保育士が辞めたいのに引き止められる|返し方と法律の考え方

「今あなたに抜けられたら、このクラスはどうなるの」。園長室のソファで、園長は身を乗り出してそう言いました。退職したいと伝えるために、何日も前から言葉を準備してきたのに、気づけば「……もう少し考えます」と答えていた。ドアを閉めた瞬間、自分が何をしに来たのか分からなくなりました。

保育士が退職を伝えると、引き止められることは珍しくありません。「後任が見つかるまで」「せめて年度末まで」「子どもたちがかわいそう」。どれも正面から否定しにくい言葉で、真面目な人ほど言い返せずに飲み込んでしまいます。そして、次に切り出すまでにまた何週間もかかり、そのあいだに疲れだけがたまっていきます。

この記事では、保育士が引き止められやすい理由を整理したうえで、よくある引き止めの言葉ごとに返し方の例を紹介します。あわせて、退職を認めてもらえないときに知っておきたい法律の考え方と、話し合いで解決しないときの相談先をまとめました。

この記事でわかること

  • 保育士が退職を引き止められやすい理由と、園の側の事情
  • 「後任が見つかるまで」「子どもがかわいそう」など、よくある引き止めの言葉と返し方の例
  • 退職を認めてもらえないときの法律の考え方(正社員・有期契約・退職届・有給休暇)
  • 引き止めを受けたときの進め方と、話し合いで解決しないときの相談先

結論

保育士が辞めたいのに引き止められても、退職するかどうかは本人が決められます。正社員など期間の定めのない雇用なら、退職の申入れから2週間で雇用は終了し、園が承諾しなくても効力が生じます[1]。引き止められたときは、①退職を「相談」ではなく「決めたこと」として伝える、②具体的な退職日を示す、③引き継ぎに協力する姿勢を見せる、④話し合いが平行線なら退職の意思を書面で出す、の順に進めると、関係をこじらせずに話を前に進めやすくなります。それでも認めてもらえないときは、総合労働相談コーナーなど、無料で相談できる公的な窓口があります[2]。

01保育士が引き止められやすいのには、理由がある

要点:保育士が強く引き止められるのは、人手不足が続いていること、国の基準で保育士の人数が決められていること、担任が途中で替わる影響が大きいことが重なっているからです。引き止めの多くは、あなた個人への評価というより、園の事情から来ています。

2026年7月の保育士の有効求人倍率は全国で2.80倍で、全職種平均の1.15倍を大きく上回っています[3]。園にとって、保育士を一人採用するのは簡単なことではありません。一人が辞めると、次の人が見つかるまでに数か月かかることもあり、そのあいだのシフトをどう回すかが園長の頭を悩ませます。

さらに保育所では、乳児はおおむね3人に1人以上、1〜2歳児はおおむね6人に1人以上というように、子どもの年齢ごとに必要な保育士の数が国の基準で決められています[4]。一人抜けることで基準を保つのが難しくなるなら、園長は何としても引き止めたいと考えます。担任であれば、子どもや保護者への説明、行事の担当の組み直しも必要になります。

引き止めは「あなたが必要」というサインでもある

引き止められると、申し訳なさや、認めてもらえない悔しさが入り混じった気持ちになるかもしれません。けれど、裏を返せば、それはあなたが園にとって必要な人だということでもあります。その気持ちには感謝してよいのです。ただし、必要とされていることと、あなたが続けるべきかどうかは、別の問題です。園の事情を理解することと、自分の決断を守ることは、両立できます。

引き止めが強くなりやすいタイミング

引き止めは、伝えるタイミングによっても強さが変わります。年度の途中、行事の直前、職員の退職が重なっている時期は、園の余裕がなく、引き止めが強くなりがちです。反対に、就業規則の期限より余裕をもって伝え、引き継ぎの案も添えて示すと、園も後任探しの時間を確保できるため、話が前に進みやすくなります。伝えるのが怖くて先延ばしにしてしまう人は、園長に辞めたいと言えないときの切り出し方も参考にしてください。

02よくある引き止めの言葉と、返し方の例

要点:引き止めの言葉には、それぞれ園の側の事情があります。事情を受け止めたうえで、「感謝」「決定」「日付」「協力」の4つを伝えると、相手を否定せずに、自分の決断を守る返し方になります。

図1

引き止めの言葉背景にあること返し方の例
「後任が見つかるまで待ってほしい」採用の見通しが立っていない「後任探しにはできる限り協力します。ただ、退職日は○月○日でお願いしたいです」
「せめて年度末まで」クラスの途中交代を避けたい「年度末まで勤めることも考えましたが、事情があり、○月末までが限界です」
「子どもたちがかわいそう」子どもへの影響を心配している「私も同じ気持ちです。だからこそ引き継ぎを丁寧にし、後任の先生と一緒に保育に入る時間をいただきたいです」
「どこに行っても同じだよ」辞めることを思いとどまらせたい「そうかもしれません。それでも、自分で考えて決めたことなので進めたいと思います」
「給料を上げる、クラスも変えるから」条件を変えて残ってほしい「ありがとうございます。ただ、気持ちはもう決まっています」
「今辞めたら、次の職場に響くよ」不安を感じさせて引き止めたい「ご心配ありがとうございます。次のことは自分で考えて決めています」
「退職届は受け取れない」退職を先延ばしにしたい「では、本日退職の意思をお伝えしたことを、記録に残させてください」
「辞めるなら損害賠償を請求する」強い言葉で思いとどまらせたい「その点は、専門の窓口に確認してからお返事します」
図1 よくある引き止めの言葉と、返し方の例

どの返し方にも共通しているのは、相手の言葉を否定していないことです。「子どもがかわいそう」と言われて「そんなことはありません」と言い返すと、話は感情のぶつかり合いになります。「私も同じ気持ちです」と受け止めたうえで、その気持ちを引き継ぎという行動に変える提案をすると、話し合いの向きが「辞めるかどうか」から「どう辞めるか」に変わります。

返し方の基本は「感謝」「決定」「日付」「協力」

引き止めにあったとき、その場で気のきいた返しを考えるのは難しいものです。あらかじめ、次の4つの要素を入れた言葉を準備しておくと、気持ちが揺れても軸がぶれにくくなります。

  1. 感謝:これまでお世話になったこと、引き止めてもらえることへのお礼を伝える
  2. 決定:「辞めようか迷っている」ではなく、「退職させていただきたい」と結論として伝える
  3. 日付:退職したい日を、具体的な日付で伝える
  4. 協力:引き継ぎや後任探しにできる範囲で協力することを伝える

例:引き止めていただいてありがとうございます。そう言っていただけるのは本当にありがたいです。ただ、退職の気持ちは決まっていて、11月30日で退職させていただきたいと考えています。それまでの間、引き継ぎの資料づくりや後任の先生への引き継ぎには、できる限り協力します。

条件の改善を提案されたら

給料を上げる、担当クラスを変える、行事の担当から外すなど、条件の改善を提案されることもあります。もし辞めたい理由がその条件そのものなら、残ることを考え直す価値はあります。ただし、その場で返事をするのは避け、「少し考えさせてください」と持ち帰ってください。残ることにする場合は、いつから、何が、どう変わるのかを具体的に確認し、できれば書面で受け取っておきましょう。口約束だけで残ると、年度が替わったときに話が元に戻ってしまうことがあります。

「損害賠償」と言われたら

「辞めるなら損害賠償を請求する」と言われると、怖くなって退職をあきらめてしまう人もいます。民法では、期間の定めのある契約をやむを得ない事由で解除した場合に、その事由が一方の過失によって生じたときは、相手方に対して損害賠償の責任を負うと定められていますが[5]、自分の状況がそれに当たるかどうかは、個別の事情によって変わります。その場で謝ったり、何かを約束したりせず、総合労働相談コーナーや弁護士に相談してから対応を決めてください。

03退職を認めてもらえないときの法律の考え方

要点:正社員など期間の定めのない雇用なら、退職に園の承諾は必要なく、申入れから2週間で雇用は終了します。有期契約、退職願と退職届の違い、有給休暇と最後の給料についても、基本のルールを知っておくと、話し合いで必要以上に追い詰められずに済みます。

正社員なら、承諾がなくても2週間で終了する

期間の定めのない雇用では、働く人はいつでも退職を申し入れることができ、雇用は申入れの日から2週間を経過すると終了します[6]。厚生労働省の解説でも、退職は2週間前までに申し入れればよく、会社が承諾しなくても申入れから2週間後に効力が生じるとしています[1]。「園長が認めないから辞められない」ということは、法律上はありません。

もちろん、実際には就業規則の申し出期限に合わせ、話し合いで退職日を決めるほうが、引き継ぎもしやすく、気持ちよく辞められます。法律のルールは、話し合いが平行線になったときの最後の支えとして覚えておいてください。

契約社員やパートなど、期間の定めがある場合

1年契約などの有期雇用では、契約期間の満了で退職するのが基本です。契約期間の途中でも、やむを得ない事由があれば直ちに契約を解除できます[5]。また、契約期間が1年を超える有期契約の場合は、契約の初日から1年が過ぎたあとなら、申し出ることでいつでも退職できます[7]。自分の契約期間は、雇用契約書や労働条件通知書で確認しておきましょう。

退職願と退職届は、性質が違う

引き止めが強いときほど、書面の性質を知っておくことが大切です。合意で退職するための申込み(退職願など)は、園の承諾が届くまでは撤回できますが、一方的な辞職の意思表示(退職届など)は、園に届いた時点で効力が生じ、撤回できないとされています[8]。実際にはこの二つが厳密に区別されずに使われることも多いとされますが、引き止めが続いて話が進まない場合は、退職の意思と退職日をはっきり書いた書面を出し、控えを手元に残しておくと、いつ意思を伝えたかが明確になります。手渡しを拒まれたときは、郵送など、届いたことが記録に残る方法も検討してください。

有給休暇と最後の給料

「辞めるなら有給は使わせない」と言われることもあります。年休は原則として働く人が指定した時季に与えるもので、退職前に残りの年休をすべて取得したいと申請された場合、使用者は時季を変更する権利を使えないとされています[9]。年休を取ったことを理由に不利益な扱いをすることも禁止されています[10]。消化の日程の組み方は退職前の有給消化の進め方で詳しく紹介しています。

また、退職した人から請求があれば、園は7日以内に賃金を支払い、積立金などを返さなければなりません。使用期間や業務の種類、退職の事由などを記した退職証明書も、請求すれば交付されます[11]。

ここで紹介している法律の情報は、一般的な内容です。雇用契約の内容や就業規則、これまでの経緯によって考え方が変わることがあります。自分のケースに当てはめて判断に迷うときは、総合労働相談コーナーや弁護士などの専門家に相談してください。

04引き止めを受けたときの進め方

要点:引き止めにあったら、その場で決着をつけようとしないことが大切です。準備して伝え、その場では新しい約束をせず、退職日を確認し、平行線なら書面に残す。この順番で進めると、感情的なこじれを防ぎながら前に進めます。

図2

  1. 準備する退職日、理由のひと言、引き継ぎの案をメモにまとめておく
  2. 決めたこととして伝える「相談」ではなく「退職させていただきたい」と結論から話す
  3. 引き止めを受け止める感謝は伝えつつ、その場で新しい約束はしない
  4. 退職日を確認する話し合いの最後に、退職日と次に話す日を確認する
  5. 書面に残す平行線なら、退職の意思と日付を書いた書面を出し、控えを残す
  6. 外部に相談するそれでも進まないときは、公的な窓口や専門家に相談する
図2 引き止められたときの進め方

伝える前に準備しておくこと

引き止めに飲まれやすい人ほど、事前の準備が効きます。話し合いの前に、次のことを確認しておきましょう。

図3

  • 退職したい日を、日付で決めている「そのうち」では、相手のペースで先延ばしにされやすいため
  • 就業規則の申し出期限を確認した園の決まりに沿って伝えていることを示せるため
  • 理由をひと言で言える理由を長く話すほど、一つずつ反論されやすくなるため
  • 引き継ぎの案を用意している「子どもがかわいそう」への具体的な答えになるため
  • 有給休暇の残り日数を数えた最終出勤日の相談を、同じ場で進められるため
  • その場で返事をしないと決めている条件の提案に流されて、気持ちと違う約束をしないため
図3 園長に伝える前に準備しておくこと

その場で返事をしない

引き止めの話し合いでは、園長から次々と言葉が出てきます。そのたびに答えようとすると、気づけば「年度末まで頑張ります」と約束してしまっていることがあります。条件の提案や、新しい退職日の打診には、「一度持ち帰って考えます」と答えるだけで十分です。その場で決めないことは、失礼ではありません。

話し合いの記録を残しておく

話し合いのたびに、日時、話した相手、言われた言葉、自分が伝えたことをメモしておきましょう。退職日がずるずると延びていくのを防げるうえ、外部の窓口に相談するときにも、そのまま状況を説明する材料になります。

05相談事例:「日付を決めていなかった」と気づいた

要点:ここでは、3回の話し合いでも引き止められ続けた人が、退職日を決めて書面で伝えたことで、話が動いたモデルケースを紹介します。

「相談」をやめて「日付」を伝えた日

相談事例(モデルケース)

お名前
じゅんさん(仮名)・32歳
保育士歴
10年目(相談当時)
勤務先
私立の認可保育園(定員約80名)、5歳児クラス担任
変化
退職日が決まらないまま 約4か月 → 書面を出してから 6週間で退職

編集部引き止めは、どんな様子でしたか。

じゅんさん

6月に、児童発達支援の仕事に移りたいと園長に話しました。最初は「年長の担任が途中で抜けるなんて」、次は「後任が見つかるまで待って」、3回目は「給料を上げるから考え直して」。そのたびに「分かりました、もう少し考えます」って言っちゃって。気づいたら10月でした。

編集部何がきっかけで、動けるようになったのですか。

じゅんさん

総合労働相談コーナーに電話してみたんです。退職のルールを一般的な話として教えてもらって、そのとき、ふと気づいたんですよね。僕、一度も「何月何日で辞めます」って言ってなかったんです。いつも「辞めたいと思っていて」って、相談の形で話していた。それじゃあ、引き止められて当然だなって。

編集部そこから、どう伝え方を変えましたか。

じゅんさん

退職日を11月30日に決めて、退職の意思と日付を書いた書面を用意しました。引き継ぎの予定表と、子ども一人ひとりの様子をまとめたシートの見本も持っていきました。「お世話になったので、引き継ぎは責任をもってやります。ただ、退職日はこの日でお願いします」って。声は震えてましたけど、言い切れました。

編集部園長の反応はどうでしたか。

じゅんさん

しばらく黙ってから、「分かった。じゃあ、引き継ぎの段取りを一緒に考えよう」って。拍子抜けするくらいあっさりでした。11月の半ばには後任の先生も決まって、2週間ほど並んで保育に入れました。有給も残っていた分のうち5日は使えました。

「辞めたいと思っていて」を「この日で辞めます」に言い換えただけで、話の向きががらっと変わりました。

じゅんさん(仮名)

じゅんさんは11月末で退職し、12月から児童発達支援の事業所で働いています。年長の子どもたちとは、最後の日にクラスで写真を撮り、卒園式には保護者の一人から招待状が届いたそうです。

このケースで大切なのは、じゅんさんが引き止めの言葉に反論したのではなく、伝え方を「相談」から「決定」に変えたことです。退職日という日付があり、引き継ぎの案が具体的だったからこそ、園長も「どう辞めてもらうか」の話に切り替えることができました。引き止めが続くときは、相手を変えようとするより、自分の伝え方に日付と書面を足してみてください。

※相談で多く寄せられる状況をもとに再構成したモデルケースです。特定の個人ではなく、数値は一例です。

06話し合いで解決しないときの相談先

要点:何度伝えても退職を認めてもらえない、有給休暇や給料について納得できない扱いを受けているといったときは、一人で抱えずに外部の窓口を使ってください。無料で利用でき、利用したことを理由に不利益な扱いを受けない仕組みもあります。

図4

  • 1

    総合労働相談コーナー

    各都道府県労働局や労働基準監督署など全国378か所。退職やいじめ・嫌がらせなど、あらゆる労働問題を無料・予約不要で面談か電話で相談できる[2]

  • 2

    助言・指導とあっせん

    個別労働紛争解決制度として、労働局長による助言・指導や紛争調整委員会によるあっせんを無料で利用でき、利用を理由とする不利益な取扱いは禁止されている[12]

  • 3

    労働条件相談ほっとライン

    0120-811-610。平日17時〜22時、土日祝9時〜21時。無料・匿名で、労働条件についての相談ができる[13]

  • 4

    弁護士

    損害賠償を求められた、未払いの賃金がある、代わりに交渉してほしいなど、法律上の交渉や判断が必要なとき

図4 引き止めで困ったときの主な相談先

労働の相談窓口の違いや選び方は、保育士が使える労働条件の相談窓口で詳しくまとめています。

退職代行を考える前に知っておきたいこと

引き止めが続くと、退職代行サービスを使うことを考える人もいるでしょう。ただし、弁護士や弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で法律事件について代理や交渉などの法律事務を行うことはできません[14]。東京弁護士会は2025年10月22日、退職代行業者が残業代やパワハラの慰謝料、退職金、有給休暇などについて本人に代わって会社と交渉することなどを、弁護士法に違反する事例として示し、注意を呼びかけています[15]。有給休暇の取得や未払いの賃金など、交渉が必要な問題があるなら、弁護士に相談するほうが確実です。退職代行を使うかどうかの考え方は、保育士が退職代行を使うべきか迷うときも参考にしてください。

引き止めにハラスメントが伴うとき

「辞めるなんて言うなら、残りの期間は覚悟しておいて」と言われる、退職を伝えてから無視される、行事の担当を一方的に増やされる。こうした扱いを受けているなら、それは引き止めの範囲を超えています。職場のパワーハラスメントは、優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動で、働く環境が害されるものとされています[16]。事業主にはハラスメントの相談に応じる体制を整える義務があり、相談したことを理由とする不利益な取扱いは禁止されています[17]。日時と言われた言葉を記録し、早めに外部の窓口につながってください。

07引き止めに応じる前に、考えておきたいこと

要点:引き止めに応じて残ることも、ひとつの選択です。ただ、残るなら条件を具体的に確かめること、辞めるなら気持ちが揺れたまま書面を出さないこと。この二つは、どちらを選ぶ場合も守ってほしいことです。

1. 残るなら「何が、いつ、どう変わるか」を確かめる

引き止めの中で示された条件が本当に実現するなら、残ることで辞めたい理由がなくなる場合もあります。その場合は、変わる内容と時期を具体的に確認し、3か月後など、見直す時期を自分の中で決めておきましょう。約束が守られなかったときに、もう一度退職を考えるための区切りになります。引き止められて残ったことを、自分の負けだと思う必要はありません。

2. 揺れている気持ちのまま、退職届を出さない

引き止めに対抗しようとして、気持ちが固まりきらないうちに退職届を出してしまうと、あとで後悔することがあります。辞職の意思表示は園に届いた時点で効力が生じ、撤回できないとされています[8]。書面を出すのは、退職日と次の一歩がはっきりしてからにしてください。

引き止められて迷いが出てきたときは、そもそも辞めたい理由が何だったのかに立ち返ると、ぶれにくくなります。判断の軸は保育士を辞めるべきか迷うときの判断基準で整理できます。伝え方や返し方を誰かと練習しておきたいときは、ほいくの相談室にも相談してみてください。辞めると決めきれていない段階でも、引き止めにどう向き合うかから一緒に考えています。

よくある質問

引き止められて「もう少し考えます」と言ってしまいました。どうすればいいですか?

気にしすぎる必要はありません。改めて面談の時間をお願いし、「考えた結果、やはり退職させていただきたいです。退職日は○月○日を希望します」と、日付を入れて伝え直しましょう。前回よりも具体的に伝えることで、話が前に進みやすくなります。

退職届を受け取ってもらえません。

期間の定めのない雇用なら、退職は園の承諾がなくても、申入れから2週間後に効力が生じます[1]。手渡しを拒まれたら、提出しようとした日付を記録し、郵送など届いたことが記録に残る方法を検討してください。不安なときは、総合労働相談コーナーに相談できます[2]。

「有給は使わせない」と言われました。

年休は原則として働く人が指定した時季に取るもので、退職前にまとめて取得したいと申請された場合、使用者は時季を変更する権利を使えないとされています[9]。話し合いで解決しないときは、労働条件相談「ほっとライン」などで相談してみてください[13]。

引き止めがつらくて、退職代行を使おうか迷っています。

退職の意思を伝えること自体を代わりに頼みたいのか、有給休暇や未払いの賃金について交渉してほしいのかで、相談先が変わります。交渉が必要な場合は、弁護士でない業者が代わりに交渉することは弁護士法に違反するおそれがあると注意喚起されています[15]。まずは公的な窓口で状況を整理してみるのも一つの方法です。

引き止められたことで、退職まで気まずくなりそうで不安です。

引き止めは園の事情から来ていることが多く、退職日が決まれば落ち着くこともよくあります。引き継ぎを丁寧に進め、最後の日まで普段どおりに子どもと関わることで、気まずさは少しずつ薄れていきます。

参考にした資料

  1. 確かめよう労働条件「退職、解雇、雇止めなど」(厚生労働省)
  2. 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
  3. こども家庭庁「保育士有効求人倍率(R8.7)」(出典:厚労省 職業安定業務統計)
  4. 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第33条第2項
  5. e-Gov法令検索「民法」
  6. e-Gov法令検索「民法」
  7. 確かめよう労働条件「退職、解雇、雇止めなど」(厚生労働省)
  8. スタートアップ労働条件Q&A(厚生労働省)
  9. 確かめよう労働条件「年次有給休暇」
  10. 確かめよう労働条件「年次有給休暇」
  11. e-Gov法令検索「労働基準法」
  12. 厚生労働省「個別労働紛争解決制度」
  13. 確かめよう労働条件「労働条件相談ほっとライン」
  14. e-Gov法令検索「弁護士法」
  15. 東京弁護士会「退職代行サービスと弁護士法違反に関する注意喚起」
  16. 厚生労働省 パワーハラスメント対策リーフレット
  17. 厚生労働省 職場のハラスメント対策リーフレット

※制度や数値は記事の更新時点で公的機関の資料により確認しています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

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