育士の退職手続きの全体像と、時期ごとの順番
  • 退職前・最終出勤日・退職後の3段階のチェックリスト
  • 園に返すもの、園から受け取る書類の一覧
  • 保育園ならではの、円満に辞めるための注意点

結論

保育士の退職手続きは、「退職前(就業規則の確認・園長への申し出・退職届・引き継ぎ・有給休暇の調整)」「最終出勤日まで(返却物と受け取る書類の確認)」「退職後(健康保険・年金・失業保険・住民税)」の3段階に分けると漏れを防げます。法律上、期間の定めのない雇用は申し入れから2週間で終了しますが[1]、担任の引き継ぎや後任探しを考えると、就業規則の期限を確かめたうえで2〜3か月前に園長へ口頭で伝えるのが、円満に進めやすい目安です。退職後の健康保険と年金には14日・20日といった期限があるため[2][3]、退職前のうちに選び方を決めておくと慌てずに済みます。

01退職手続きの全体像:3つの段階で考える

要点:退職手続きは「園の中で済ませること」「最終日に受け渡すこと」「退職後に役所などで済ませること」の3つに分かれます。段階ごとに相手と期限が違うため、分けて管理すると抜けが出にくくなります。

退職手続きというと、退職届を出すことだけを思い浮かべる人が少なくありません。実際には、園長との話し合い、引き継ぎ、有給休暇の調整といった「園の中」のことと、健康保険や年金の切り替えといった「園の外」のことがあり、それぞれ相手も期限も違います。

園の中のことは、相手が園長や法人なので、多少の前後は話し合いで調整できます。一方で、退職後の公的な手続きには法令で決まった期限があり、過ぎると困るのは自分です。この違いを知っておくだけで、どこに力を入れればいいかが見えてきます。

図1

  1. 12月〜1月就業規則で申し出の期限を確認し、園長に面談をお願いして退職の意思を伝える
  2. 1月退職日を話し合って決め、退職届(または退職願)を提出する
  3. 1月〜2月引き継ぎ資料をつくり、有給休暇の残日数から最終出勤日を決める
  4. 2月〜3月子どもや保護者への伝え方とタイミングを園と相談する
  5. 最終出勤日借りていた物を返し、受け取る書類と受け取り方を確認する
  6. 退職日の翌日から14日以内会社員等にならない場合は、国民健康保険と国民年金の手続きをする[4][3]
  7. 退職日の翌日から20日以内任意継続を選ぶ場合は、協会けんぽの支部へ申出書を出す[2]
  8. 退職後離職票が届いたらハローワークへ。住民税の納め方を確認する
図1 3月末に退職する場合の手続きの流れ(例)

この流れはあくまで一つの例です。年度途中の退職なら、全体を1〜2か月に縮めて進めることになります。退職する時期そのものに迷っているなら、先に退職時期と退職日の決め方を読んでおくと、このあとのチェックリストが使いやすくなります。

02【退職前】園の中で済ませる8つのこと

要点:退職前にやることは、就業規則の確認から始まり、申し出、退職日の決定、退職届、引き継ぎ、有給休暇の調整へと進みます。最初の「就業規則の確認」を飛ばさないことが、あとで揉めないための土台になります。

図2

  • 就業規則の退職に関する条文を読んだ申し出の期限(1か月前、3か月前など)、提出先、書式の決まりが書かれています
  • 退職金・賞与の規程を確認した支給の条件や基準日によって、退職日の選び方が変わることがあります
  • 有給休暇の残日数を確かめた給与明細や勤怠システムで確認し、最終出勤日の計算に使います
  • 園長に面談の時間をお願いした立ち話やLINEではなく、落ち着いて話せる時間と場所を用意してもらいます
  • 退職の意思と希望の退職日を伝えた理由より先に、結論と日付を伝えるほうが話が進みます
  • 退職日について園と合意した合意した日付と、その場にいた人をメモに残しておきます
  • 退職届(退職願)を提出した園に決まった書式があればそれを使い、控えを手元に残します
  • 引き継ぎ資料をつくり始めた子ども一人ひとりの配慮事項、保護者対応の経緯、行事の準備状況をまとめます
図2 退職前のチェックリスト

申し出は「口頭が先、書面があと」

退職の申し出は、まず園長に口頭で伝え、退職日を話し合ってから書面を出す順番が、保育園ではもっとも角が立ちにくい進め方です。いきなり退職届を机に置くと、相手は「相談もなく決められた」と受け取りやすく、その後の引き継ぎの話し合いがぎくしゃくします。

法律上は、期間の定めのない雇用であれば、申し入れから2週間がたつと雇用は終わります[1]。厚生労働省の解説でも、会社が承諾しなくても申し入れから2週間後に退職の効力が生じるとされています[5]。ただ、この2週間は最低限の線です。担任の交代や後任の採用には時間がかかるため、就業規則に書かれた期限を守り、そのうえで余裕をもって伝えるほうが、結果的に自分も気持ちよく辞められます。何か月前に伝えるかの考え方は退職は何か月前に伝えるか、切り出し方や退職理由の伝え方は退職の伝え方と例文で詳しく紹介しています。

退職願と退職届は、性質が違う

書面には「退職願」と「退職届」があります。退職願は「辞めさせてほしい」という合意退職の申し込みで、園の承諾が届く前なら撤回できます。退職届は「辞めます」という意思表示で、園に届いた時点で効力が生じ、撤回できないとされています[6]。迷いが少しでも残っているうちは、退職届を急がないでください。園に指定の書式がある場合は、その書式に従います。

引き継ぎは「人に渡せる形」で残す

保育の引き継ぎで抜けやすいのは、記録に残っていない情報です。たとえば「午睡のときは背中をとんとんすると落ち着く」「お迎えが祖母の日は、連絡帳の返事が翌日になる」といった、担任の頭の中にだけある細かなことです。退職の2〜4週間前からは、クラスの子ども一人ずつについてA4半分程度のメモをつくり、アレルギーや配慮事項、保護者とのやりとりの経緯を書き出しておくと、後任の先生が困りません。月案や週案、行事の準備物の置き場所も、一覧にしておくと喜ばれます。

有給休暇は、退職日から逆算する

年次有給休暇は、勤続6か月で10日、その後は勤続年数に応じて増え、6年6か月以上で20日が付与されます[7]。年休の権利は退職日で消えるため、残っている分を使い切りたいなら、退職日から残日数をさかのぼって最終出勤日を決めます。退職前に残りの年休をすべて取りたいと申請された場合、使用者は時季を変更する権利を使えないとされています[8]。具体的な組み方は退職時の有給消化と最終出勤日の決め方を参考にしてください。

03【最終出勤日まで】返すもの・受け取るものを一覧にする

要点:最終出勤日には、園から借りていた物を返し、退職後の手続きに使う書類をいつ受け取れるかを確認します。返すものは当日までにそろえ、受け取るものは「何を・いつ・どうやって」を園の担当者と決めておきます。

図3

種類園に返すもの園から受け取るもの
健康保険園から渡された資格確認書など退職日が確認できる書類(年金などの手続きで求められることがある)
仕事の道具鍵、IDカード、ロッカーの鍵、名札、制服やエプロン私物として持ち込んだ教材、楽譜、エプロン
書類・データ指導計画、児童票の写し、園の写真や動画のデータ退職証明書(請求した場合)
お金に関するもの立て替え精算の残り、園の物品購入用のカード源泉徴収票、最後の給与明細
雇用保険とくになし離職票(退職後に郵送、または条件を満たせばマイナポータルで受け取る)
図3 最終出勤日までに確認する「返すもの」と「受け取るもの」

退職証明書は、退職する人が請求すれば、園は遅滞なく交付しなければならず、請求していない事項を書いてはいけないと定められています[9]。同じ条文の続きでは、退職時に本人が請求すれば、7日以内に賃金を支払い、積立金などの本人の金品を返すことも定められています[9]。源泉徴収票は、年の途中で退職した場合、退職の日以後1か月以内に交付されることになっています[10]。次の職場で年末調整を受けるときや、確定申告をするときに必要になるので、届いたら保管しておきましょう。国民年金の手続きでは、退職日が確認できる書類(離職票など)を求められる場合があります[3]。

離職票は、2025年1月20日から、マイナンバーのハローワーク登録などの条件を満たせば、マイナポータルで直接受け取れるようになりました[11]。条件を満たさない場合は、これまでどおり園(事業所)から送られてきます。また、事業所が「離職票交付なし」で届け出ると発行されないため[11]、失業保険を受け取る可能性がある人は、最終出勤日までに「離職票が必要です」と担当者に伝えておくと安心です。

私物と園の備品の境目を、早めに確かめる

保育士の退職で意外と手間取るのが、私物と園の物の仕分けです。自分のお金で買った製作の材料、自作のペープサートやパネルシアター、壁面の型紙などは、園で使っているうちに境目があいまいになりがちです。持ち帰ってよいものかどうかは、最終日の1か月前までに園長や主任に確認しておくと、最終日にもめずに済みます。園の写真や子どもの写った動画を個人のスマートフォンに保存している場合は、必ず削除してください。

04【退職後】期限のある手続きは「14日」と「20日」

要点:退職後すぐに次の職場で働かない場合は、健康保険と年金を自分で切り替える必要があります。国民健康保険と国民年金は14日以内、協会けんぽの任意継続は20日以内が期限です。

図4

  • 退職日の翌日以降、園の健康保険を使っていない資格を失った後に使うと、協会けんぽが負担した医療費(総医療費の7〜9割)を返すことになります[12]
  • 健康保険をどれにするか決めた任意継続、国民健康保険、家族の扶養のどれかを選びます
  • 任意継続なら20日以内に申し出た退職日の翌日から20日以内に、住所地の協会けんぽ支部へ申出書を出します(期限内必着)[2]
  • 国民健康保険なら14日以内に届け出た資格を取得してから14日以内に、住所地の市区町村へ届け出ます[4]
  • 国民年金の第1号被保険者の手続きをした退職日の翌日から14日以内に、市区役所・町村役場で届け出ます[3]
  • 扶養していた配偶者の年金手続きをした第3号被保険者だった配偶者も、第1号被保険者の手続きが必要です[13]
  • 離職票を受け取り、ハローワークへ行った失業保険(基本手当)を受け取るための手続きが始まります
  • 住民税の納め方を確認した退職した時期によって、まとめて引かれるか、自分で納めるかが変わります[14]
図4 退職後のチェックリスト(すぐに次の職場に入らない場合)

健康保険には三つの選び方があります。協会けんぽの任意継続は、退職日までに継続して2か月以上加入していたことが条件で、加入できるのは最長2年です[2]。保険料は全額自己負担になり、2026年度の標準報酬月額の上限は32万円とされています[15]。国民健康保険は、資格を取得したときに14日以内に市区町村へ届け出ます[4]。家族の健康保険の扶養に入るには、年間収入の見込みが130万円未満であることなどの条件があります[16]。どれが合うかは家計や今後の働き方で変わるので、比べ方は退職後の健康保険と年金の手続きで詳しく説明しています。

失業保険(雇用保険の基本手当)は、離職票を持ってハローワークで手続きします。正当な理由のない自己都合退職の場合、給付制限は、離職日が2025年4月1日以降なら原則1か月です[17]。以前の「2か月」という情報のまま計画を立てないよう注意してください。受け取れる条件や、会社都合との違いは失業保険の受け取り方と会社都合・自己都合の違いにまとめています。

住民税は、給与から天引き(特別徴収)されている人の場合、6月1日から12月31日までに退職すると、残りの税額は自分で納める方法(普通徴収)に切り替わり、希望した場合だけ最後の給与や退職金からまとめて引いてもらえます。1月1日から4月30日までに退職した場合は、5月31日までに支払われる給与や退職金から、残りの税額がまとめて引かれます[14]。3月末に退職する保育士は後者に当たることが多いので、最後の給与の手取りが少なく見えても慌てないでください。

05円満に辞めるために、保育園で気をつけたい5つのこと

要点:手続きを順番どおりに済ませることに加えて、「誰に、どの順で伝えるか」「子どもと保護者にどう伝えるか」を園と足並みをそろえることが、円満な退職につながります。

図5

  • 1

    最初に伝えるのは園長

    仲のよい同僚や主任に先に話すと、園長の耳に別の形で届くことがあります

  • 2

    行事の直前は避ける

    運動会や発表会の準備が山場の時期は、相手も落ち着いて話を聞けません

  • 3

    子ども・保護者への公表は園に合わせる

    伝える時期と方法は園の判断に合わせ、自分から先に話さないようにします

  • 4

    引き継ぎは文書で残す

    口頭だけの引き継ぎは抜けやすく、退職後に問い合わせが来る原因になります

  • 5

    最終日まで普段どおりに

    最後の週の過ごし方は、同僚の記憶に長く残ります

図5 保育士が円満に退職するための5つの注意点

「誰に先に話すか」で印象が変わる

保育園は職員どうしの距離が近い職場です。退職を考えていることを仲のよい同僚に打ち明けると、悪気がなくても話が広がり、園長が人づてに知ることがあります。そうなると、園長との最初の面談が「なぜ先に言ってくれなかったのか」という話から始まってしまいます。同僚に話すのは、園長と退職日を合意してからにすると、余計な誤解を生みません。

子どもと保護者への伝え方は、園と一緒に決める

担任が替わることは、子どもにとっても保護者にとっても大きな出来事です。いつ、誰が、どのような形で伝えるかは、園の方針に合わせるのが基本です。おたよりで知らせる園もあれば、年度末の懇談会で園長から伝える園もあります。自分の判断で一部の保護者に先に話すと、保護者どうしの間で情報の差が生まれ、園が対応に困ることがあります。子どもたちへの伝え方も、年齢に合わせて園長や後任の先生と相談しておくと、最後の日を落ち着いて迎えられます。

「円満」を理由に、無理を重ねない

一方で、円満を意識しすぎて、退職日を何度も先延ばしにされたり、有給休暇をすべてあきらめたりする必要はありません。円満とは、自分が我慢し続けることではなく、園と自分の両方が納得できる形で区切りをつけることです。引き継ぎに協力する姿勢を見せたうえで、譲れない日付は譲らない。その線引きが、結果的に双方にとっての円満になります。

06相談事例:やることリスト38項目を、3つに分けた

要点:手続きを時期ごとに整理したことで、退職日の直前に慌てずに済んだモデルケースです。何に気づき、どう進めたかに注目してください。

「手続きが怖い」から「あと何が残っているか分かる」へ

相談事例(モデルケース)

お名前
しおりさん(仮名)・34歳
保育士歴
11年目(相談当時)
勤務先
社会福祉法人の認可保育園(定員約80名)、1歳児クラス担任(2人担任)
退職理由
夫の転勤に伴う転居
変化
最終出勤日2週間前の「未完了のやること」 把握できず → 3項目のみ

編集部退職が決まったとき、何がいちばん不安でしたか。

しおりさん

転居が決まったのが10月で、3月末で辞めることになったんですけど、何をいつまでにやればいいのか全然分からなくて。前の園を辞めたのは10年近く前で、そのときは実家暮らしだったので、保険も年金も親任せだったんです。

編集部どうやって整理したのですか。

しおりさん

思いつくことを全部ノートに書き出したら38項目ありました。それを「園の中」「最終日」「退職後」の3つに分けて、期限が決まっているものに赤丸をつけたんです。赤丸は6つだけでした。全部が同じ重さじゃないって分かって、そこで少し肩の力が抜けました。

編集部園への伝え方で気をつけたことはありますか。

しおりさん

一緒に担任をしている先輩には、どうしても先に言いたかったんです。でも、園長に話して退職日が決まるまでは我慢しました。保護者へのお知らせも、2月のクラス懇談会で園長から話してもらう形にしてもらって。自分から言わなくていいと決まったら、送迎のときに変に緊張しなくなりました。

編集部実際に進めてみて、意外だったことは。

しおりさん

返すものの多さですね。鍵、名札、エプロン3枚、園の絵本が2冊。それに、私物だと思っていたペープサートの材料が、実は園の備品だったり。最終日の1か月前に一覧にしておいて本当によかったです。健康保険は夫の扶養に入るつもりだったので、夫の会社の手続きに何が必要かを先に聞いておきました。

全部を一気にやろうとしていたから怖かったんだと思います。分けてみたら、今日やることは一つでした。

しおりさん(仮名)

しおりさんは、引き継ぎ資料として1歳児12人分の個別メモをつくり、3月の第2週に後任の先生へ渡しました。有給休暇は残っていた14日のうち10日を3月後半に使い、最終出勤日の2週間前には「未完了」の項目が3つだけになっていたそうです。残った3つは、離職票の受け取り、夫の扶養に入る手続き、転居先での住所変更で、いずれも退職後にしかできないものでした。

このケースから持ち帰れるのは、手続きを「期限が決まっているもの」と「話し合いで決めるもの」に分けるという考え方です。期限が決まっているものは数が少なく、先に把握すれば怖くありません。話し合いで決めるものは、園と順番をそろえることで、気まずさを減らせます。

※相談で多く寄せられる状況をもとに再構成したモデルケースです。特定の個人ではなく、数値は一例です。

07手続きを進める前に、知っておいてほしい2つのこと

要点:一つは、法律の「2週間」は、追い詰められないための知識として持っておけばよいということ。もう一つは、心や体が限界に近いときは、手続きの順番よりも自分を守ることを優先してよいということです。

1. 「2週間」は、知っているだけで落ち着ける

退職の話し合いがこじれると、「後任が見つかるまでは辞めさせられない」「年度末まで待ってほしい」と言われることがあります。そのときに、期間の定めのない雇用なら申し入れから2週間で雇用が終わるという法律の考え方を知っていると[1]、必要以上に追い詰められずに済みます。ただし、この知識は相手を言い負かすためではなく、自分が冷静でいるためのものです。話し合いで解決しないときは、都道府県労働局や労働基準監督署などにある総合労働相談コーナーで、無料・予約不要で相談できます[18]。

有期契約(契約職員など)の場合は考え方が異なり、やむを得ない事由があれば直ちに契約を解除できる一方、その事由が自分の過失によって生じた場合は損害賠償の責任を負うとされています[19]。また、契約期間が1年を超える有期契約では、契約の初日から1年を過ぎれば、申し出ていつでも退職できます[20]。自分の契約がどちらに当たるかは、雇用契約書や労働条件通知書で確認できます。

2. 限界のときは、手続きの順番を守らなくていい

眠れない、食べられない、出勤前に涙が出るといった状態が続いているなら、引き継ぎを完璧にすることより、自分の体を守ることが先です。まず医療機関を受診し、必要なら休むことを考えてください。働く人の心の悩みは、厚生労働省の「こころの耳電話相談」(0120-565-455、平日17時〜22時、土日10時〜16時)でも相談できます[21]。

手続きの順番や伝え方に迷ったとき、一人で抱え込まずに話せる相手がいると、次の一歩が見えやすくなります。ほいくの相談室では、退職を決めた方の段取りの整理だけでなく、転職するかどうかをまだ決めていない段階の相談も受けています。

よくある質問

退職手続きは、何から始めればいいですか?

最初にやるのは、就業規則で退職の申し出期限と提出先を確認することです。そのうえで園長に面談の時間をお願いし、口頭で退職の意思と希望の退職日を伝えます。書類を出すのは、退職日について話し合ってからで構いません。

パートでも同じ手続きが必要ですか?

申し出、引き継ぎ、返却物、書類の受け取りといった流れは、パートでも基本的に同じです。健康保険や雇用保険に加入していたかどうかで、退職後の手続きが変わります。給与明細の控除欄を見ると、加入している保険が分かります。

退職日と最終出勤日は同じ日にしたほうがいいですか?

同じにする必要はありません。有給休暇を使い切る場合は、最終出勤日のあとに有給休暇の期間があり、その最後の日が退職日になります。退職日によって健康保険の切り替えや住民税の扱いが変わるので、日付は園と確認して記録しておきます。

次の園がすぐ決まっている場合、退職後の手続きは必要ですか?

退職日の翌日から次の職場で健康保険と厚生年金に加入する場合は、自分で国民健康保険や国民年金の手続きをする必要は基本的にありません。退職日と入職日の間に空白がある場合は、その期間の手続きが必要かどうかを確認してください。源泉徴収票は次の職場の年末調整で使うので、受け取ったら保管しておきます。

手続きの途中で、退職をやめたくなったらどうなりますか?

退職願の段階で、園の承諾がまだ届いていなければ撤回できる場合があります。退職届は園に届いた時点で効力が生じ、撤回できないとされています[6]。迷いがある場合は、書面を出す前に一度立ち止まってください。

参考にした資料

  1. e-Gov法令検索「民法」
  2. 協会けんぽ「任意継続」
  3. 日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」
  4. e-Gov法令検索「国民健康保険法施行規則」
  5. 確かめよう労働条件「退職、解雇、雇止めなど」(厚生労働省)
  6. スタートアップ労働条件Q&A(厚生労働省)
  7. 厚生労働省 FAQ「年次有給休暇とはどのような制度ですか…」
  8. 確かめよう労働条件「年次有給休暇」
  9. e-Gov法令検索「労働基準法」
  10. 国税庁 タックスアンサーNo.7411
  11. 厚生労働省リーフレット「離職票」のマイナポータル直接送付
  12. 協会けんぽ宮城支部「マイナ保険証や資格確認書の使用について」
  13. 日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」
  14. 東京都主税局「特別徴収にかかる手続きについて」
  15. 協会けんぽ「令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について」
  16. 日本年金機構「従業員が家族を被扶養者にするとき…」
  17. ハローワーク「よくあるご質問(雇用保険について)」
  18. 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
  19. e-Gov法令検索「民法」
  20. 確かめよう労働条件「退職、解雇、雇止めなど」(厚生労働省)
  21. こころの耳「働く人の『こころの耳電話相談』」

※制度や数値は記事の更新時点で公的機関の資料により確認しています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

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