2月の個人面談で、園長から「来年度は幼児クラスのリーダーをお願いしたいの。運動会の責任者と、新人さんの指導もね」と言われた。その場では「はい」と答えたものの、帰りの電車で指を折って数えてみると、保育士になってもう5年。後輩が増え、実習生の指導も任されるようになり、気づけば自分のクラスの子どもと向き合う時間より、誰かの調整をしている時間のほうが長くなっていた。
「辞めるなら、今なのかもしれない」。そう思ってスマートフォンで「保育士 辞めたい 何年目」と調べる。みんなは何年目で辞めているのか。自分のタイミングは早すぎるのか、遅すぎるのか。年数で答えが出るなら、そのほうが楽だとさえ思えてきます。
この記事では、まず「何年目で辞める人が多いのか」について、公的なデータで分かることと分からないことを正直に整理します。そのうえで、年数ごとに変わる迷いの中身と、勤続年数で変わる制度の節目を並べ、特に役割が一気に増える5年目前後の判断の仕方をまとめました。
この記事でわかること
- 何年目で辞める人が多いのかについて、公的なデータで分かることと分からないこと
- 1年目から10年目以降まで、年数ごとに出やすい迷いの特徴
- 有給休暇、宿舎借り上げ、修学資金など、勤続年数で変わる制度の節目
- 5年目前後で、辞める・続ける・環境を変えるを判断するための考え方
結論
保育士が何年目で辞めることが多いかを、勤続年数別に示した全国の公的な統計は、このサイトが確認できた範囲では見当たりません。全体の数字としては、保育所の常勤保育士の離職率が9.3%(平成29年の調査)というデータがあります[1]。現場でよく聞かれるのは、1年目は仕事に慣れることと適性への不安、2〜3年目は人間関係や園のやり方への違和感、4〜6年目は任される役割の増加と待遇・制度の節目、10年目前後は体力や家庭との両立が、辞めたい気持ちのきっかけになりやすいということです。特に5年目前後は、担任・行事・後輩指導をひと通り経験して選択肢が広がる一方で、負担も増える時期です。年数で決めるのではなく、増えた役割が自分の望む方向と合っているかで判断してください。
01何年目で辞める人が多いのか:公的なデータで分かること
要点:勤続年数別に「何年目で辞める人がいちばん多いか」を示した全国の公的な統計は、確認できる範囲では見当たりません。分かるのは、保育士全体の離職率や、辞めたいと考える人の割合といった全体像です。
検索すると「○年目で辞める人が多い」という情報を見かけることがあります。ただ、その中には、誰を対象にいつ調べたのかがはっきりしないものも含まれています。数字を見るときは、調査した機関、調査の時期、対象者の3つを確かめる習慣をつけておくと、振り回されずに済みます。
公的な資料で確認できる数字としては、まず離職率があります。保育所で働く常勤保育士の離職率は9.3%で、公営では5.9%、私営では10.7%でした[1]。ただし、これは平成29年10月時点の勤務者に対する、その前の1年間の退職者の割合で、最新の数字ではありません。また、何年目の人が辞めたのかまでは分かりません。
もう一つ、東京都が令和4年度に行った保育士実態調査では、現在保育士として働いている人のうち19.4%が「保育士を辞め、保育士以外の職種で働きたい」と答えています[2]。年数に関係なく、辞めたい気持ちを抱えながら働いている人が一定の割合でいることが分かります。
資格を持ちながら、施設で働いていない人も多い
こども家庭庁の資料では、2024年10月1日時点で保育士登録者は約190.5万人、そのうち社会福祉施設等で働いている保育士は約67.5万人とされています[3]。施設で働いていないとされる約123.0万人には、認可外保育施設や幼稚園で働く人、亡くなった人の届出が出ていない分なども含まれるため、全員が保育の仕事を辞めたわけではありません[3]。それでも、資格を取ったあと、どこかの時点で保育所などの現場を離れた人が少なくないことはうかがえます。
つまり、「何年目で辞めるのが普通か」という正解はありません。そこでこの記事では、年数ごとの迷いの中身と、勤続年数によって変わる制度の節目という2つの角度から、自分のタイミングを考える材料をそろえていきます。
02年数ごとに変わる「辞めたい」の中身
要点:同じ「辞めたい」でも、1年目と5年目、10年目では中身が違います。今の自分の迷いがどの段階のものかを知ると、取るべき一手が見えやすくなります。
図1
- 1年目一日の流れを覚えるだけで精一杯。「向いていないのでは」という不安が強い
- 2〜3年目一通りできるようになり、人間関係や園のやり方への違和感がはっきりしてくる
- 4〜6年目リーダーや行事の責任者、後輩指導を任され、役割と待遇のバランスが気になる
- 7〜9年目主任候補として見られはじめ、管理の仕事に進むか現場に残るかで迷う
- 10年目以降体力の変化や家庭の事情が重なり、働き方そのものを見直したくなる
1年目:慣れない毎日と「向いていない」の不安
1年目は、朝の受け入れから午睡、おやつ、降園まで、一日の流れを体で覚える時期です。連絡帳の書き方ひとつにも園ごとの決まりがあり、先輩に確認しながら進めるだけで一日が終わります。この時期の「辞めたい」は、仕事そのものが嫌というより、慣れない環境での緊張と疲れから来ていることが多いものです。一方で、明らかなハラスメントや休憩がまったく取れない環境なら、1年目でも離れることを考えてよい理由になります。1年目ならではの悩みは保育士1年目で辞めたいときの考え方で詳しく扱っています。
2〜3年目:見えてくるものが増える時期
2〜3年目になると、仕事の流れは体に入り、余裕が出てきます。その余裕の分だけ、園の保育方針への疑問や、職員どうしの関係の偏りが目に入るようになります。他園で働く同期の話を聞いて、「うちの園は書類が多すぎるのでは」と比べはじめるのもこの時期です。比べられるようになったこと自体は、成長の証でもあります。3年目前後の迷いについては保育士3年目で辞めたいときの判断も参考にしてください。
4〜6年目:任される仕事が一気に増える
4〜6年目は、担任に加えて、幼児クラスのリーダー、行事の責任者、新人や実習生の指導などを任されはじめる時期です。頼られるうれしさがある一方で、自分の保育に使える時間は減っていきます。この時期の迷いは「保育が嫌になった」ではなく、「今の役割の重さに、自分の気持ちや待遇が追いついていない」という形をとることが多いのが特徴です。次の見出しで詳しく見ていきます。
7〜9年目:現場に残るか、管理に進むか
7〜9年目になると、主任や副主任の候補として見られることが増えます。現場で子どもと関わり続けたい気持ちと、園全体を見る立場への期待とのあいだで揺れる時期です。どちらを選ぶかで、その先の働き方は大きく変わります。管理の道に進むなら、その役割に見合う待遇や研修の機会があるかを確認しておくことが欠かせません。
10年目以降:体力と暮らしの変化
10年目を過ぎると、経験に裏打ちされた自信がある一方で、乳児クラスの抱っこや運動会の準備で体力の衰えを感じる人も出てきます。子育てや親のことなど、家庭の事情が重なるのもこの時期です。働き方そのものを見直すきっかけとして、短時間勤務や園種の変更を考える人もいます。
035年目前後に迷いが強くなる4つの理由
要点:5年目前後は、任される役割、給料への納得感、制度の節目、暮らしの変化という4つが同時に動きやすい時期です。迷いが強くなるのは自然なことで、決して気持ちが弱いからではありません。
図2
- 1
任される仕事が増える
担任に加えて、リーダー、行事の責任者、新人や実習生の指導が回ってくる
- 2
給料と役割の釣り合い
仕事は増えたのに、給与明細はあまり変わらないと感じやすい
- 3
制度の節目が近づく
宿舎借り上げの対象期間や、修学資金の返還免除に必要な期間が5年前後で区切られている
- 4
暮らしの変化
結婚、出産、引っ越し、親のことなど、生活の側の変化と重なりやすい
担任の仕事に「プラスアルファ」が乗ってくる
5年目前後の保育士が任されやすいのは、たとえば幼児クラスのリーダーとして指導計画を取りまとめる仕事、運動会や発表会の責任者、新人の指導係、実習生の受け入れなどです。どれも園にとって欠かせない役割で、任されること自体は信頼の表れです。ただ、担任としての日々の保育、連絡帳、月案・週案はそのまま残ったうえで、役割だけが上乗せされるため、持ち帰りや残業が一気に増えることがあります。リーダー業務の負担については保育士のリーダー業務がつらいときの対処法で詳しく紹介しています。
給料と役割が釣り合っているか
仕事が増えたのに給料が変わらないと、「このまま続けて報われるのか」という疑問がわいてきます。保育士の処遇改善の仕組みは令和7年度から「処遇改善等加算」に一本化され、平均経験年数に応じた区分1、全職員が対象の区分2、月額4万円分と5千円分が設けられた区分3(質の向上分)に整理されました[4]。どの区分が、どのように一人ひとりの給与に反映されているかは園によって違います。役割が増えたのに手当が変わらないと感じたら、給与明細の内訳を確認し、分からない点を園に聞いてみてください。
制度の節目が5年前後に集まっている
意外と知られていないのが、保育士向けの支援制度の中に、5年前後で区切られているものがあることです。代表的なのが、国の保育士宿舎借り上げ支援事業と、保育士修学資金の返還免除です。詳しくは次の見出しで整理しますが、こうした節目が近づくと、「区切りがついたら辞めようか」と考える人が出てくるのは自然なことです。
暮らしの変化と重なりやすい
新卒で働きはじめた人なら、5年目は20代後半です。結婚や出産、パートナーの転勤、一人暮らしの見直しなど、生活の側の変化と重なりやすい年代でもあります。仕事の迷いと暮らしの迷いが同時に来ると、どちらの理由で辞めたいのかが見えにくくなります。書き出すときは、仕事の理由と暮らしの理由を分けて書いておくと整理しやすくなります。
04勤続年数で変わる制度の節目を確認する
要点:有給休暇の日数、雇用保険、宿舎借り上げ、修学資金など、勤続年数によって扱いが変わる制度があります。辞める時期を考えるときは、自分に関係する節目を先に確認しておくと、損をしにくくなります。
図3
| 時期の目安 | 関わる制度 | 確認先 |
|---|---|---|
| 雇入れから6か月 | 年次有給休暇が10日付与される(全労働日の8割以上の出勤が条件)[5] | 就業規則 |
| 離職前2年間に12か月 | 雇用保険の基本手当の受給に必要な被保険者期間を満たす[6] | ハローワーク |
| 採用から5年以内 | 国の保育士宿舎借り上げ支援事業の対象期間(常勤保育士・一人1回限り)[7] | 勤務先の園・自治体 |
| 卒業後5年間 | 養成校で受けた修学資金の返還免除に必要な実務従事期間[8] | 貸付を受けた窓口 |
| 5年6か月 | 年次有給休暇の付与日数が18日になる[5] | 就業規則 |
| 被保険者期間10年 | 自己都合などで離職したときの基本手当の所定給付日数が90日から120日になる[9] | ハローワーク |
宿舎借り上げを使っている人は、対象期間を確認
国の保育士宿舎借り上げ支援事業は、令和8年度は「保育士として採用された日から起算して5年以内の常勤の保育士」が対象で、一人1回限りとされています[7]。この対象期間は、令和2年度の「採用から10年目以内」から毎年1年ずつ短くなり、令和7年度に「採用から5年以内」になりました[10]。
借り上げの宿舎に住んでいる人にとっては、対象期間の終わりが家賃の自己負担の増加につながることがあります。6年目を前に、住まいと職場を一緒に見直す人がいるのはそのためです。ただし、自治体によっては独自の制度を設けているところもあり、園がどの制度をどう使っているかで扱いが変わります。自分がいつまで対象なのかは、勤務先の園に確認してください。自治体ごとの制度の違いは保育士の借り上げ社宅と自治体の制度でまとめています。
修学資金の返還免除を受けている人は、条件を確認
養成校に通うときに保育士修学資金の貸付を受けた人は、卒業後5年間、保育の仕事に従事すると返還が免除される仕組みになっています[8]。5年目は、まさにその条件を満たすかどうかの境目にあたる人もいるでしょう。どの施設での勤務が対象になるか、途中で職場を変えた場合にどう扱われるかといった細かな条件は、貸付を受けた都道府県などによって決められています。転職や退職を考えはじめた段階で、貸付を受けた窓口に条件を問い合わせておくと安心です。
有給休暇と雇用保険は、辞める前に数え直す
年次有給休暇は勤続年数とともに増え、3年6か月で14日、4年6か月で16日、5年6か月で18日になります[5]。退職前に残りの年休をまとめて取りたいと申し出た場合、使用者は時季を変更する権利を使えないとされています[11]。年休の時効は2年なので[12]、前の年に使いきれなかった分が残っている人もいるはずです。給与明細や勤怠の記録で、残りの日数を一度数え直しておきましょう。
055年目で辞めるか続けるかを判断する
要点:5年目の判断は、年数ではなく「増えた役割を自分が望んでいるか」「その役割に見合う条件があるか」「来年の今ごろの1週間を受け入れられるか」の3つで考えると、迷いがほどけやすくなります。
図4
来年度も、今の園で、今の役割を続けたいか
- 役割を調整して続けるリーダーや行事の責任者のうち、引き受けるものと断るものを園長と話し合う
- 役割を引き受けて伸ばす主任やリーダーへの道を選び、待遇や研修の条件を確かめたうえで続ける
- 法人内で異動する同じ法人の別の園や、別の年齢のクラスに移り、環境だけを変える
- 同じ園種で転職する5年分の経験を活かし、行事や書類の負担の少ない園に移る
- 園種や職種を変える小規模保育、企業主導型保育、学童保育、児童発達支援など、別の形で経験を活かす
5年分の経験を書き出してみる
判断の前にやっておきたいのが、5年間の経験の書き出しです。続ける場合には、どの役割なら引き受けられるかを考える材料になり、転職する場合には、そのまま職務経歴書の下書きになります。
- 例:担任したクラスの年齢(0歳児1年、1歳児2年、3歳児2年など)
- 例:中心になって進めた行事(発表会の劇の構成、運動会の種目づくりなど)
- 例:指導した後輩や実習生の人数と、そのとき工夫したこと
- 例:保護者対応で印象に残っていることと、どう対応したか
- 例:書いていて楽しかった仕事と、思い出すだけで疲れる仕事
最後の項目が特に大事です。楽しかった仕事は、これからも続けたい役割のヒントになり、疲れる仕事は、手放したい役割や次の職場で避けたい条件を教えてくれます。
「来年の今ごろの1週間」を書いてみる
もう一つの方法は、今の園で6年目を迎えた場合の1週間を、具体的に書いてみることです。早番と遅番が何回あるか、持ち帰りは何日あるか、行事の準備はどのくらいか、休日に何をしているか。書いてみて「この1週間なら続けられる」と思えるなら、役割の調整を相談しながら続ける道があります。反対に、書いているだけで気持ちが沈むなら、環境を変えることを本気で考えてよいサインです。
断れる役割と、断りにくい役割を分ける
任された役割を全部断るのは現実的ではないかもしれません。けれど、すべてを引き受ける必要もありません。たとえば、新人指導は続けたいが行事の責任者は外してほしい、というように、一つだけ手放したい役割を選んで園長に相談してみてください。一つでも調整が通れば、続ける道が広がります。一つも通らないなら、それもまた判断の材料になります。
06相談事例:5年目で「選び直す」と決めた
要点:ここでは、5年目に役割が一気に増えるタイミングで迷い、経験の書き出しをもとに役割を選び直したモデルケースを紹介します。
辞めどきではなく、選びどきだった
相談事例(モデルケース)
- お名前
- ひろみさん(仮名)・27歳
- 保育士歴
- 5年目(相談当時)
- 勤務先
- 社会福祉法人の認可保育園(定員約100名)、3歳児クラス担任
- 変化
- 打診された役割 3つ → 引き受けたのは2つ/月の残業 約25時間 → 約10時間/持ち帰り 週3日 → 週1日以下
編集部相談のきっかけは何でしたか。
来年度、幼児リーダーと運動会の責任者と新人指導の3つをお願いされたんです。今でさえ持ち帰りが週3日あるのに、これ以上は無理だと思いました。しかも、借り上げの宿舎が5年で対象外になると聞いて、家賃も上がる。辞めるなら今だって、気持ちがかなり傾いていました。
編集部相談してみて、どうでしたか。
転職の話になるのかなと身構えていたら、「辞めるかどうかは、まだ決めなくていいですよ。まず5年分の経験を並べてみませんか」って言われて、拍子抜けしました。保育の言葉で話しても全部通じたので、説明しなくていいのが楽で。書き出してみたら、新人指導は好きなんですよ、私。でも行事の責任者は、思い出すだけで胃が痛くなるんです。
編集部それで、どう動いたんですか。
園長に「リーダーと新人指導はやります。運動会の責任者は、今年は別の方にお願いできませんか」と伝えました。あわせて、リーダーになると給与がどう変わるのかも聞いて、手当の内訳を書面で出してもらいました。正直、断るのは怖かったです。でも、思っていたよりあっさり通ったんですよね。
編集部住まいのことはどうしましたか。
借り上げが終わったあとの家賃を計算したら、月4万円くらい負担が増えることが分かって。それで、園まで自転車で通える少し古い部屋に引っ越しました。通勤時間も40分から15分になって、朝が楽になりました。
5年目って、辞めどきじゃなくて、選びどきなんだと思います。全部引き受けるか全部やめるかじゃなくて、選び直せばよかったんですね。
ひろみさん(仮名)
ひろみさんは6年目の今、幼児リーダーと新人指導を担当しながら、月の残業は約10時間、持ち帰りは週1日以下に落ち着いています。運動会は他の職員が責任者になり、ひろみさんは種目づくりの手伝いにとどめているそうです。「1年やってみて、また考えます」と話していました。
このケースで大切なのは、ひろみさんが「辞める」「続ける」の二択ではなく、役割を一つずつ見直したことです。5年分の経験を書き出したことで、好きな役割と手放したい役割がはっきりし、園長への相談も具体的になりました。もちろん、相談しても役割の調整が通らない園もあります。その場合は、書き出した経験がそのまま転職の準備として役に立ちます。
※相談で多く寄せられる状況をもとに再構成したモデルケースです。特定の個人ではなく、数値は一例です。
07年数だけで決めないために知っておきたいこと
要点:一つは、制度の節目のために無理を重ねないこと。もう一つは、「区切りのいい年数」よりも「区切りのいい時期」を意識することです。
1. 節目の制度のために、体を壊すまで続けない
宿舎借り上げや修学資金の返還免除は、暮らしを支えてくれる大切な制度です。けれど、その節目まで続けることが目的になり、眠れない日が続いているのに我慢を重ねるのは本末転倒です。眠れない、食べられない、出勤前に涙が出るといった状態が続いているなら、年数の節目よりも休むことを優先してください。制度の条件で迷うときは、貸付を受けた窓口や園に、途中で辞めた場合の扱いを確認したうえで判断すれば、思っていたより選択肢が残っていることもあります。
2. 「何年目」より「いつ辞めるか」のほうが影響は大きい
同じ5年目でも、年度の途中で辞めるか、年度末で辞めるかで、子どもや園への影響、引き継ぎのしやすさ、次の職場の探しやすさは変わります。辞めると決めたら、年数よりも時期の決め方に目を向けてください。退職時期の考え方は保育士の退職時期と退職日の決め方で詳しく紹介しています。
年数にかかわらず、辞めるかどうかを判断する軸を整理したいときは、保育士を辞めるべきか迷うときの判断基準もあわせて読んでみてください。何年目であっても、「このまま続けていいのかな」と感じた時点で、誰かに話してみる価値はあります。ほいくの相談室では、転職を決める前の、経験の棚卸しや役割の悩みの段階から話を聞いています。
よくある質問
3年目までに辞めると、転職で不利になりますか?
在籍期間が短いと、面接で辞めた理由を聞かれることは多くなります。ただ、理由と次の職場で大切にしたいことを具体的に話せれば、それだけで不採用になるとは限りません。心身の不調がある場合は、年数よりも健康を優先してください。
5年目で転職すると、給料は上がりますか?
園の種類や地域、任される役割によって違うため、一概には言えません。求人票の基本給だけでなく、処遇改善に関わる手当の内訳や賞与の算定方法まで確認して、今の給与明細と同じ条件で比べることが大切です。
10年目を過ぎてからの転職は遅いですか?
遅いということはありません。2026年7月の保育士の有効求人倍率は全国で2.80倍と、全職種平均の1.15倍を大きく上回っています[13]。経験年数が長い人は、リーダー経験や後輩指導の経験を具体的に伝えられると、強みとして受け止めてもらいやすくなります。
宿舎借り上げの対象期間中に辞めると、どうなりますか?
国の事業では、対象は一人1回限りとされ、やむを得ない事情による退職は例外とされています[7]。転職先で改めて利用できるかどうかは、自治体や園の制度によって変わるため、転職先の園と自治体の両方に確認してください。
何年目でも、辞めたい気持ちがあるなら相談していいですか?
もちろんです。年数ごとに迷いの中身は違っても、一人で抱え込むほど判断は難しくなります。辞めるかどうかを決める前の段階で話してみると、自分では気づかなかった選択肢が見えることがあります。
参考にした資料
- 厚労省「保育士の現状と主な取組」(2020年8月24日 検討会参考資料1)
- 東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査 結果の概要」
- こども家庭庁「保育人材の確保のための総合的な対策」令和8年3月版
- こども家庭庁「基礎資料(保育士・幼稚園教諭等の処遇改善)」令和8年3月版
- 厚生労働省 FAQ「年次有給休暇とはどのような制度ですか…」
- ハローワーク「基本手当について」
- こども家庭庁「令和8年度 保育関係予算の概要」
- こども家庭庁「令和8年度 保育関係予算の概要」
- ハローワーク「基本手当の所定給付日数」
- 千葉市「保育士宿舎借り上げ支援事業」説明資料(令和7年度予算 こども家庭庁概算要求の概要抜粋)
- 確かめよう労働条件「年次有給休暇」
- 確かめよう労働条件「年次有給休暇」
- こども家庭庁「保育士有効求人倍率(R8.7)」(出典:厚労省 職業安定業務統計)
※制度や数値は記事の更新時点で公的機関の資料により確認しています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。