保育士の転職、優先順位の決め方|条件を3段階で整理

遅番を終えて帰宅し、夕食を済ませてから求人サイトを開く。「持ち帰りなし」「年間休日多め」「通勤30分以内」「賞与あり」と、気になる条件に次々とチェックを入れていくと、表示される求人は数件しか残りません。チェックを外すと今度は数百件に増えて、どこから見ればいいのか分からなくなる。そんな夜を何度か過ごした人は少なくないはずです。

条件が決められないのは、欲張りだからではありません。今の職場でつらいことがいくつも重なっていると、そのすべてを次の職場で解消したくなるのは自然なことです。ただ、すべての条件を同じ重さで扱っている限り、どの求人も「何かが足りない」ように見えてしまいます。

この記事では、保育士が転職先を探すときの希望条件を「譲れない」「できれば」「なくてもいい」の3段階に分け、優先順位をつける手順を紹介します。求人票・園見学・面接のどこで何を確かめるかまでつなげているので、読み終えたら紙とペンを用意して、そのまま手を動かしてみてください。

この記事でわかること

  • 保育士の転職で希望条件に優先順位をつける3段階の分け方
  • 譲れない条件を3つまでに絞るための4つの問い
  • 妥協できる条件に「下限」と「幅」をつける考え方
  • 決めた優先順位を求人票・園見学・面接で確かめる手順

結論

保育士の転職で希望条件の優先順位を決めるときは、思いつく条件をすべて書き出したうえで、「譲れない条件(3つまで)」「できれば欲しい条件」「なくてもいい条件」の3段階に分けます。譲れない条件は、今の職場を離れたい理由の根っこにあり、入職後に自分では変えにくいものから選ぶのが基本です。妥協できる条件には「ここまでなら許せる」という下限を決めておくと、求人を比べるときに判断がぶれません。順位は一度決めて終わりではなく、見学や面接で分かった事実に合わせて見直してかまいません。

01優先順位は「譲れない・できれば・なくてもいい」の3段階で考える

要点:希望条件は、1位から10位まで細かく順位をつけるより、3つの段階に分けるほうが決めやすくなります。中でも「譲れない条件」を3つまでに絞れるかどうかが、転職先選びの分かれ目です。

条件に1位、2位、3位と細かく順位をつけようとすると、「給料と通勤時間はどちらが上か」のような答えの出ない比較で手が止まります。月給が1万円上がるなら通勤が10分延びてもいいのか、20分ならどうか。条件同士は単位も性質も違うので、そもそも一列に並べにくいのです。

そこで使いたいのが、条件を3つの箱に入れていく方法です。箱に入れるときに比べるのは「条件同士」ではありません。「その条件が欠けた職場で、自分は働き続けられるか」という一点だけを考えます。比べる相手が自分の気持ち一つになるので、判断がぐっと速くなります。

図1

段階譲れない条件できれば欲しい条件なくてもいい条件
数の目安3つまで3〜5つ残りすべて
判断の基準欠けていたら1年もたないと感じるあると助かるが、欠けても働けるあればうれしい程度
例持ち帰り仕事がない、通勤40分以内、複数担任で役割分担がある賞与が年2回、制作物が少ない、駅から近い制服の貸与がある、園庭が広い、新しい園舎
求人での扱い一つでも欠けたら応募しない2つ以上欠けたら慎重に考える決め手には使わない
図1 希望条件を3段階に分けるときの目安

「譲れない条件」を3つまでにする理由

譲れない条件を5つも6つも持つと、当てはまる求人はほとんど残りません。残ったとしても、見学で一つでも合わないところが見つかると、また振り出しに戻ってしまいます。3つまでに絞っておくと、求人を見た瞬間に「この3つは満たしているか」を判断でき、ほかの条件は落ち着いて比べる材料として扱えるようになります。

数を絞るのは、ほかの条件をあきらめることではありません。「できれば欲しい条件」は、譲れない条件を満たす園が複数見つかったときに、どちらを選ぶかを決める物差しとして使います。役割を分けるだけで、同じ条件が持つ意味が変わってきます。

「なくてもいい条件」にも役割がある

3段階目の「なくてもいい条件」は、書き出す前に頭の中で消してしまいがちです。でも、ここに入る条件をはっきりさせておくと、求人広告の目立つ言葉に引っ張られにくくなります。「新園オープン」「園舎がきれい」といった見出しは魅力的に見えますが、自分にとって「なくてもいい」と決めてあれば、それだけで応募を決めることはなくなります。

そもそも転職するかどうかで迷っている段階なら、先に保育士が転職するべきかを見極める判断基準で、今の職場に残る道も含めて整理しておくと、条件の書き出しがスムーズになります。

02まず希望条件をすべて書き出す

要点:優先順位をつける前に、思いつく条件を遠慮なく全部書き出します。目安は15〜20個です。今の職場で「これがつらい」と感じている場面を裏返すと、条件は自然に出てきます。

書き出しの段階では、良い条件とわがままな条件を区別する必要はありません。「お昼寝の時間に連絡帳を書き終えたい」「早番の7時に間に合うよう5時台に起きるのがつらい」「発表会の衣装づくりを家でやりたくない」など、場面のまま書いてかまいません。条件の言葉に整えるのは、あとでまとめて行います。

書き出すときの5つの切り口

何も見ずに書き出すと、そのとき一番つらいことばかりが並びます。次の5つの切り口を順番に眺めると、見落としが減ります。

図2

  • 1

    時間

    勤務時間、シフト(早番・遅番の回数)、休憩、年間休日、残業、持ち帰り仕事の有無

  • 2

    お金

    月給、賞与、昇給、各種手当、退職金、住宅補助や借り上げ社宅

  • 3

    場所

    片道の通勤時間、通勤手段、ほかの園への異動の有無

  • 4

    仕事の中身

    園の種類と規模、担当したい年齢、行事の数、書類の量、保育方針

  • 5

    人と体制

    職員の人数と年齢層、複数担任の有無、加配や保育補助の有無、相談しやすさ

図2 希望条件を書き出すときの5つの切り口

お金の切り口では、給与だけでなく住まいの補助も書き出しておきます。たとえば国の保育士宿舎借り上げ支援事業は、保育士として採用された日から5年以内の常勤保育士が対象です[1]。対象になるかどうか、園が制度を使っているかどうかで手元に残るお金が変わるので、該当しそうな人は条件の一つとして書いておくと比べやすくなります。

ほかの保育士が重視している条件

保育の仕事に就くときにどんな条件を重視するかは、公的な調査でも確かめられます。東京都の保育士実態調査で、過去に保育士として働いた人に「復職する場合の希望条件」を聞いたところ、1日の勤務時間、年収、片道の通勤時間、週の勤務日数が上位に並びました[2]。

図3

復職する場合の希望条件(東京都保育士実態調査〔令和4年度〕・過去に保育士として働いた人・複数回答の上位4項目)[2]

勤務時間(1日)73.8%
給与等(年収)69.0%
通勤時間(片道)61.6%
勤務日数(週)57.3%
図3 復職する場合の希望条件(東京都保育士実態調査〔令和4年度〕・過去に保育士として働いた人・複数回答の上位4項目)[2]

同じ調査で、現在保育士として働く人に「今の職場で改善してほしいこと」を聞いた結果は、給与・賞与等の改善が62.7%、職員数の増員が48.6%、事務・雑務の軽減が40.1%でした[3]。時間とお金にかかわる条件が上位に来るのは、多くの保育士に共通しています。

ただし、多くの人が重視している条件が、あなたにとっても上位とは限りません。たとえば実家の近くに住んでいて家賃がかからない人と、一人暮らしで家賃を払っている人とでは、年収の重みが違います。調査の数字は「書き出し漏れがないか」を確かめる手がかりとして使い、順位は自分の事情で決めてください。

03譲れない条件を3つに絞るための4つの問い

要点:書き出した条件一つひとつに4つの問いを当てると、譲れない条件が浮かび上がります。特に「今の職場を離れたい理由とつながっているか」と「入職後に自分で変えられるか」の2つが決め手になります。

図4

  1. 問い1 離れたい理由とつながっているか今の園を辞めたい理由の根っこにある条件は、次の職場でも欠けると同じ悩みを繰り返します
  2. 問い2 欠けたら1年働き続けられるか「1年もたない」と感じるなら譲れない条件の候補、「我慢できる」ならできれば欲しい条件へ
  3. 問い3 入職後に自分で変えられるか通勤時間や給与の仕組みは入ってから変えにくく、担当クラスや仕事の進め方は相談で変わることもあります
  4. 問い4 別の手段で埋め合わせられるか通勤が長くても座って通える、手当で家賃が下がるなど、代わりの手段があれば優先度は下がります
図4 譲れない条件を見つける4つの問い

問い1:今の園を離れたい理由とつながっているか

最初の問いがいちばん大切です。転職の理由になっている悩みを解消する条件が抜けていると、職場を変えても同じことで悩む可能性が高くなります。

このとき、条件を「なぜ」で2回掘り下げてみてください。たとえば「持ち帰り仕事がつらい」と書いたなら、なぜ持ち帰りが発生しているのかを考えます。「勤務時間内に書類を書く時間がないから」。では、なぜ時間がないのか。「午睡中も子どもから目が離せず、ノンコンタクトタイムや保育補助の人がいないから」。ここまで掘り下げると、条件は「持ち帰りなし」から「勤務時間内に書類や準備の時間が確保されている」に変わります。

この言い換えには大きな意味があります。「持ち帰りなし」は求人票に書かれていても実態が分かりにくい言葉ですが、「勤務時間内に書類の時間がある」なら、見学や面接で「週案はどの時間に書いていますか」と具体的に確かめられます。譲れない条件は、確かめられる言葉で持っておくことが肝心です。

問い2・問い3:欠けたら耐えられるか、あとから変えられるか

2つ目と3つ目の問いは、セットで考えると分かりやすくなります。欠けたら耐えられない条件のうち、入職後に自分では変えにくいものほど、譲れない条件にふさわしいということです。

たとえば通勤時間は、入職してから短くするには引っ越しが必要です。給与の仕組みも、一人の職員が交渉して大きく変えるのは簡単ではありません。一方、担当する年齢や行事の分担は、年度の切り替えで変わることがありますし、入職後に相談して調整できる場合もあります。同じくらい大事な条件が2つ並んで迷ったら、あとから変えにくいほうを譲れない側に入れます。

問い4:別の手段で埋め合わせられるか

最後の問いは、条件の優先度を下げてもいいかを確かめるためのものです。通勤時間が希望より長くても、始発駅から座って通えるなら負担はかなり違います。給与が少し低くても、住宅補助で家賃が下がれば手元に残る額は変わりません。代わりの手段がある条件は、譲れない条件から「できれば欲しい条件」へ移して大丈夫です。

自分がどんな働き方をしたいのか、そもそもの軸が見えにくいと感じるなら、条件を絞る前に保育士の転職に役立つ自己分析のやり方で、得意なことや大事にしたい場面を書き出しておくと、問い1に答えやすくなります。

04妥協できる条件は「下限」と「幅」で決める

要点:できれば欲しい条件は、「あり・なし」ではなく「ここまでなら許せる」という下限を決めておきます。理想と下限の間に幅があると、求人を見比べるときに迷う時間が短くなります。

譲れない条件を3つに絞ったあとに残る「できれば欲しい条件」は、ゼロか百かで考えないのがこつです。たとえば通勤時間なら「理想は25分、45分までなら許せる」、年収なら「理想は今より上、下限は今と同じ」というように、2つの数字を書いておきます。

  • 例:通勤時間 理想は片道25分、下限は片道45分(乗り換え1回まで)
  • 例:年収 理想は今より上がること、下限は今の手取りを下回らないこと
  • 例:早番・遅番 理想は早番が週1回、下限は週2回まで
  • 例:行事 理想は発表会の衣装を園で用意、下限は持ち帰りが行事前の1週間だけ

下限を決めておくと、求人を見たときに「理想には届かないけれど下限は超えている」という判断ができます。理想に届かないことを理由に候補から外していた求人の中に、実は条件を満たしている園があることに気づくはずです。

4つのマスで、条件の置き場所を決める

どの条件を譲れない側に入れ、どれに幅をつけるかで迷ったら、「今の悩みの原因か」と「入職後に変えにくいか」の2つの軸で4つのマスに分けてみてください。

図5

悩みの原因で、入職後に変えにくい

例:通勤時間、給与の仕組み、職員の人数や体制

譲れない条件に入れる

悩みの原因だが、入職後に変えやすい

例:担当する年齢、行事の分担、書類の様式

できれば欲しい条件。面接で相談

悩みとは関係ないが、変えにくい

例:園の規模、立地、園舎の新しさ

下限を決めて幅を持たせる

悩みとは関係なく、変えやすい

例:制服、ロッカーの広さ、休憩室の雰囲気

なくてもいい条件に入れる

図5 希望条件の置き場所を決める4つのマス

マスに入れてみると、譲れない条件の候補が自然と左上に集まります。左上のマスに4つ以上入ったときは、その中で今の園での一番つらい場面に近いものから3つを選びます。

05相談事例:12個あった条件を3つに絞って、見学先が決まった

要点:ここでは、条件を書き出しすぎて身動きが取れなくなっていた保育士が、優先順位をつけ直して転職先を決めたモデルケースを紹介します。

「全部ほしい」から「これだけは」に変わった

相談事例(モデルケース)

お名前
かおるさん(仮名)・31歳
保育士歴
9年目(相談当時)
勤務先
私立の認可保育園(定員約110名)、5歳児クラス担任・幼児リーダー
変化
希望条件 12個 → 譲れない条件3つ/応募 0園 → 見学3園・応募2園

編集部転職を考え始めたころは、どんな状態でしたか。

かおるさん

条件を書き出したら12個あって、それを全部満たす求人を探していました。3か月くらい毎晩サイトを見ていたのに、結局1件も応募していなかったんです。見れば見るほど、どこも何か足りない気がして。

編集部何がきっかけで絞り込めたんですか。

かおるさん

相談窓口で話したとき、「その12個のうち、今の園で一番つらい場面とつながっているのはどれですか」って聞かれたんです。幼児リーダーって言っただけで、行事の取りまとめを一人で抱える感じが伝わったのも大きくて。考えてみたら、つらかったのは発表会前の衣装づくりと、2人担任なのに相方がいつも別の業務に呼ばれて、クラスのことを全部ひとりで回していたことでした。

編集部給料はどう扱ったんですか。

かおるさん

正直、最初は「今より上がること」が1位だと思い込んでました。でも「入ってから自分で変えられるか」で考えたら、給料は変えにくいけど、今より下がらなければ働き続けられるなって。それで「今の年収を下回らない」を下限にして、譲れない条件からは外しました。残ったのは「行事の準備が勤務時間内にできる」「複数担任で役割分担がある」「通勤40分以内」の3つです。

編集部見学ではどんなことを確かめましたか。

かおるさん

発表会の衣装をいつ誰が作っているか、週案や月案はどこで書いているか、具体的に聞きました。1園目は「みんな家でやってるよ」と笑って言われて、その場で応募しないと決めました。前の私なら「でも給料はいいし」って迷っていたと思います。絞ってあったから、迷わなかったです。

条件を減らしたら、園を見る目がかえって細かくなりました。

かおるさん(仮名)

かおるさんは見学した3園のうち2園に応募し、行事準備の時間がシフトに組み込まれている定員約70名の園に転職しました。年収は前の園とほぼ同じですが、発表会前の衣装づくりの持ち帰りはなくなり、新しい園でも担当は5歳児クラスですが、2人担任で書類と保護者対応を分担する形になったそうです。

このケースで効いたのは、条件の数を減らしたことそのものより、「今の園で一番つらい場面」から条件を言い換えたことです。「持ち帰りなし」という広い言葉が「行事の準備が勤務時間内にできる」という確かめられる言葉に変わったことで、見学で何を聞けばいいかがはっきりしました。

※相談で多く寄せられる状況をもとに再構成したモデルケースです。特定の個人ではなく、数値は一例です。

図6

転職前転職後

希望条件の持ち方

12個すべて同じ重さ
譲れない3つ+下限つき4つ

求人を見る時間

毎晩約1時間
週2回30分ほど

行事前の持ち帰り

週3〜4日
ほぼなし

通勤時間(片道)

約50分
約35分
図6 かおるさんの転職前と転職後

06決めた優先順位を、求人票・見学・面接で確かめる

要点:優先順位は、決めたあとに「どこで確かめるか」まで決めておくと役に立ちます。譲れない条件は求人票で一次確認し、見学で現場を見て、面接で言葉にして確かめる、の3段階で照らし合わせます。

求人を出す側には、募集の時点で労働条件を示すルールがあります。業務の内容、契約期間、試用期間、就業場所、就業時間・休憩・休日、時間外労働の有無、賃金(固定残業代がある場合はその内訳)、加入する保険などは、原則として最初の面接までにすべて明示することになっています[4]。さらに2024年4月以降は、入職後に担当業務や勤務地が変わりうる範囲(「従事すべき業務の変更の範囲」「就業の場所の変更の範囲」)も、募集の段階で示す項目に追加されています[5]。

この「就業の場所の変更の範囲」は、通勤時間を譲れない条件にしている人にとって見逃せない項目です。複数の園を運営している法人では、入職後に別の園へ異動する可能性があり、そうなると通勤時間の条件が崩れることがあります。求人票の読み方は保育士の求人票で見るべきポイントで詳しく紹介しています。

図7

  1. 条件を書き出す

    時間・お金・場所・仕事の中身・人と体制の5つの切り口で、15〜20個を遠慮なく書き出します

  2. 4つの問いで仕分ける

    離れたい理由とのつながり、欠けたときの耐えやすさ、入職後の変えやすさ、埋め合わせの手段を確かめます

  3. 譲れない条件を3つに絞る

    候補が多いときは、今の園で一番つらい場面に近いものから選び、確かめられる言葉に言い換えます

  4. できれば欲しい条件に下限をつける

    通勤時間、年収、早番の回数などに「ここまでなら許せる」線を引きます

  5. 求人票で一次確認する

    譲れない条件が一つでも欠けていれば応募しない、と先に決めておきます

  6. 見学と面接で確かめる

    求人票に書かれない部分を、見学では目で、面接では具体的な質問で確かめます

図7 希望条件の優先順位を決めて求人選びに使う手順

譲れない条件を確かめる質問の例

見学や面接で「持ち帰りはありますか」と聞くと、多くの園は「ほとんどありません」と答えます。うそではなくても、受け止め方は人によって違います。確かめたいことは、「いつ」「誰が」「どの時間に」という形に変えて聞くと、実際の働き方が見えてきます。

図8

  • 勤務時間内に書類の時間がある「週案や連絡帳は、一日のどの時間に書いていますか」と時間帯で聞く
  • 行事の準備を持ち帰らない「発表会の衣装や道具は、誰がいつ準備していますか」と分担で聞く
  • 複数担任で役割分担がある「このクラスは何人で担当し、書類や保護者対応はどう分けていますか」と聞く
  • 通勤時間が変わらない「法人内のほかの園へ異動することはありますか」と就業場所の変更の範囲を確かめる
  • 早番・遅番の回数「早番は月に何回くらい回ってきますか」と回数で聞く
  • 休憩が取れる「休憩は何時ごろ、どこで取っていますか」と場所と時間で聞く
図8 譲れない条件を見学・面接で確かめる質問の例

見学のときの見方は園見学のチェックリストに、通勤時間の下限の考え方は転職先の通勤時間の目安にまとめています。

07優先順位をつけるときに、知っておきたい限界

要点:どれだけ丁寧に優先順位をつけても、すべての条件を満たす園はまず見つかりません。また、一度決めた順位が正しいとも限りません。この2つを先に受け入れておくと、条件探しが終わらない状態を防げます。

全部の条件を満たす園は、まずない

2026年7月の保育士の有効求人倍率は2.80倍で、同じ月の全職種平均(1.15倍)の2倍以上の水準です[6]。求人の数が多いことは選びやすさにつながる一方で、「もっと良い園があるかもしれない」と探し続ける理由にもなります。

探し続けること自体は悪いことではありません。ただ、条件を満たす園が見つかっているのに「ほかにもっと」と先延ばしにしている間にも、今の職場での疲れはたまっていきます。譲れない3つを満たし、できれば欲しい条件の下限を超えている園が見つかったら、それは十分に「良い候補」です。完璧な園を探すのではなく、自分が決めた基準を満たす園を探す。そう考えると、決断の重さが少し軽くなります。

順位は、事実を知ったら入れ替えていい

見学に行ってみると、思っていたのと違うことがよくあります。通勤時間を譲れない条件にしていたけれど、見学した園の職員同士の声かけが温かく、「ここなら通勤が10分長くてもいい」と感じた。そういうときは、順位を入れ替えてかまいません。

ただし、入れ替えるときは「なぜ入れ替えるのか」を一行でいいので書き残してください。理由を言葉にできるなら、それは事実にもとづく見直しです。理由が「なんとなく」や「早く決めたいから」なら、疲れや焦りが判断を動かしているサインかもしれません。

もう一つ気をつけたいのが、給与を「下限なし」で後回しにしてしまうことです。人間関係のつらさから逃れたい一心で条件を絞ると、生活費が足りなくなる職場を選んでしまうことがあります。給与を譲れない条件に入れない場合でも、下限だけは必ず決めておきましょう。

一人で書き出してみても絞りきれないときは、保育の現場を知っている人と一緒に整理すると、思いがけない条件が見つかることがあります。ほいくの相談室では、転職するかどうかを決める前の、希望条件の整理だけの相談も受けています。12個の条件を一緒に眺めて、3つに絞るところから始めても大丈夫です。

よくある質問

給料と人間関係、どちらを優先すべきですか?

どちらが上かは人によって違います。今の職場を離れたい一番の理由が人間関係なら、給料は「今を下回らない」を下限にして、職員の人数や複数担任の体制など人間関係にかかわる条件を譲れない側に入れる考え方があります。生活費が足りないことが一番の悩みなら、先に給料の下限を決めます。

譲れない条件がどうしても3つに絞れません。

4〜5つ残るときは、「どれか一つだけ叶うなら」と仮定して一つ選び、残りで同じことを繰り返してみてください。それでも絞れないときは、今の職場で相談すれば変えられる条件が混ざっていないかを確かめます。入職後に相談で変わる条件は、譲れない側から外しても困らないことが多いです。

優先順位は家族と相談して決めたほうがいいですか?

通勤時間や勤務の時間帯、収入の下限など、家族の生活にかかわる条件は相談しておくと、あとのすれ違いを防げます。一方で、保育の進め方や職場の雰囲気など、自分にしか判断できない条件もあります。家族と決める条件と自分で決める条件を分けておくと、話し合いが進めやすくなります。

優先順位を面接で正直に伝えてもいいですか?

伝え方を工夫すれば問題ありません。「持ち帰りがないこと」を前面に出すより、「勤務時間内に書類や準備の時間を取れる環境で、保育に集中したい」のように、働き方の希望として伝えると前向きに受け取られやすくなります。給与や休日は、面接の後半や条件の確認の場で聞く人が多いです。

求人票に書かれていない条件はどう確かめればいいですか?

求人票では業務の内容や就業時間、休日、賃金、時間外労働の有無などが示されますが、職場の雰囲気や書類の量までは分かりません[4]。見学で保育の様子や職員同士の声かけを見たり、面接で「いつ・誰が・どの時間に」という形で質問したりして確かめます。

参考にした資料

  1. こども家庭庁「令和8年度 保育関係予算の概要」
  2. 東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査 結果の概要」
  3. 東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査 調査結果の概要」
  4. 厚生労働省 求職者向けリーフレット(2024年4月)
  5. 厚生労働省「職業安定法施行規則改正|労働条件明示等」
  6. こども家庭庁「保育士有効求人倍率(R8.7)」(出典:厚労省 職業安定業務統計)

※制度や数値は記事の更新時点で公的機関の資料により確認しています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

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